町ブラ大作戦
モモリ達が店の扉をくぐると、そこには色とりどりの服が並んでいる。
「わぁ・・・」
「君たちの恰好だとやっぱり目立つし、何よりこの国の伝統的な服を着ていた方が何となく寄り添ってます感も出るでしょ?」
エッヘンと少し自慢げな様子でトヲヤがそう言うと奥の扉から優しそうな老夫婦が顔を出す。
「若い子向けの服もあるから好きな色を選ぶといい。お嬢さんがたの身長だったらだいたい着られるだろうし、着方は教えてあげるよ」
「男どもは俺についてきな!俺がこの国の流行ってのを教えてやるからよ!」
おばあさんは若い女の子に服を見繕えることが楽しくて仕方ないといった様子でモモリとミレイを奥の座敷に連れて行き、おじいさんは男性陣に別室を親指で示して先に行ってしまった。
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少し時間をおいて、改めて着替えが済んだ一行が売り場に集まる。
「すごい・・・二人とも綺麗!!」
リクがモモリとミレイを見て声を上げた。
モモリは赤色の着物に花や蝶の模様があしらわれており、金の刺繍が美しい墨色の帯で飾られている。
ミレイは瞳の色と同じ深い紺色の着物に、モモリと同じ模様があしらわれていた。帯は銀の刺繍が美しい藤色のものだ。白い帯締めには銀の装飾が施された飾りが通されている。
二人ともつややかな黒髪がよく似合っている。
「二人は髪型も身背格好も似ていたから、思い切って色違いで双子のようにしてみたよ。我ながらいいセンスだと思うね!動きやすいように袖の振りは短いものにしておいたよ」
おばあさんは自慢気な様子でコーディネートのポイントを一つ一つ説明している。
「ばあさん!そのくらいにしておけ。ほれ、俺も男連中に一番似合うのを見繕ったぞ!」
おじいさんがそう言って振り向くとそこには、着物をそれぞれ着こなした男性陣が並んでいた。
リクの着物は明るい紺色に白と金の波模様があしらわれており、同じく金の刺繍が付いた黒い帯を締めていた。
ヒロは墨色のの無地の着流しを着ており、帯は闇のように濃い黒に赤いまだら模様で、彼の赤髪によく似合っていた。
ソウは墨色をした無地の着物に薄灰色の縞模様の帯を締めている。
「皆さんもかっこいいですね。似合ってます・・・ところでルマルさんは?」
モモリは一人足りないことに気が付きソウ問いかけると、おじいさんが困ったように頭をかいた。
「あーそれがな、こんなの似合わないって言って出てきてくれねぇんだ。」
「ちょっとルマル~私ルマルのかっこいい姿みたいんだけど~」
ミレイがそう言って裏の暖簾をくぐっていく。
「えっ・・・」
ミレイが言葉を失ったように固まったため、全員でミレイノ後に続いておくの部屋に入る。
「おい、お前ら!見せもんじゃねぇぞ」
不機嫌な様子のルマルは白虎の姿が大きく刺繍された濃紺の着流しを身にまとっていた。帯は深緑に白の横縞模様だ。
ミレイはその姿に見とれるように立ったまま固まっていた。
「え、めちゃかっこいい」
モモリが思わずそう言うとリクがバッとモモリに視線を向けた。
「モモリさんってこういうタイプが好きなのかな…ワイルド系かぁ・・・」
「何言ってんだ兄ちゃん!あんたに一番似合うもん見繕ってやったんだから自信もちな!男は自信が一番の装飾品なんだからよ!」
おじいさんが笑いながらリクの背中を強くたたくと、リクはその痛みに顔を少ししかめながらも笑ってお礼の言葉を述べた。
「うっ・・・スイマセン・・・ありがとうございます・・・ハハハ・・・」
「まぁなんだ。この着物のお代はトヲヤにあとで請求するからよ、そのまま着ていきな!さっきまで着てた異国の服はこの袋にまとめておいたから持っていくといい!うちの店で取り扱ってる中でもいっとう高級な魔法鞄さ。まだ余裕があるからそのまま使ってくれ!」
おじいさんとおばあさんはご機嫌な様子で店から一行を送り出すと姿が見えなくなるまで手を振って見送りを続けた。
この国の伝統的な衣装を身にまとっていても、トヲヤ、モモリ、ミレイ以外は耳がとがっていたり目や髪の色が全く違うなどまぁ目立つ。
町を歩いていれば行きよりは減ったとはいえ視線を集めることは変わらないわけで。
思わずリクはため息をついた。
「やっぱり見られてるよなぁ・・・」
「仕方ないよ。一応俺の魔法で髪の色は変えられるけど長時間全員は無理だからなぁ・・・」
トヲヤがそう言ってうなだれると、モモリが不思議そうな様子で質問を投げかけた。
「え、魔法で髪の色変えるのってそんなに難しいですか?」
「へ?」
「外に出るときだけでいいならそんなに難しくないですよ?」
モモリの言葉にトヲヤとソウが反応する。
「それホント!?」
「本当かねモモリ君!!!」
「と、とりあえずここじゃ目立つので夜に教えますね・・・」
二人の圧に若干引きながらも笑いながらモモリはそう答えた。
その日はもうこれ以上ないほど注目を浴びてしまったということで開き直ってそのままの姿で下町の観光を楽しむことにした。
「・・・はー楽しかった!」
焼いた握り飯を片手にすっかりご機嫌なリクは街の人とすぐに打ち解け様々なおまけをもらって大荷物になっていた。
もちきれない分は他のメンバーが持ったり魔法鞄に入れたりしている。
「ところで髪の色を変える魔法なんですけど、幻影魔法の応用なので、ソウさんの耳や皆さんの目の色もごまかせますよ。今夜にでも庭園で試してみましょう」
モモリは魔法の話ができるのが楽しいようでウキウキで提案した。
「ねえ、モモリさん」
「リクさん?どうしましたか?」
「俺、このままでいいかなって思ってるんだ。髪や目の色を変えたらそれこそ嘘つきになっちゃいそうで」
リクは真剣な面持ちで言葉をつづけた。
「今日、このままの姿でも普通に話しできる人もいたし・・・そりゃあ石を投げてきた人とか、ひそひそ話してた人とかいたけど、外の人が来たらそうなるのも当たり前というかなんというか。
・・・それならいっそ、ありのままでぶつかって俺たちのこと知ってもらう方がいいのかなって」
リクはそう言って全員に笑顔を向けた。
その笑顔は夕日に照らされていっとうまぶしく見えた。




