95.同時防衛戦
「どうも見る限り、工一さん達が遭遇したっていう、縄張り争い中のモンスターっぽいですねぇ……」
「えっ」
「まぁあっちには工一さんとリットさんがいますし、防御する為の設備は色々配置して既に起動している筈なので、こちらと同じく防衛戦の最中でしょうけど」
「そ、そうですね」
探索組の人達は、防衛戦のやり方もちゃんと王子様から聞いていたようだ。つまり交代表を作って投擲武器を投げまくる戦法だな。牧場からこっちに引っ越してきた人は知らないようだが、それはこっちに残った経験者が教えている。
そしてこっちに来ているのは、頭が2つあってその首の根元から1~3匹の蛇が生えて、尻尾が蛇のもの、という見た目をしたモンスターだった。王子様曰くの、ダギアン、ってやつだろう。
あれは強くなるほど蛇の数が増えるんだそうで、それが一定数を越えると大型化していき、群れの長になっているのはその最終形である、オルトロス、という事になるようだ。なお、あの蛇の牙には毒があり、蛇の目は魔眼といって、しばらく睨まれると体が痺れたり目が見えなくなったりするらしい。
「まぁリットさん曰く、蛇の目の効果は半径2mが精々だそうなので、壁の上から迎撃する分には気にしなくていいでしょう」
「なるほど」
「そうだったのか」
「とはいえ、油断は禁物。動き自体は良いそうなので、落ち着いてしっかり狙って、確実にダメージを与えていく事を意識してください。一発で倒せなくてもいいです。どうせ皆でたくさん攻撃するので、誰かの攻撃は当たりますし攻撃を当て続ければそのうち倒せます。最終的にこっちが無事であれば勝利です」
「分かりました」
ちなみにこれはちゃんと王子様に聞いた情報である。人間を好んで捕食するって時点で、元々の探索組には共有されたからな。新規探索組の人達も落ち着いて頷いているので、恐らく聞いていたのだろう。
と言う訳で、突発だが防衛戦の開始だ。どうやら探索組は準備の良い事で、内側の壁から外側の壁に移動する為の、簡易の橋を作っていたらしい。これを2ヵ所にかければ、ジェレック君がいなくてもスムーズに交代が出来るって訳だな。
まぁ内側の壁は2段階目の強化を完了しているので、壁の上をぐるっと回る事が出来るようになっている。だから交代はスムーズに出来る筈なんだが、せっかくあるのだからありがたく使わせてもらおう。
「ツミキさん! テレビ電話、繋がりました!」
「そうですか。向こうは何と?」
「あちらも防衛中で、相手はマルティヤ! それからこちらの様子を聞かれました! 交代リストはそのままで良いから防衛を続けられたし! との事です!」
「なるほど、あちらは尻尾の毒の針を飛ばしてくる方でしたか。分かりました。という事ですので皆さん、持久戦の前提で頑張りましょう。休憩の時はしっかり休んで、ご飯はちゃんと食べてくださいね」
私は休憩タイムで諸々の相談を受けていたんだが、どうやら無事テレビ電話は繋がったようだ。テレビを出しておいて良かった。まぁ向こうにそういうものは無かった筈なので、誰かのスマホを繋いでいるか、それこそ王子様が魔法を使ったのだろうが。
まぁ連絡が取れて、お互い無事で、だが同時に防衛戦中だっていうのは分かった。それはつまり、どちらもそれぞれの拠点にある戦力だけで何とかしなきゃいけないって事であり、応援には行けないって事だ。
とはいえ、どちらに余裕があるかと言われればこちらだろう。何しろ、物資の絶対量も、基本的な防衛力も違うんだ。よって、どちらがどちらに応援を出す必要があるかと言われれば、間違いなくこちらがあちらに、である。
「……一応、向こうの様子は逐一確認してください。物資的な意味で無理がありそうなら、私が緋朱に乗せて貰ってあちらへ物資補給に行きます」
「分かりました」
なので、新規探索組のリーダーをやっている人に、こっそりそういう事は伝えておいた。もちろん、無事にこの襲撃を乗り切れればそれでいいんだけどな。この、4エリア目の探索をしたことによる拠点襲撃は、4エリア目の探索率によって変わって来る。
つまり、私にもいつ終わりが来るか分からないんだ。流石に3日も5日も続くって事は無いだろうが、それでも、工一さん達の探索が絶好調だった場合、1日半ぐらいは続く可能性があるからな。




