一番は私だから
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
表面上は仲良い二人。
こういうのがあって欲しいという願望。
「髪は女の子の命なんだよ。綺麗にしていたら、きっと素敵な殿方がほっとかない。だから貴方も――」
そんな事を言いながら、私の髪を梳かす友人だった。何時も、何時も何時も何時も。
「君が綺麗にしてくれるから、私は何もしない」
そう、ムキになって言い放った。絶対に整えてなんかやらない。
昔から一緒に居てくれて、私の面倒も良く見てくれた。
――私、妹がいないんだ。だからついつい構ってしまいたくなる。
そうお小言を交えながら、髪を梳かす。襟を整える。スカートの皺を伸ばす。こんな平和な毎日がずっと、生涯掛けて続くのだと思っていた。私は絶対に相手を捨てないし、相手も捨てないだろうと、そう思っていた。
けれども其れが崩れたのは、あの子に好きな人が出来た時からだった。私と二人だけの時間だったのに、何時しかそこに、あの子の彼氏が加わる様になった。
私だけに向けられるはずの笑顔も、声も、指も、全部、彼奴に吸われる事になった。
――ねぇ、ずっと一緒に居てよ……。
――何を言ってるの? これまでもずっと一緒にいたじゃない。それは勿論、これからも。
そうじゃない。そうじゃないの。私以外の奴に必要以上に構わないで欲しいの。
でもこれを言ったらきっと、これまでの関係では居られない。絶対に居られない。だから私は何も言うことが出来ずに、しがみついた。
――赤ちゃん見たいだねぇ。
そう言った彼女の声は、何の重さも含まない声で。何の湿度もない声で。無性に腹が立った。
其れから自分の部屋に引き篭って、暫く泣いた。誰にも見られたく無かった。慰めも欲しく無かった。一番欲しいものは、もう手に入らないのだから。
「私はアンタを、あの子の彼氏と認めてないから」
これは負けが決まっている勝負だった。それでもただ指を咥えて、想い人が取られるのを見ているのは嫌だった。だから宣戦布告をしたのだ。
「あの子の一番は私だから」
私が一番『最初に』あの子を見つけて、一番『最初に』好きになったのだ。これだけは覆せない。
「言うじゃねぇか。『親友』の癖に」
じゃあもっと勝ち誇った顔しろよ。勝者らしく、誇らしく。情けない顔するなよ。
一人っ子が誰かの面倒を見るのは、割とあるあるだと思ってるんですよ。
理由が『兄弟居ないから寂しい』。
友人関係って意外と容易く消滅します。
別に彼氏が出来なくても、頻繁に合わなくなったら、今までの自分とポジショニングに別の人が入る事もあるでしょう。
それらを合わせた話。
学生時代って、この友情が永遠なんて甘ったるい事考えるんですよね。
そんな事ないのに。彼氏が出来たとか、会ってないというだけで、容易く形を変えてしまうのが現実。
でもこの子は、まだ青いから、その事実に気付いていなかったんですよ。
ずっと、当たり前の様にそばに居ると信じて疑わなかったんです。
でも彼氏が出来て、一番じゃ無くなってしまいました。
恋していた分やっぱりショックだし、前の関係を続けたいしで、縋るんです。
縋れば戻って来ると思っている時点で、私からすれば甘ちゃんだし、赤ちゃんですよ。
勿論、彼女には届きません。戻っても来ません。
だから最後は腹を括ってます。
もう一番ではない。けども、最初は譲らないって。
彼が苦しそうなのは、もしかしたら、自分も同じ様な経験をしたかも知れないから。そしてその気持ちが痛いぐらい分かってしまうから。
友人止まりだったら、今のこの子と変わりません。
笑い事じゃないんですよ。