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慣れない視線と穏やかな街並み

「ミレイさんは髪の色こそ真っ黒だけど、目の色は黒に限りなく近い青だし、ソウさんはエルフだし目の色も違うけど君はどっちも純粋な真っ黒だったから、もしかしてどうにかしてこの国から出たとかかなって」


トヲヤはえへへと頬をかきながらそう言い、モモリの答えを待っているようだ。


「わかりません」


しかしモモリは淡々と真実を言うしかなく、その返答にトヲヤは目を丸くさせた。


「えぇ!?ど、どういうこと?」

「母が言っていたのは、父が私と母を逃がす代わりに犠牲になったことくらいです。あと、名前が父さんに関係するってくらいです。ただ、私は魔力量が多いのに制御が得意ではないので、ルーツを知ることができれば魔法の精度も上がって困りごとも解決するんじゃってソウさんが言ったんですよ」

「なるほどぉ」


トヲヤは意味深に頷くと、応対するために部屋の外に出てきていたモモリの手をつかみ引き寄せた。


「ねね、これからこの国を案内させてよ!一応これでも次期王候補だからね。来賓の案内は俺の仕事ってこと」

「へ!?」

「あれ、言ってなかったっけ?」


トヲヤはあれぇ?ととぼけた様子で首をかしげている。


「あ、そうだあとリクさんに勘違いされたらモモリさんが大変だろうから先に言うけど、実は俺婚約者がいるんだ。今度紹介するね」

「なんで困るかよくわかんないですけどわかりました。彼女さんにもよろしく言っといてください」


その返事に苦笑するトヲヤはそのまま行こうと手を伸ばしてきたので、モモリは戸惑いながらもその手を取った。


「ミレイさんは?」

「散歩にいくって言ってましたよ」

「それなら庭の方かな?大きめの池があってニシキっていう魔魚が泳いでるんだけど、客人にはかなり人気なんだぁ」

「そうなんですねぇ」


外廊下を二人で話しながら歩いていると、トヲヤの言っていた通り池を覗いているミレイが視界に入ったので二人で手を振って呼びかける。


「あ、二人も来たんだ」

「トヲヤさんが下町を案内してくれるらしいんだけどミレイさんも行く?」

「いく!!!!!!!」


ミレイは食い気味な様子でモモリの提案に返事をすると、財布を取りに走って行ってしまったのでいったん庭に作り付けられた椅子に二人で腰かける。


「モモリさん・・・?」


二人で談笑していたその背後から聞きおぼえのある声がして振り向けば荷物を置きに行った男性陣四人が並んでいる。モモリはミレイにした説明と同じ話をした。

四人も同行することになり、全員でぞろぞろと門の前に集まる。


「それにしてもこの門でかいよなぁ」


リクが興味津々といった様子で目の前の大きな門を見上げている。

門は黒曜石でできた重厚な作りをしており、そのサイズはどんな家よりも大きい。


「カイモリの大門だよ。我が国カイモリ国を象徴するものなんだ。門に金で書かれている絵は太古の神であるゴク様なんだって」


トヲヤの話に細かくメモを取るソウを無視してヒロは質問をした。


「黒い髪の女神・・・ねぇ?この国を作ったとかそんなもんか・」

「ううん。この国の魔力適正の高い人材を奴隷として連れ去ったり鍛冶スキルの搾取をした大陸の国々に疲弊していたこの国に同情した女神様が大陸との間に魔力の霧を作って守ってくれたんだよ。この国の血を引くものは混血であろうと女神の祝福を受けられるんだ。」


魔力で開閉するという門をくぐりながら国の歴史をまるで当然のようにペラペラと説明するトヲヤ。

それを一字一句逃すまいとメモを取るソウ。

その姿を呆れ交じりに見ながら同行するその他一行。

そんな異様な集団が目立たないわけがなく。


「ねぇあれって・・・」

「裏切りの民でしょ?なんであんなにのうのうと・・・」

「トヲヤさまも大変ね・・・」


街中で針の筵にさらされながらも笑顔を崩さずに国民に手を振っているトヲヤに関心するモモリ。


「ところで今どこに向かってるんですか?」


モモリの質問に迷いのなかったトヲヤの足が止まった。


「それはついてからのお楽しみ!」


トヲヤは一度振り返ってそれだけ言うと、口元に人差し指を当てて片目をつぶるってから楽しそうな様子で再度歩き始めた。


「あそこの店は団子が美味いんだけど、実は店長のオリジナル饅頭が隠れた名物なんだ。」

「今手を振ってくれた娘さんは外国の話が好きで、家が経営している本屋に大陸の本を集めたコーナーを作っているんだ。あとで一緒に行こう」

「今睨んできたおばあさんは街の中でも有名なおもちゃ屋の店主で。大人の男が大嫌いなんだ。」


「・・・全部覚えてるのか・・・すごいな」


ずっと黙っていたルマルが思わず口を開くと、どこからか少女の声が聞こえてきた。


「トヲヤは人が好きなので、少なくともこの中央の町の店はすべて覚えてると思いますよ」


ルマルは真横から聞こえてきた声に驚いてのけぞる。

声の方に全員が注目するとつやのある黒髪を肩あたりまで伸ばした可愛らしい女性がニコニコと笑顔を向けて立っていた。


「ルカ、作曲の仕事は終わったの?」


トヲヤにルカと呼ばれた女性はにこっと笑う。


「さっき納品してきたんだ。家に帰ろうとしたところで見つけてついつい話しかけちゃった。お仕事お疲れ様」

「っ・・・ありがとう。夜にまた家いくよ」


すっかり二人の世界に入ってしまっている様子を見てヒロが咳ばらいをする。


「あ、ごめんごめん。じゃあね、ルカ!」


ルカは少し名残惜しそうに笑いながらも一向にぺこりと頭を下げると見えなくなるまで手を振っていた。



_________

「さ、ついたよ。ここが俺の御用達の呉服屋さん!みんなにはここで着替えてもらいます!!!」


トヲヤはそう言って先に店の中に入ってしまった。


モモリ達は唐突な紹介に驚きつつもトヲヤに続いて店に入るしかなかった。

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