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炎空の戦いと快晴の声

ギルド事務所の大きな建物が大きな音を立てて揺れた。


その屋根を炎の塊が突き抜け、はるか上空に飛んでいく。


モモリは驚いて見上げる。よく見ればキョウネが炎に包まれながら飛んでいる。

キョウネは邪悪な笑顔で空中にとどまると、体にまとわりつく炎を消し去ると、身をまとう魔力の濃度をさらに上昇させた。


モモリは飛行魔法でキョウネに向かっていく。


モモリは空を飛んでいる最中に、崩れかけたギルド事務所の片隅に、ほぼ無傷で眠るように倒れているのを見た。

魔道具のおかげか怪我が見られないことに少しホッとしたモモリはまたまっすぐ上空のキョウネに視線を戻した。



「キョウさん!!!」


「・・・その名前は仮の名だキョウネと呼べ」


モモリの言葉にキョウネはふんと鼻を鳴らすように笑うと冷たい声を出した。


「モモリ、お前は孤独を知っている。・・・我とおなじで・・・」


「同じ?」


モモリの不思議そうな声にキョウネは言葉をかぶせるように主張を続けている。


「お前はずっと独りぼっちだ。唯一の肉親である母親は病死、魔法の制御もままならず、二次被害を出し続け、挙句にパーティー追放される・・・それを何度も繰り返したではないか。誰も寄り添ってくれることはなくソロで冒険者をつづけていたお前をわかってやれるのは我だけだ」


キョウネはモモリの目の前にふわりと移動するとモモリの顎を指ですくい上げ、優しく微笑んだ。


「・・・違う・・・!」


「なんだと?」


「確かにパーティ―に入れてもらえなかったり、知らないうちに変な二つ名をつけられたり風評被害はあった」


キョウネはそうだろうと反論しようとしたが、モモリの目はキョウネに次の言葉と紡ぐことを許さなかった。


「・・・でも、ギルドの食堂のおばちゃんや、鍛冶屋のおじさん、ソウさん、ヒロさん・・・そしてリクさん・・・旅先で出会ったみんな・・・つらいこともあったし疑われたりとかあったけど、優しい人ばかりだった。私は独りぼっちなんかじゃなかった!」


モモリの瞳の光には迷いなどなく、キョウネは思わず目を閉じようとしたが、自らの頬をたたき必死で言葉を投げかけた。


「そんなのお前の二つ名とその噂に恐れを感じて優しい振りをしていたに決まっているだろう。モモリ、お前は我の側近として一番近くにおいてやる。悪い話じゃないだろう?」


「私の呼び名を聞いて驚いたり態度が変わった人はいた。でも、ちゃんと私と人として関わってくれた、会話をしてくれた、一緒に笑ってくれた!それにあなたについていったところできっと孤独なままだと思う。だから、私はあなたにはついていかない!」



モモリは杖を構えた。


「交渉決裂だ」


キョウネの冷たい声とともに、その周りに複数の炎の玉が浮かび上がる。


「初めからそんな気ないくせに」


モモリの杖の先に光が集まっていく。



二人が大きく息を吸った瞬間


大きな破壊音が国の上空に響き渡った。


煙の中から二つの人影が飛び出してくる。


二人は空を飛びながら、いくつもの魔法を同時展開しぶつけ合う。

そのたびに爆発音や破壊音が連続して響き渡る。


「あんなに何度も地形を変えるほど二次被害を出していたというのに、いつの間に魔力制御を覚えたんだ」


「旅の恩恵だよ!!!」


モモリは杖を強く握りしめると、上に掲げてカイモリ国古代語の呪文を詠唱した。

その杖の先から真っ赤な光が天に昇っていく。


「ほう、あの忌々しい黒曜石の民の古代魔術か。面白い」


キョウネはその魔法を阻止すべくモモリにとびかかったがキョウネの視界に映ったのは、杖の形状が変化した、ひまわりの花が咲いた光り輝く杖を掲げたモモリの姿だった。

杖にあしらわれたアクアマリンの下についていたダイヤ型のシトリンの中に微量な魔力を検知したキョウネは歯を強くかみしめるとそのままとびかかるスピードを速めた。


「魔石か!!破壊してしまえば意味など無い!」


キョウネの言葉に動じることなく、モモリはその杖を驚いた様子で見つめた後に眉を吊り上げキョウネに向き直った。


真っ赤な光が上空ではじけると拡散ビームのようにあちこちに降り注ぐ。それはキョウネに向けて撃たれたものではなく、キョウネは拍子抜けといった様子で動きを止めた。


「どれだけつよい装備を身に着けていても、当たらなければどうといったことはない!」


キョウネの片手が真っ黒に染まっていく。


黒騎士の狼槍(ダークサイド・クロウ)


キョウネはその長い爪をさらに鋭く伸ばすとモモリに再度襲い掛かる。


「・・・」

「そんな目で見るなぁ!うあぁぁぁぁぁぁ!!」


「すべての祖である聖霊よ、わが声を聞き届け我にあだなす敵を温かい祝福の風で包め。神風の怒り(メテオトルネード)!!」


キョウネの爪がモモリの喉元に届く直前に、キョウネの動きが止まった。


モモリの杖から放たれた光は禍々しい雲を生み出し、真っ赤に染めた。


その雲を引き裂いて現れたのは国を丸ごと飲み込んでしまいそうなほど大きい隕石だった。


「星天魔法…だと・・・!?」


キョウネがモモリの方に視線をやると、すでにモモリの周りには結界魔法が展開されている。

キョウネも慌てて防御の姿勢をとるも間に合いそうにない。


「この国を消し去る気なのか!お前は本当にそれでいいのか!!」


キョウネは慌ててそう叫ぶが、モモリには聞こえないのかキョウネを見つめている。


「おい!モモリ!!!」


隕石がキョウネを押しつぶす。


キョウネの断末魔が大陸に響き、数秒後には空の色が快晴に戻っていた。


モモリは地上に降り立つと、地面に落ちている美しい真っ赤な宝石を拾い上げた。


「キョウさん、あなたのこともお友達だと思ってたよ」





「わあ!にぎやかだね!」

「祝日なのでね。今日はギルドもお休みなので皆さんで屋台でも回りましょう」

「勇者の日制定のきっかけはモモリさんでしょ!」


リクの言葉にモモリは帽子を深くかぶりなおして口を噤む。


「またやってんのか。いちゃつくならよそでやれ」


「付き合ってないですけど」


モモリの冷たい声に落ち込んだ様子でしゃがみ込むリクの頭に飲み物を乗せ、ヒロは「まぁ、ドンマイ」と声をかける。


「ソウさんは国家魔術師に復帰ですもんね」

「仕方ないよ。経験も知識量もこの国で一番あるんだから」

「どうせまたサボりに来るだろ」

「それもそうか」


三人は各々酒の入った紙カップを掲げて乾杯する。


エルラードの広場は修復され、元の日常を取り戻している。

モモリが放った拡散ビームは大陸を守るための薄い膜のような結界魔法で、古代魔法ゆえの強固さと極端に薄い結界の膜は、モモリの堕とした隕石さえも防いだのだ。


キョウネが消えた後に残った真っ赤な魔石は邪炎魔心石(イーヴィル・ルビー)と名がつけられ、冒険者ギルドの象徴であるグリフィンの石像の手に収まった。


「あ、海賊の魔女」


すれ違う冒険者にその名を呼ばれる。

しかしモモリはもう落ち込むことはない。


「こんにちは。またなんかあったら手伝うんで気軽に呼んでくださいね!」


モモリのまぶしい笑顔にリクは肩をすくめる。


「モモリさん変わったなぁ」

「早く告白しちまえ、そのうち他のやつに取られるぞ」

「えっ!?」

「あの変わりようだぞ。しかも自虐風味とは言え謙虚だ。それであの魔法の才能だろ?この祭りが終わったらいろんなパーティーから声かかるんだろうな」


リクはヒロの言葉にさぁっと顔を青ざめさせる。


「え、うそ!?モモリさぁあん!!!」


モモリを追いかけるリクの声が青空にこだまする。


今日は一日快晴だ。きっとこれからは平和な毎日が彼らに訪れることだろう。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

最後かなり駆け足な展開になってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。

誤字等は後から直していますが、直しきれていないところもあるかと思います。

どうかそこは処女作として温かい目で付き合っていただければと思います。


次回作もストーリーが練りあがっておりますので楽しみにしていてくださいませ。

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