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静かなる船出

暗闇中で、黒い船が一艘、音もたてずに静かに進んでいく。


「この船どうやって動いてるんだろう?」

「この船自体の魔力だよ。実はあの村から霧向こうの国に向かって魔力の糸が伸びてるんだ。この船はその魔力の糸を巻き込みながら、決まったルートで向こうに行くんだよ」


モモリの質問にミレイが答える。


「ふむ、ドワーフの国ドルテにあるロープウェイのようなモノだろうか?」

「そのロープなんとかがどんなものかはわかんねーけど、船の魔力器官も正常に自動モードに切り替えが済んでる。あとは向こうにつくまで好きにしろ」

「自動といったかい!?これは詳しく話を聞かせてもらわなくては!」

「お、おい!!」


ソウは興味深そうに船の内部を観察しながらルマルに話しかけている。


「おいリク」

「っ・・・!」

「モモリに話しかけに行かねーのかよ」

「だ、だってぇ・・・」


各々ワイワイと楽しそうに過ごしている中で普段の様子とは打って変わって静かな様子のリクにイライラを隠すことなくヒロは話しかけた。


「お前そんな女々しかったのかよ・・・ったく・・・オイ、ミレイ!話がある!ちょっといいか」

「なになに~?」

「ちょっ、ヒロっ!?」


ヒロはミレイにこれから向かう国の情報についての質問をはじめ、リクの言葉を完全に無視し始めた。


「うぅ・・・」

「あの、リクさん忘れ物でもしたんですか?それともおなかすいたとか?ここ料理できるのかな・・・」

「そうじゃなくて、その」

「あ、もしかして船苦手?船酔いとか?それなら村で買った薬の中に・・・」

「そうじゃなくて!!!!!」


二人のやり取りを見てミレイもははーんと何かに気が付いたようで、ヒロに何か話しかけると席を外してしまった。

完全に助けを求める人がいなくなったことに気が付いたリクは変な汗をかきながら言葉を一つ一つ選びながら紡いでいった。


「その、ずっと言いたいことがあって」

「うん、何?もしかして昨日のご飯に苦手なものでもあった?」

「そうじゃないよ。えと、その外套について教えてもらっていいかな?」

「え、あー話したことなかったっけ」

「うん。えと、見た感じかなり年季が入ってるし、刺繍されてる魔法文字もかなり昔の術式だなって思ってたんだ」


リクがそう言うと、外套の裾にある金色の刺繍をゆっくり撫でた。


「これはね、五歳くらいの頃かな?二十年前に町のお祭りがあった時なんだけど、家族とはぐれて魔獣のいる森に入り込んじゃった時に助けてくれた人のなんだ。

この外套は魔獣の目をそらす認識阻害の魔法と防御魔法がついているからこれを羽織って親のところに行けって。」

「そう言えばそうだったな・・・」

「?・・・なにが?」

「いやいやいや!?何でもないよ?それで続きは!?」

「それで大きくなったらそのお兄さんと冒険するって約束したんだ。その時にこの外套を返すって。・・・今思うと私の初恋だったんだろうなぁ」

「ブフッ」


リクは緊張で口の中が渇いて仕方ないといった様子で口に含んでいた水を海に向かって噴き出した。


「え、大丈夫?むせた?」

「ゲホゲホ、そ、そうだね」

「へんなの。まあいいや。でも今考えるとそのお兄さんも二十年たってればもうかなりおじさんだろうし、私のことなんで忘れてるだろうなぁ。ていうか、この外套ももう時代遅れだし返されてもこまるかなぁ・・・」

「おじさん・・・」


リクが一人で傷ついているのを完全に放置してモモリは思い出に浸っているようだ。


「その、モモリさん」


リクが一息置いて唾を飲み込み声を出した瞬間だった。



ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ


大きな音が二人のおなかから聞こえてきた。


「・・・」

「・・・」

「おなかすいたね」

「ごはんにしよっか」


二人は笑いあって船の内部に入っていった。



船に作り付けられたキッチンは炎魔法の魔法陣が描いてあり、火力調整も魔力を流すだけでできる最新式のものだった。


「え、めっちゃ最新式じゃん!」

「モモリさんが料理上手ってことだったので。私も食べたくて・・・えへへ」

「急遽無理言って設置させたんだと。もともとあったキッチンでもよかっただろ」

「だってだって!」


ミレイとルマルが言いあっている様子を放置しながらモモリは自分の魔法鞄(マジックバッグ)から様々な肉や野菜を取り出し始めた。


「モモリさんこれは?」

「魔法演出の最終確認が終わった後に何泊かするってことだったので買いこんでたんですよ。」

「やったー!」


モモリは室内にある箱の中に肉や野菜を入れ始めた。


「これもすごいよね。氷魔法で庫内を冷やす魔法アイテムは沢山あるけどこのサイズはたかいやつだよなぁ・・・」

「私もおやつ入れるからね!」


ミレイもウキウキとした様子でモモリの横に来ると、魔法の空間から様々なスイーツを取り出しては、箱の中にしまっていく。


「アイスマカロンはあの村の銘菓で、氷魔法の得意な一家が作ってるんだけど、すごく並ぶんだよ~」

「え、そんな時間あったかお前」

「差し入れでもらったから速攻しまった!」


ミレイはドヤ顔でピースサインをしている。


「さて、何作ろうかな・・・」

「おれ、砂漠に入ったばかりの時に作ってもらったシチュー食べたい!」

「あぁ、あれはたしかに美味だったね」

「夜は冷えるからいいかもな」


モモリの言葉をっ遮り複数人が声を上げる。

モモリは肩をすくめると軽く笑ってチーズを取り出した。


「しかたないなぁもう」


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