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それはきっと、人生で最も鮮やかな色だった

作者: 詩色




全てから解放されたような気持ちで顔をあげれば、そこには白とオレンジ、雪の積もった学校の屋上と、美しい夕焼けが目に映る


澄んだ空気が心地良い


ここはこんなにも綺麗な場所だったかと、今更ながら思う


私たちを置いて西へ過ぎ去っていこうとする、この世の全てに平等で、地球に最も近く、明るく眩い恒星を見据えた


心はすっきりしているはずなのに、どこかおぼつかない足取りで前に進んだ



私は今、いったい何をしているのだろう



そう考える間にも足は前へ前へと進んでいく


ざっ、ざっ、と足音が屋上に響く中、そこには冷たく強い風が吹いていた


まるで楽園へ到達せんとする人間を後押しするように



足を1歩前に踏み出した




また足を1歩前に踏み出した





足を1歩前に踏み出し……


そこに地面は無かった



体は宙に投げ出され、体内の臓器が浮く感覚を味わう


強く吹く風を全身に浴びながら、落ちていく


ただ落ちていく


鮮やかなオレンジに染まる空が目に映る



……彼も、こんな美しい景色を最期に見たのだろうか


彼は、どんな気持ちで足を踏み出したのだろうか


彼の笑顔が目に浮かぶ


友達の笑顔が目に浮かぶ


家族の笑顔が目に浮かぶ


私のたったひとりの親友の笑顔が、目に浮かぶ



あぁ、そういえば、来週は親友と遊ぶ約束をしてい


ぐしゃり



思考は最後まで紡がれることなく、終わりを迎えた



鮮やかな赤が辺りに飛び散る


真っ白で優しい雪を残酷に染めていく


それは彼女が最期に見た鮮やかなオレンジよりもずっと鮮やかな色





泣き喚く彼女の父と母、妹、友達、……親友


その赤は、彼女らの目に強く、強く焼き付いた




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