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砂漠の夜は寒いはずなのに、建物自体に魔法がかけられているのか、空気がほんのり温かい。


その日は宿泊客がいないからと、広地部屋を四つ用意してもらった四人は、その日の疲労を清算するかのように深い眠りについた。




窓の外から相変わらず不気味な怪鳥の鳴き声が聞こえてくる。

余りにしつこく声を上げるので、モモリは重たい瞼をこすってベッドから身を起こした。


「んぅぅ、朝かぁ・・・」


さすがに室内では魔法は使えないので、着替えを済ませてから廊下の突き当りにある共用洗面台で顔を洗う。


「モモリさんおはよう!いい朝だね!」


いかにも風呂上りのリクが話しかけてきても、モモリは反応せず、タオルで顔を拭いている。


「最近塩度増してない?」

「早いですね。鍛錬でもしてたんですか?」

「あ、突っ込まない方向なんだ・・・まあね。少しでも後衛が戦いやすくするのが俺の役目だし。昨日もあのミレイさんだっけ、あの一撃はなかなかすごかったから、負けられないなって!」


モモリはまぶしい笑顔でブイサインを向けるリクの横を真顔で通りすぎると、あらかたまとめていた荷物を背負いなおしてそのまま食堂に向かった。


「無視ぃ・・・」


リクのむなしい声が朝のすんだ空気に溶けて消えた。




四人が食堂に集まると、おかみさんが豪快な足取りで朝食を運んできた。


「おまたせ!この村で取れた食材と、村周辺の砂漠で狩られた魔獣の肉を使っているから新鮮だよ!」


そう言って目の前に置かれた料理は白い酸味のあるソースのかけられたサラダに蒸し鶏と炒めた卵のサンドイッチ、ひき肉と細長い草の入った金色のスープだった。


「おいしそお・・・」


モモリは思わず垂れそうになるよだれをぬぐい、目の前の光景にくぎ付けになった。


「ふむ、このサラダに使われている野菜は見たことが無いねぇ。あとで畑を見せてもらっても?」

「かまわないけど、砂漠の気候でしか育たない野菜ばかりだよ?そんなものを見て楽しいなんてあんた変わってるねぇ、高名な学者さんでもあるまいし!」


おかみさんの愉快そうな声にソウは肩をすくめるだけだった


ヒロとリクはあまりに魅力的な料理におもわず手を合わせるとすぐにがつがつと食べ始めている。


「はっはっは!そんなに急いで食べなくてもご飯は逃げないよ!」


おかみさんの大きな明るい声が食堂の雰囲気をさらに明るいものにしていった。



食事が終わり、おかみさんにお礼を告げると早速前日に約束していた村の中央広場に向かう。

やはり砂漠地帯なだけあって村の人間はかなり露出の高い服を身にまとっている。

そんな中、ローブやら鎧やらを身に着けている旅の一行はかなり目立つようで、すれ違う人どころか、広場に面している店の店員も客もモモリ達に視線を向けていた。


「・・・すごいな・・・」

「服装からしても目立つからね」


「あ!みなさーん!」


オアシスを改造したらしい噴水の前で談笑していると、前日と変わらず元気な声が聞こえてくる。


声の方を見れば、ミレイが大きく手を振っている。


すぐにミレイの方に全員で移動すると、ミレイはモモリの耳元に顔を近づけ

「モモリさん、髪の色絶対戻しちゃダメだからね?」

と小声で念押ししてから大きな声で出発と叫んだ。


モモリに連れられてきたのは村の中ではいっとう大きな建物のようで、扉こそないものの動物か魔獣の骨出飾られたそこそこ立派な門が付いていた。


「そんちょー!ババ様ー!お祭りのことでお客さぁん!」


建物が村のはずれにあるのをいいことにミレイは叫ぶと、そのまま門をくぐって走り出してしまった。

慌てて追いかけると、建物の中から健康そうな褐色の肌にシルバ―の髪をした青年が出てきた。


「ルマル!ババ様か村長いる?いたら呼んできて!私中で待ってるから!」


ミレイがそう言って青年の言葉すら聞かずに建物の中に入ってしまうと、ルマルと呼ばれた青年は面倒そうに頭をかいて、

「とりあえずは入れ。あいつが許したんなら危険分子じゃねぇんだろ?」

と中に四人を通した。


ルマルもこの村の住人なのか、顔にはワインのような暗い赤色でトラのような模様が描かれていた。


ミレイと立ったまましばらく談笑していると、ルマルがぶっきらぼうに声をかけてきたので声の方を見ると、おそらく人間にしては長生きなのだろう、すっかりしわが垂れ下がって表情の読めない老人と気の強そうな老婆がルマルの前に立っていた。


「ババ様、昨日この村に来た人たちなんだけど、今回のお祭りに用事があるって・・」

「帰ってもらいな。霧祓いの灯(きりばらいのほのお)はこの村の象徴であり祭りごとに必要な祭具だ。それをやれ研究対象だの貴重な遺物だの言って武力行使で奪い去ったのをわたしゃ忘れないよ」


ババ様と呼ばれた老婆は吐き捨てるようにそう言って部屋を出て行ってしまったが、村長の方は穏やかな雰囲気でモモリに話しかけた。


「お嬢さん、髪の色を見せてはくれんかね?」


リクとヒロはハッとして武器を出す構えをしたが、村長は言葉をつづける。


「お嬢さんは霧向こうの民だろう?あんな古臭いランプに用事があって、この時期に村に来たということはそういうことだと思ったのだが」


モモリは震える手で魔法を解除した。すると赤っぽい茶髪だった髪が漆黒に染まっていく。


「うん、きれいな髪だ。上質な魔力を感じるよ。あのばあさんは魔法適正が無いから気が付かないかもしれないが、私は、君を歓迎するよ。もちろん、そこのナイトくんたちもね。」


村長の声に全員が安堵のため息を漏らす。

村長は立ち話もなんだからとルマルに茶を淹れさせ、席に着くよう促した。


「実は私ー・・・」


モモリは促されるままに席に着くと、自らの旅の目的を村長に話した。魔法の制御が苦手で、初級魔法一つ取っても威力がけた違いになってしまうこと、ソウが親の片方が霧向こうの国の民の血を受け継いでいること、モモリ自身の魔力の暴走も関係しているのではないかということ・・・


すべて聞き終わると、村長よりも先にルマルが口を開く。


「俺は村長にの意向に従う。拾ってもらった縁もあるしな。何より嘘発見の魔法に何も引っかからなかった」

「なんだねその魔法は!!!!」


ルマルの言葉に一番に反応したのはソウだった。


「その魔法葉ルマルの固有魔法でのお、他の者には使えないんだ。御客人が習得することはできない、すまないね」


村長がそう言うと、ルマルは眼帯で隠していた左目を見せた。


「この目の固有魔法だ」


そこには銀色の右目とは違い、澄んだワインレッドがの瞳がこちらを見ている。


「きれぇ・・・」


モモリが思わず言葉を漏らす。


「ま、こいつのおかげでおれはさんざんな経験をしたけどな。」

「彼は砂漠のど真ん中で傷だらけの状態で倒れていたんだよ。今じゃこうして家族の仲間入りだけどね。」


村長が手を伸ばすと、素直に腰をかがめて頭をなでられているルマル。その姿を見てずっと黙っていたミレイが怒りの声を上げた。


「村長ずるい!私もルマルのことなでたい!」

「お断りだ。」

「なんで!私の方が年上なのに!」


怒るミレイにあかんべと舌を出し挑発するルマル。

何ともにぎやかになってしまい、先ほどのしんみりした空気はどこかに行ってしまったようだ。


モモリはそんな様子を見ながら、お茶のお代わりを頼もうと席を立ち、先ほど村長たちが出てきた方に向かって歩き始めた。



「えーと、こっちかな?・・・・あれ?」




廊下の先を曲がったモモリの意識は、背後に現れた何者かの昏睡魔法によって徐々に薄れていった。



「巫女様は、私たちがお守りいたします。」


モモリはそれだけ聞くと、そのまま意識を手放した。


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