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砂漠でいちばんのアイドル

歩き続けて疲労もそこそこたまってきた二日目の夜、小さな明かりの集合体が視界に映った一行は、

先ほど前の疲労など忘れたように軽い足取りでその明かりに向かって駆け足になった。


「やったぁ!キッチン付きの宿あるかな?」

「私に料理させる気満々ですか」

「そりゃぁだって初日からあんなにおいしいもの作ってくれた上にお昼とかもすごい豪勢だったじゃん!」


リクの発言にモモリは目を見開いて驚きの声を上げた



「え、皆さんいつも何食べてるんですか?」

「うーん、ダンジョンに潜るときや任務出遠出するときは冒険者おなじみの店で食材をそろえるからエネルギーブロックと飲料水かな?たまに臨時収入が入ったら干し肉とか食べることもあるかな?」


ソウが答えると、モモリは開いた口がふさがらないといった様子を見せた。


「むしろお前は何食ってんだよ。」


ヒロの呆れたような声にハッと我に返ったモモリは、気まずそうに質問に答えた。


「基本遠出のクエストは受けないので、コッペパンサンドを作っていつも出てます。出先で簡単に作れる具材もある程度用意していきますが・・・」

「すげぇ!いいなぁ、モモリさんやっぱり俺らのパーティーに正式加入・・・」

「しないです」


夜も更け民家の灯しかないくらい道出やいやい言い合っている男女の声に不信感を感じたのか、顔に赤と桃色のペイントを施した褐色の肌の女の子が近づいてきた。


「あの、旅の方ですか?」


鈴を転がすような声が似あうようなかわいらしい彼女の澄んだ瞳は朝焼けのような美しい茜色をしていて、見るものを魅了させてしまいそうだ。


「あ、スイマセンうるさくして。近くにテントを張ってもいいですか?」


モモリがリクを無視して少女に向き直る。


「私の家は民宿を経営してるので良ければ案内しますよ。」

「本当ですか!?こんな遅くに・・・」

「大丈夫!その代わり私の明日のステージの手伝いしてもらうから!」


明るい笑顔で親指をたてた少女は四人の前に立つと軽い足取りで歩き始めた。


「あれ?やるって言って無くない?」

「まあいいんじゃない?」

「行ってから話を聞くしかねーだろ」

「ついでに海辺の町への行き方も聞こうじゃないか」


四人のひそひそ声が聞こえたのか、少女が立ち止まって低い声を出した。


「海辺の町・・・?あなたたち、霧祓いの灯(きりばらいのほのお)目当て?」


「まぁ、広い意味で言えばそうかな?」


ソウの返答に少女は足を止めると、魔法で大きな二股の槍を自らの手に出現させた。


「ごめん、さっきの約束破棄になるかも」


ゆらりと振り返った少女は低く構えると、さらりとした長い黒髪を夜風にたなびかせて槍を構えた。

槍の中央についている琥珀の結晶がきらりと光ったと思うとモモリの目の前にその槍先を向けた。

その動きの速さは瞬間移動と間違うほどで、モモリは死を覚悟して目をつぶった。


「危ない!」


金属同士がぶつかり合う音がして、モモリが目を開けると、リクの大剣がその槍を受け止め火花を散らしていた。


「その黒髪、私と同じ・・・巫女の座を奪いに来たんでしょ?」


少女の言葉にシンと静まり返る。


「巫女・・・?」

「え、待ってサルディア様からなんか聞いてた?」

「いや、何も」


四人の様子に少女は構えていた槍を魔法でどこかに収納して困惑しながら声をかけてきた。


「あれ?もしかして無関係・・・ですか?」


「あぁ。僕たちは霧の向こうに用事があってね。可能ならその交流に便乗させてもらいたかったのだが・・・」


ソウがすかさず少女に説明をすると、少女は顎に手を当ててしばらく考えると、極めて冷静な声で言った。


「明日・・・・・・村長のところに行きましょう」


とりあえず宿に案内しますと言いながら近くの少し大きな民家の扉を開けると何やら中に向かって声をかけてから、中に入るよう四人を促した。


「あ、黒髪ロングの貴女は一応魔法で髪の色変えるとかできますか?」


少女はモモリだけ呼び止めたが、モモリはすぐに先ほどのやり取りを思い出し、とっさに杖を振って髪の色をこげ茶に変えた。


モモリ達一行が民宿に入ると、大柄なおかみさんが笑顔で迎えてくれた。


「おやまあ、旅のお方かい?ミレイ、わざわざ連れてきてくれてありがとうね。今お部屋用意するから食堂で休んでいておくれ。」


おかみさんが姿を消すと、四人はミレイと呼ばれた少女と一緒に食堂と書かれた大きな部屋に入り荷物を下ろした。


「さっきは名乗るの忘れてたね。改めまして、私の名前はミレイ、この村出身で砂漠のアイドルをやってるんだ!」

「あいどる・・・?」


ミレイの自己紹介に一同が唖然としていると、ミレイはさらに続けた。


「アイドルっていうのは、そうだなぁ・・・他の国だと・・・冒険者協会の看板になるようなきれいな人とかわかる?なんかそんな感じかな?」


「なるほど・・・?」

「巫女っつーと祭事で舞いを披露するイメージがあるな」


ヒロがぼそりと言うと、ミレイがヒロの方向き直った。


「それ!それが私の仕事!年に一回の祭事の舞いがメインで、あとは大小の祭事で呼びつけられたりかな。ちゃんと持ち歌だってあるんだから!まあ今年はいろいろあって特別な儀式があるってんでババ様に特別な舞いの修行をつけてもらうために地元であるこの村に帰ってきたわけなんだけど」


ミレイの言葉にソウが食いつく。


「それが先ほど言っていた霧祓いの灯(きりばらいのほのお)と関係するものなのかね」


ソウにミレイが静かに言い放つ。


「それ今言わないで。誰が聞いてるかわからないんだから。細かいことは後で、ね?」


「は、はぁ・・・」

「なんかありそうだね」


その後四人もミレイに自己紹介をしているうちに部屋の準備を済ませ戻ってきたたおかみさんに声をかけられたのでお礼を言って部屋に向かった。


2日ぶりのふかふかの布団は四人の疲れた体を深い眠りに誘い込んでいった。


星がきれいな空の下で、骨だけの怪鳥がまた、ひときわ大きく鳴き声を上げた。

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