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ちからをあわせて

ニュンペィは閉じていた瞳を開いて再度目の前の人間に視線を向けた。


「懐かしいな。この光景はもう何百年前だろうか」


どこか遠くを見ているような表情で柔らかい視線になっている目の前のエキドナに二人は違和感を覚えた。

が、そんなことで油断している場合ではない。


『私がオリーヴさんのサポートをします。他の皆さんは裏からお願いします。』


モモリは念話の魔法で全員にそう伝えると、改めて杖を構えた。


「風神の加護をもたらす祝福の風よ、我に仇なすものの四肢をとらえよ!風神の花舞う戯曲(ウィンドジェイル)!!」


モモリの杖から放たれた竜巻は、ニュンペイの周りを激しく吹き荒れる。


「ほう、高等魔法並みの威力を持つ初等魔法・・か・・・ふん」


拘束魔法の完成度に感嘆の声が上がるも、ニュンペイは鼻を鳴らすと周りの竜巻は掻き消されてしまった。


「えっ!?」


「なんだと!?」



「威力は認めよう。貴様、敵に回っていなければ我が配下に加えてやったのに」


ニュンペイの勝ち誇ったような様子に再度思考を巡らせるも、焦りのせいかモモリは頭の中がぐちゃぐちゃになってしまい作戦がまとまらない。


「どうしよう、頭の中が空っぽだ」


「モモリ、お前そんなこと言ってねーで目くらましの一つでもしてくれ!」


ヒロの声にハッとする。この旅に出る一か月前に討伐した蛇系のモンスターの攻略情報が頭をよぎる。


「ソウさん!草と土どっちが得意ですか!!」


モモリは後ろにいるソウにさけんだ。


「え、あぁ、どちらかというと草魔法の方が身近かな」


「そっかエルフだもんね!じゃあ草魔法で拘束魔法使ってください!風と水は禁止です!!皆さんも!いいですか?」


モモリの声に待機していた全員がハッとする。


「なるほど。エキドナも蛇系だからか!」

「よくわかんないけどとりあえず特攻するね!」



「オリーヴさんは私が合図をするので、合図が聞こえたら何でもいいんで神聖魔法をその白銀の剣にまとわせて一撃食らわせてください!」


モモリの言葉にオリーヴはうなずき詠唱を始めた。


「みんなはオリーヴさんを守りながら攻撃お願いします!」



ニュンペイはその様子を見て目を細めながら毒霧をたばこの煙のように吐きだし空中でくつろいでいる。


「貴様ら何やらこざかしい作戦を立てているようだが、たかが人族とエルフの攻撃など、我には効果などないわ!」


全員がキッとニュンペイを睨む。


総攻撃の開始の合図だ。





___


怒れる大地の揺り篭(サクスムプリズン)!」


モモリの杖が大地をたたく。

すると岩でできた大きな手がニュンペイを握りつぶす。


しかしその手は大きな音を立てて崩れ落ちる。

ニュンペイにはこの程度はきかないようで、不適な笑みを浮かべている。


「やれやれ。たまには詠唱でもするか。

   ・・・春を運ぶ花の妖精よ、わが声に応え力を貸したまえ。棘薔薇の戯曲(ダークローズワルツ)


モモリの背後から、冷静な詠唱が聞こえた。


ソウは詠唱をしながら、つまんだ小さな種を地面に落とした。


その種は地面に落ちる前に芽吹き、トゲだらけのツタがニュンペイに向かっていく。


「っく、こざかしい。」


ニュンペイは笑みを崩すことなく炎魔法で次々と伸びてくるツタを燃やすも、そのツタの数は減るどころか増えていく。


「なんだこの数は。うっとおしい。」


ニュンペイの不機嫌な声がツタの束の向こうから聞こえてくる。


「さすがソウさん!私ももう一回!

   大地の魔人よ、その体を強固な檻となり小鳥を封じろ!地龍の籠り繭(ルトゥムカルケル)!」


先ほどの乾いた土の手ではなく、水を含んだ粘土がツタを絡めたニュンペイの尻尾を覆っていった。


「水魔法は効かないかもだけど、地属性魔法に合わせたらいいもんね!」


モモリは舌をべーと出してニュンペイを見た。


「たまには後ろもみろ、よ!!」


リクの大声とともに、炎をまとった大剣が振り下ろされる。


「ふん。ハーフエルフごときがさえずるな!」


身動きを徐々に取れなくなっているというのに、その余裕はどこから出てくるのかニュンペイの鋭い爪が空を切り裂いた。


「ぅおっと!危ねぇ!!」


間一髪でその切り裂きを避けたリクを憎たらしげにニュンペイは睨んだ。


「だいぶ動きも封じられているようだね。ヒロくん、そのまま引き続きオリヴィア嬢を守っていてくれ。」

「わかってるよ。・・・ったく、魔法はあんまり得意じゃねぇっつうのに。」


ヒロはため息をつきながら、結界魔法に流し込む魔力を強める。



「・・・この身に宿る大いなる血の鼓動に応え、力をあたえたまえ・・・」


オリーヴの詠唱が佳境に入ったことを知らせるように彼女の周囲に光の魔法陣が現れだす。


「そろそろか・・・モモリ君、光魔法は使えるかい?」


ソウはモモリに問いかける。


「・・・いっこだけなら・・・使ったことないけど。」


「頼めるかい?」


モモリの不安そうな声に、ソウは強く、背中を押すように問いかける。

モモリはニュンペイに吹き飛ばされて起き上がったばかりのリクの方を見る。

するとリクももれなく強い意志を込めたまなざしでうなずく。


「おい、何でもいいから早くしろ!おれは魔法が苦手なんだよ!」


ヒロの声にはっとする。



「・・・よし。」



モモリは改めて杖の先端をニュンペイに向けた。



そして、大きく深呼吸をする。





「陽光をまとう妖精の羽衣よ、その光を力に変え、大いなる邪悪を打ち払え!憤怒する太陽(ラスターバーン)!」


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