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別れと新たな旅の始まり

「この扉の向こうが砂漠だ。ここから先は国としての形態を成してない。町や集落、村が点々とあるとはいえ、ほとんど無法地帯だと思ってくれていい。近くの町まで送ってやれなくてすまない」


オリーヴは少し申し訳なさそうに言うと、沢山の物資の入った魔法鞄(マジックバッグ)をひとつ、モモリの手に乗せた。


「これは?」

「今回世話をかけたからな。本来なら国内のみで解決するべきだったものだったのに巻き込んでしまったお詫びだ。この先砂漠と歩くうえで必要な食糧と水分、キャンプに必要な道具が入っている。今夜どこかで一泊するだろうから、その時にでも確認してくれ。」


モモリが震える手で明らかに高級な素材の魔法鞄(マジックバッグ)を受け取ると、先に降りていたソウが口を開いた。


「いやはや、こちらこそたくさんの援助感謝する。戴冠式には参加できないが、結婚式にはぜひとも呼んでくれたまえ。」


「な!?」


ソウの言葉にオリーヴが口をパクパクとさせて硬直している間に


「さ、夜はとにかく冷えるからね。少しでも進もうじゃないか」


と楽しそうに鞄を背負いなおした。

モモリやヒロは申し訳なさそうに会釈をし、リクは満面の笑顔で馬車に向かって手を振った。


___


「・・・まだ歩くの?」


リクの悲痛な声が虚空に消える


「装備一応新しいなら空調魔法ついてんじゃないのかよ」

「ケチって空調魔法微弱なやつにしたんだよぉ」


ヒロの呆れたような声に返事を返すリクの声はとても情けない様子だ。


「モモリさんすごいよな・・・あのローブ20年物だよ?あの頃空調魔法なんてないもん・・・」

「前も言ったと思いますけど何で知ってるんですか?」

「え、あ、あーなんとなく???」


モモリは涼しい顔で冷たく返し、リクはわたわたと言葉を濁した。


「にしてもほんとにお前すげーよな。ソウは装備全部高級品だし、おれは空調魔法使えるからいいけどよ。」


ヒロの言葉にモモリは足を止めることなく冷静に返した。


「自前で空調魔法使ってるだけですよ。オリジナルなんですけど、全自動冷暖微風(クーラー)っていうんです」

「なんだねその魔法は!!僕にも教えてくれないかい?」


モモリの発言に一番食いついたのはソウだった。


「え、あ、じゃあ今夜でいいですか?」

「そんな簡単に教えていいのかよ!?」

「だって別に・・・」

「内容によっては魔法特許撮れるかもしれないね」

「ねぇねぇ、俺にわかんない魔法の話で盛り上がられると寂しいんだけど・・・」


モモリは仕方ないといった様子で深くため息をつくと、小声で呪文を唱えた。


「春を運ぶ精霊よ、その内緒話の恩恵を彼に与えよ。全自動冷暖微風(クーラー)


モモリの杖から現れた風がリクの体を包み込むようにまとわりついた。


「え!?すげぇ!!!ナニコレ!!!めっちゃ快適!」


リクはその場で嬉しそうに飛び跳ねたり大剣を振り回したりといそがしく動き回っている。


「・・・動きがうるさいんで魔法解いて良いですかね」

「さすがにやめてやれ」


ヒロの言葉がリクの命を救ったのを本人は全く気が付かない様子で喜び続けていた。


そんな茶番をしていれば集落の一つでも見えてきそうなものだが、なんせ大陸の6分の1を占める砂漠だ。そううまくいくわけもない。

あっという間に夜が更ければ、昼間の灼熱の太陽が嘘のように冷え込んだ空気が四人をおそった


「この辺りでいいかね。」


ソウは魔法で炎の玉を浮かべると、風魔法で砂に印を書き始めた。


「テントはこの辺、女性のモモリくんとは分けて二つのテントを出そうか。・・・焚火は少し離してここかな?」

「テントは任せます。ご飯は私が作るんで。物資の確認は夕食時にしましょう。」


二人の息ぴったりな様子に少し不満そうなリクは、近くで枯れ枝をいくつか拾ってモモリに預けると、テントの準備に混ざっていった。


各々が作業を始めてそれなりに時間がたったころ、

ぱちぱちと薪がはじける音と、おいしそうなバターの香りが男三人の動きを止めた。


「なんかいいにおいする」


リクは作業から離脱して、モモリの元にふらふらと歩いていく。

そこには、焚火を魔法で安定させながら、鍋をかき回すモモリの姿があった。

どこから出したのか手作り感のあるエプロンをしたモモリを見て、リクは思わず口を滑らせた。


「なんか新婚の奥さんみたい」

「は?」


冷たい声にリクの体がびくりと震える。


「聞こえてた・・・?」

「私耳良いので、あっまりうかつに変なこと言わない方がいいですよ」

「はい・・・」


モモリは鍋の中身をスプーンですくうとリクに差し出した。


「味見、お願いできますか?たまに私塩入れすぎちゃうので。」


モモリの行動にゴクリと喉を鳴らすリクは、(これってあーんでは!?)と何とも童貞のようなことを思いながら差し出されたスプーンに口を付けた。


「!!コレおいしい!シチュー!?」

「そうです。生肉は早く使いきりたかったので。」


もう少し煮込んだ方がいいか・・・とつぶやきながら、自らの魔法鞄(マジックバッグ)から胡椒を取り出したモモリに熱を帯びた視線を向けているリクに気が付いているのはヒロとソウだけのようだ。


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