102.襲撃の奥
そこからしばらくして、時間通りに交代して、私は地下倉庫に引っ込んだ。
だがただ引っ込んだ訳ではなく、色々と見つけておいた便利装備の中でも特にレアで使いどころが難しいものを入れた箱を探って、取り出したのは1枚のマントだ。
ふわふわ毛布ぐらいの厚みがある、銀色のビニールシート。ずっしりと重量を感じるそれは宇宙人の技術のものであり、共通規格のバッテリーを使えば、完全に音と姿を消せるというものである。名前もそのものずばり、「パーフェクト・ステルスマント」という。
まぁバッテリーが1つしか取り付けられない上に、効果時間はゲーム時代では驚きの5分。未探索エリアをだーっと走り抜けてざっと地形や敵の種類を確認するぐらいが精々だった訳だ。
「とはいえ、バッテリーの交換は現実なら出先でも出来るし。魔法の結界と併用すればもうちょっと何とかなる筈」
という事で、私が知ってる最高レベルの結界を発動させる魔道具とふんわり着地する魔道具を用意して、予備バッテリーと予想が当たっていた場合に必要なものを持ち、いざ外へゴーである。門が閉まってるけど、ふんわり着地する魔道具で壁の上から飛び降りる。
バッテリーの減り方を確認しつつ、マンティヤにスルーされながらその奥に移動する。マンティヤが来る方向へと大急ぎで移動した結果、どうやらこれが原因だな、ってものを、一応発見できた。
「(何かいる)」
ただしその、こう……端的に言うなら、柄の所に鏡がはめ込まれた、今にも折れそうなほどボロボロの剣。それを守るように、明らかに一回り大きなマルティヤが寝そべっていたのだ。
「パーフェクト・ステルスマント」は完全に姿と音を消してくれるし、どうやら匂いの類も消してくれるようだが、流石にあの剣に触れば気付かれるだろう。かといって、最高強度の結界は、発動したら解除するまで動けない。
バッテリーの残りを確認。どうやら効果時間5分は現実でも変わらないらしい。刻々と減っていくのが見える。というかもう残り3割か2割だ。
「(仕方ない。腹をくくろう)」
ゆっくり深呼吸をして、まずその明らかに大きなマルティヤの後ろに回り込む。そしてボロボロの剣がギリギリ結界の効果範囲に入る所で、結界を発動した。
流石に魔法自体は感知できたのか、跳ね上がって周囲を警戒する大きなマルティヤだが、ここで私は一旦「パーフェクト・ステルスマント」のスイッチを切る。すると当然、大きなマンティヤは私に攻撃してくる訳だが……流石最高強度の結界、びくともしない。
とはいえこちらにも効果時間の限界というものがあるので、まず「パーフェクト・ステルスマント」のバッテリーを入れ替える。そして必要なもの、「分厚い絶縁手袋」と「木刀用武器袋」を取り出して、「分厚い絶縁手袋」をしっかり嵌めた状態で、剣を掴んだ。
「うぐ!?」
途端にそのボロボロの剣から、こう、威圧的なものが飛んでくるが、体は無事である。よって素早く地面から引き抜いたボロボロの剣を「木刀用武器袋」に入れて、蓋を締めた。合皮とナイロンの、ハード目のやつだからか、威圧的なものが消える。
なおこの間も大きなマルティヤはガンガン攻撃してきているし、結界を張る魔道具から何か軋むような音が聞こえているのだが、まぁでも用事は済んだし、成功した。だからあとは帰るだけだ。
「じゃあな」
なので後ろ手に閃光手榴弾を投げて、それが爆発する直前に「パーフェクト・ステルスマント」を起動。爆発した瞬間に結界を解除して、全力で横方向に逃げる。
……よし、見失ったな。そして回収には成功したんだ。ちゃんと正しく丁寧に処置したら、とても良いものだからな。使い捨て扱いでも便利には使えるが、そんなの勿体なさすぎる。
そしてあと3本、3方向にある筈だ。バッテリーの充電が間に合うかどうかは微妙な所だが、可能なら回収しておきたい。何本あってもいいからなこんなの。




