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掃討作戦

……………………


 ──掃討作戦



 1728年2月。


 魔王ソロモン銃撃犯の背後にいるのが、反魔王軍パルチザンの“ニザヴェッリル国内軍”という組織であることが、内務省と国家保安省の調べによって判明した。


「同組織の完全な壊滅を内務大臣閣下は指示された」


 ニザヴェッリル東部の魔王軍占領地域にて、警察軍部隊の指揮を執る吸血鬼チュイコフ警察軍大将が告げる。


「相手は魔王陛下殺害を試みたものたちの仲間であり、慈悲は無用。いかなる手段を以てしても壊滅させよ」


「了解」


 さて、この警察軍という組織だが、いささかややこしい。


 これは他国で言うとところの国家憲兵隊という意味合いもあり、つまりは国家警察である。しかしながら、内務省とは別に国家保安省も文民官僚たちの他に警察軍の将兵が含まれていた。


 これがどうなっているのかというと、内務省と国家保安省は同じ警察軍という組織に対して、それぞれ別の人事権などを有しているのだ。同じ警察軍でも昇進などは内務省に属しているか、国家保安省に所属しているかで違う。


 だが、現場では同じ警察軍の将校として、それぞれの階級は共通したものとして扱われ、合同で任務に当たる。


 これは内務省と国家保安省が違う組織でありながら、一部共通した役割を担っているためだ。両省の関係は友好的とは言えないが、現場の警察軍将兵は同じ警察軍の魔族としてそれなりに協力している。


 そんな警察軍が大規模なパルチザン狩りの準備を進めていた。


 現在、警察軍はニザヴェッリル東部占領地域を6つの区画に分けている。第1~第6占領区と呼ばれる区切りであり、それぞれの占領区には内務官僚と警察軍将兵からなる軍政部が存在していた。


 そして、ひとつの占領区においては1個師団の警察軍部隊が展開してる。


「内務大臣閣下は現在展開中の師団を中心としながらも、各占領区に2~3個師団の警察軍の増援を派遣することで、徹底したパルチザン掃討を求めている。指揮は私が取り、各占領区の軍政部と協力していく」


「総督府はどのように協力を?」


「総督府は我々の作戦を全面的に支援するが、実施するのは我々だ。ロクティオノフ総督もそう認めている」


 ニザヴェッリル東部占領区には軍政部の上に、それらを束ねる総督府が存在する。現在はニザヴェッリル東部における大規模農業化とそれの集団農場化、そしてドワーフ奴隷の管理を行っている。


 現在の総督は内務官僚の吸血鬼ロクティオノフ。


「それでは、諸君。不埒にも我らが魔王陛下のお命を狙った連中を皆殺しに」


「魔王陛下万歳」


 そして、警察軍によるパルチザン狩りが始まった。


 内務省はこういう場合に備えて、ドワーフたちを相互監視させていた。密告者には労役の免除や特別配給を与えることで、ドワーフたちがお互いを告発しあうように仕向けていたのである。


 その情報に従って警察軍はニザヴェッリル国内軍と繋がっていたドワーフを拘束することをまずは目指した。


 ニザヴェッリル東部占領地域のドワーフは今や完全に生まれ育った土地を追われ、農場に強制移住させられている。彼らがこれまで暮らしていた都市や鉱山からはドワーフは一掃されていた。


「そこのドワーフ! 来い!」


 ゴブリンを猟犬のように連れた吸血鬼の警察軍将校が、そんな強制移住の憂き目にあったドワーフたちを呼び出し、取り調べていく。


 拷問は平気で行われ、警察軍に呼ばれたまま戻ってこないドワーフも相次いだ。しかし、ドワーフたちはそれに不満を述べることも許されない。


「ニザヴェッリル国内軍のテロリストに食料を渡したな! 連中はどこにいる!」


 問題のニザヴェッリル国内軍はニザヴェッリル軍が撤退する前に残した残地工作員を中心としたゲリラで、ニザヴェッリル東部にて魔王軍に対するサボタージュを行っていた。今ではニザヴェッリル東部における最大の反魔王軍ゲリラだ。


 彼らはニザヴェッリルに多くある山林やドワーフたちしか知らないトンネルに潜み、破壊工作や情報活動に従事していた。


 特にトンネルに潜んでいるドワーフは魔王軍にとって面倒な相手だった。ドワーフのトンネルには罠が大量にしかけられており、迂闊に踏み込めば大損害を出してしまう。


 魔王軍はそんなリスクを冒さずに、ニザヴェッリル国内軍を掃討することにした。


 いくらトンネルが立派だろうと地下空間で食料を完全にまかうのは不可能。魔王軍が設置した集団農場で強制労働させられているドワーフたちに接触するはず。


 まず警察軍はこの集団農場のドワーフたちを締め上げ、ニザヴェッリル国内軍への食料供給を断つことにした。


「集団農場でニザヴェッリル国内軍に接触したものは処刑しろ。なるべく残忍に」


 チェイコフ大将はそう命じ、部下の警察軍将兵は密告によってニザヴェッリル国内軍と接触したものを生きたままゴブリンとオークの餌にするなど、残忍な方法によって処刑していった。


 これと並行して山林でのゲリラ狩りが始まっていた。


 ニザヴェッリル国内軍のゲリラが目撃された山林に、動員された警察軍師団は展開。完全に包囲する形で布陣した彼らが前進していく。


「ゴブリンを前に出せ。罠があるぞ」


 ブービートラップの類を警戒し、警察軍の将校たちはまずゴブリンを前に押し出す。それによって罠をあぶりだし、かつ潜伏しているニザヴェッリル国内軍の反応を引き出すのである。


「銃声!」


「あそこだ。火力を叩き込め!」


 警察軍の師団にも火砲は配備されいてる。もちろん、陸軍のものと比べればささやかだし、旧式の装備が多かったが。しかし、それでも人は殺せる規模だ。


 旧式の口径57ミリ野砲や口径60ミリ迫撃砲が火を噴き、山林に潜伏しているドワーフたちを屠っていく。


 ゴブリンをけしかけ相手の位置を把握し、火力を叩き込んだのちに前進。


 ゴブリンはいくら消耗しても魔王国内に吐いて捨てるほどいるので、思う存分指揮官たちは使い捨てにしていた。後生大事にしていても、大した戦力にはならないし、それどころが要らぬことをするので、早々に使い切りたい。


 一方のニザヴェッリル国内軍は苦しい戦況だ。ゴブリンが囮だと分かっていても、迫りくる敵を迎え撃たないわけにはいかず、ゴブリンを銃撃しては耳のいい人狼に位置を掴まれてしまっていた。


 またひとつ、もうひとつと山林に籠っていたニザヴェッリル国内軍の兵士たちが捕虜になり、激しい拷問を受けては、警察軍にニザヴェッリル国内軍の情報を知られてしまっていた。


「報告いたします、閣下」


 掃討作戦に当たっていた人狼の警察軍将校がチェイコフ大将に報告を行う。


「ニザヴェッリル国内軍の指導者と思しき人間の所在が判明しました。指導者と思われるのは元ニザヴェッリル陸軍少将のエミール・ベルヒトルト。この男はニザヴェッリル陸軍が放棄した地下弾薬庫にいるとの情報があります」


「では、直ちに部隊を展開させて捕らえろ。決して逃すな」


「了解」


 そして、戦場はニザヴェッリル陸軍の旧地下弾薬庫に移る。


……………………

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