97.最高戦力の意味
頼まれたのは消耗品系というか投げるだけの武器だったが、必要だろうと思ってテレビ電話が出来るテレビもサイズ違いで3台持ってきておいた。そのついでに聞いてみると、やっぱりこっちはスマホを使っていたようだ。
どうやらアンテナの力はかなりの物らしく、映像や音声の遅延はないようだったが、それはそれとして電力消費量が凄いしスマホが酷使される事による熱がすごいとの事。それはそう。
だから私がテレビそのものを持ってきた判断は大正解でとても助かるとの事だったので、そこは普通に受け渡ししたんだが。
「[ヤヌシ、そちらにはダギアンが出たとの事だが、蛇の数は最大何匹だった?]」
「蛇の数ですか? 頭の付け根から生えてる蛇の頭の事なら、私が見たのは最大3匹ですね。蛇なしの奴はいなかったように思います」
「[なるほど、蛇が居る事は確定で、1匹から3匹か]」
そこで変わらず指揮官として働いていた王子様から、相手の情報についての質問が来た。私にはその意味がよく分からないので、素直に答える。
何故ならゲームの知識はあっても、マルティヤとかダギアンとかの生態に詳しい訳ではないからな。そういうのを知っているのは王子様だし、そういう判断は王子様の方が正確に下せる。
で、私の情報は問題なく必要な部分だったらしく、何度か頷いた王子様が言う事には。
「[群れの規模からして、このまま迎撃を続ければ夕方には引き上げていくだろう。それまでに出来る限り仕留めておけば後の探索が楽になる。そちらの防衛と攻撃は任せたぞ]」
「まぁこちらは落とし穴もある上に壁も二重で結界樹その他がありますから、多分大丈夫ですが」
「[……それもそうだな。ヤヌシ、お前緋朱ではなくウィングバックパックで帰れるか?]」
「モンスターの群れの上を冷静に飛んでいく自信は無いですね。補充が必要ならまた来ますから勘弁して下さい」
という事らしい。なるほど、夕方まで防衛すればいいんだな。
そして王子様は冷静に考えて、緋朱をこっちの戦力として残したかったようだが、緋朱がこっちにいると牛に悪影響が出るかもしれないからな。それに私は1人で帰る自信が無い。
そもそも、わざわざ私が来たのは、それこそ1週間は籠城し続けられる量の消耗品を届ける為だ。そんな量の荷物を1度に運べるのは私ぐらいだからな。だから1人で帰るのは勘弁してくれ。
「[あれだけあってなお補充が必要という状況は考えたくはないがな。まぁいい。到着時点で十分働いてはいる。無理なく通信も出来るようになったようだし、何ならそちらを緋朱に一掃させてから来て貰えば良いだけだ]」
「まぁ全滅させればいいならそれが最短ではありますけど」
容赦ないなぁ、と、それはそう、が同時に浮かんだがともかく。
タイムリミットは王子様の方で連絡してくれるとの事なので、緋朱サイズのカヌレを食べてから高師さん(旦那さん)にブラッシングされてうっとりしている緋朱に声をかけて、私は拠点へ帰還だ。
なおそれだけおもてなしされて緋朱はとても名残惜しそうだったし、拠点の屋根に戻ってからもそわっそわ牧場の方を気にしていたのだが、緋朱に向こうに行かれるとちょっと困る。
「緋朱。ひーしゅ。この周りに穴を掘った所の場所は分かるか?」
「キュゥ」
「じゃあそこと、外側の壁の間を、ぶわーっと綺麗に焼けるか?」
「キュッ」
「そうかそうか良い子だな。それが出来たら、これをやろう」
「キュゥッ!」
それに確か、双頭で首の根元から蛇が生えてる狼、ダギアンのドロップ素材は、色々使える筈だ。特に蛇の魔眼だな。ドロップ率そのものは低かった筈だが、それでも数を倒せばそれなりに手に入る筈だ。
ので、対緋朱緊急労働用ご褒美として、主に緋朱が寝ている間にこっそり作っておいた、直径1mぐらいのさつまいもの蒸しパンを取り出した。生地にさつまいもの甘露煮を潰して練り込んだ他、ゴロゴロと皮付きのさつまいもが入っている。
作るのも大変だったが仕方ないし、緋朱は私がそれを、緋朱専用のお皿(元はパーティー向けパエリア用の鍋)に乗せて出した時点で、それが「すごく甘くて美味しいもの」だと認識したようだ。良いお返事と共に、ばさっと飛び立って。
「――ガァァアアアアアアアッ!」
さっきと違い、火炎放射型のブレスで周囲を文字通りに薙ぎ払ってくれた。わぁすごい。流石火力型のドラゴンだ。スマホの全体マップであっという間にドロップ品の表示が増えていく。
まぁ全部回収するんだけどな。いやー、緋朱の炎に焼かれても素材が残るのはゲーム仕様に感謝だ。リアル準拠だと、たぶん、残っていたとしても消し炭ぐらいだろうし。




