ライブスタート!
「オーライオーライ!その柱はそのまま上にあげて!」
簡易ステージの設置が始まると、スタッフに扮したリク、ヒロは他の作業員に見えないように急ピッチで作った真っ黒なランタンをステージの中央照明と取り換えた。
その底部分にはモモリの筆跡で書かれたと思われるオリジナル魔法陣がうっすらと見える。
「これでいいのかな?」
「タイミングよく魔力を流せば発行する魔法陣とか、あいつじゃないと思いつかねーよな」
「おーい!若いの!そこで何しゃべってんだ?さっさとこっち手伝え!」
二人がこそこそ話しているのを見つけたらしい現場監督が大きな声をだしながら手を振っている。
「あ、はーい!今いきます!」
リクの元気な声にため息をつきながら、ヒロはその背中を追った。
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「すごぉい!」
完成したステージの全貌を見て、モモリは感嘆の声を上げた。
全体に黒と青を基調にした神秘的な柱がならび、上のアーチに中央に真っ黒なランタンがあやしく光を反射させている。
「へへん、リハーサル用の仮ステージでこのクオリティなんだよ!本番は海に面してる村でもっと豪華なステージをやるんだよ!」
モモリの背後からそう言いながら現れたミレイはおそらくステージ用と思われる美しい衣装
身を包んでいた。
腰につけられた大小の鈴はミレイが動くたびに上品な音を奏でる。風に揺れる髪飾りの花の白さはミレイの黒髪によく映え、まるで夜空に浮かぶ満月のようだ。
腰にまかれた布は特産品なのか、少し独特な模様がおられており、衣装の上品さを印象付けるにはもってこいだ。
「ミレイさん、超綺麗・・・」
「へへ、ありがと。私たちはあっちで演出の最終確認しよ!」
ミレイに手を引かれてモモリはステージ横のテントの中に向かった。
陽も落ちかけて、市場の灯が幻想的な雰囲気に拍車をかける。
オレンジ色の灯が広場を包み込むのを合図にステージに冷気の雲が充満する。
それに気が付いた観客たちはざわつきをおさえ、静かにステージに視線を集中させた。
雲が晴れ始めると真ん中に一人の影が浮かび上がる。
「今日はリハーサルだけど、全力でやるから、最後まで楽しんでね!!」
ミレイの大きな声が会場にこだますると同時に真ん中の人物がアクアマリンの杖を真上に掲げた。
「え、モモリさん!?」
「はぁ!?」
警備員に扮していたリクとヒロは目を見開いて驚いた。
モモリは体形の隠れる大きな服を着ており、表情の読めない真っ白な仮面からはあの特徴的な黒髪がサラリと流れ出ている。
黒髪のせいか身長のせいか、観客はモモリのことをミレイだと思っているようだ。
モモリが掲げた杖から強い光が放たれた。
その光はまっすぐに真上のランタン向かうと吸い込まれ、あやしい紫色の光を放ち始めた。
視線をステージに戻すと、そこに立っていたのはステージ衣装に身を包んだミレイが仁王立ちしていた。
次の瞬間ポップな音楽が流れ始める。
「この静かで 澄んだ空は何を歌っているのだろう~♪・・・」
ミレイの歌声がそれに重なると照明が走り出す。
魔法の光線のような光る線が何度も交差し、ミレイの周りには光の玉が浮かんでは消えていく。
「モモリさんの魔法だ・・・」
リクはその演出の様子に呆けるように見入っている。
「いつの間にかこぼれてた願い達、瞬いて・・・」
曲が二番に入ったころだろうか、ヒロの隣に立っていた衛兵がいきなり観客をかき分けるようにして走り出した。
「お、おい!?」
ヒロは慌ててアサシンの固有魔法出速度上昇をかけると衛兵を追いかけた。
リクはその様子に気が付いて自分も追いかけようとしたが、そのほかの衛兵が全員二人に気を取られていることに違和感を覚えた。
冷静に周りを見回すと、大きなリュックを背負った商人の男が舞台袖の黒いカーテンのテントに入ろうとするのが見えた。
「本命はあっちか!」
リクも慌ててテントに走り出す。
リクは嫌な予感しかしないと思いながら、その位置にいるはずのモモリが気がかりでならなかった。
しかしヒロの配置は観客席をまんべんなく見渡せる位置だったのが災いしてしまい追いつく前に謎の承認がテントに入ってしまった。
それを見たリクは背中に刺してあった大剣に手をかけ、踏み込む足に力を込めた。
「モモリさん!!!!!」
リクは黒いテントに手をかけた。
「モモリさん大丈夫!?」
真っ黒なカーテンが大きく揺れた。
「あれ?リクさん、持ち場はどうしたんですか?」
リクの視界に映ったのは、自動魔法発生用魔法陣の書かれた地面の砂にモモリが使用しているアクアマリンの杖が刺さった光景と、その横でテーブルの上にお菓子や飲み物を広げて優雅にティータイムをしているモモリと向かいに座っている、リゾート仕様のキョウの姿だった。
ミレイの声は田中理恵さんのイメージです。(とある機動戦士アニメのキャラクター意識してます)
ミレイの持ち歌の歌詞を書いておきます。
【タイトル未定】
この静かで澄んだ空は 何を歌っているのだろう
あの日に忘れた約束を すぐにとり戻したいから
思い出の中の優しさ 離さない
星の舞う舌で願いを捧げるわ
砂漠の中心に光る 一番星みたいに
いつの間にかこぼれてた 願いたち瞬いて
ちいさなすれ違い それが壊れてしまう合図なの
大切な物たちを光にして 遠くの空へ飛ばしていきたい
月の眠る下で 想いのたけを叫ぶ
声がかれてしまっても きっと届くはず
星の舞う舌で願いを捧げるわ
砂漠の中心に光る 一番星みたいに




