第31話 オトナ少女 3
いや、それがマリオンだということはその声からも明らかだ。
そしてその確証をさらに決定づけるのが、この……背中に当たる感覚。
ぽわわんっと、張りと弾力が見事に調和しそこから生み出される極上の柔らかさ。
つまり……つまり……
《んほぉおおおおおおおおっ!!》
俺は即座にユーティアの体を乗っ取ると、振り返ると同時に目の前の二つの球体を鷲掴みにする。
そう、これは男なら誰もが憧れる至高なる宝玉──その名も、
「おっぱいぃいいいいいい!!!」
そう俺は叫びながら、本能のままに巨大なマシュマロを揉みしだく。
「わわわっ? ユーティアちゃんどーしたの???」
マリオンは驚いてはいるものの、嫌がっている風ではない。
ということはこのまま続けてよいのだと解釈する。
しかし凄い! 俺の指の動きに呼応するように縦横無尽に踊るそれは、もはや別の生物のようですらある。
《こらーっ! リュウ君やめなさーい! 約束が違います! メッですよメッ!!》
当然ながらユーティアが怒り出す。
だがマリオンのおっぱいに吸い付いた指は、もはや俺の意思ですら引き剥がすことができない。
悲しいかな、これが男の本能というやつなのだろう。
しかし……湯気ではっきりとは見えないものの、このマリオンはそこいらのグラビアアイドルでは歯が立たないほどのナイスバディだ!
立派なのは胸だけじゃない。
引き締まったウエストから美しい流線型を描いて突き出されたヒップ。
張りと艶と透明感が見事に調和した美しい肌。
そしてこの程良い肉付き感。
「グェッヘッヘッ! 孕ませがいのある体しやがって!!」
《こらぁー!! リュウ君おもいっきり性的な目で見てるじゃないですかぁー!!!》
とつい俺の本音がポロリと出た瞬間──
ガブリ──!! とリンゴを丸かじりするような音とともに、俺の頭に激痛が走る。
「い……痛! いだだだだぁあ! 頭がぁ!!」
それはまるで鋭い刃物で突き刺されたような痛み。
何者かが俺の頭部に取り付いて……いる?
俺の頭上にいるそいつは、何かの凶器を俺の頭部に食い込ませている。
「ポチ! どーしたの一体!?」
マリオンは慌てて俺の頭部のそいつを引き剥がそうとする。
しかしポチ……だと?
あぁ確かに、視界の隅に見える黒い動物の後ろ脚と尻尾。
コレはポチのものだ。
ということは、俺の頭に食い込んでいるのはポチの牙……なのか?
「おかしいなぁ、外れないよぉ! 普段は危険な人や怪しい人相手でもなきゃこんなことしないのに!」
マリオンは俺の頭部のポチを外そうと試みるも、うまくいかないようだ。
もちろんその間マリオンの裸体がバッチリ見えていることになるが、今は頭の痛みでそれどころではない。
しかしこのマリオンの話から察するに、俺がマリオンに対してやましい行為をしたことがポチの凶行を誘発したと考えてよさそうだ。
「わかったやめる! おっぱい揉むのやめるから外れてくれポチ~!」
と言ったものの、とっくに手は離している。
だがそれにもかかわらずポチは外れない。
「リュウ君! 私に代わってください! このままだと頭が割れますぅ!!」
《もう代わってるよ。自由に動けるだろ?》
「あ……本当だ!」
ユーティアに体を戻せば危険人物と認識しなくなって外れるかと思ったのだが、それでも駄目なようだ。
こんな所で猫に喰い殺されて人生を終えるなんて洒落にならないぞ。
どうする?
いったいどうすれば……
《……そうか、ユーティア! 今から俺の存在をマリオンに説明するぞ!》
「えぇ! いいんですかリュウ君?」
《ああ、これは賭けだが、きっとうまくいくはずだ! たぶん……》
ポチはユーティアの中にいる俺を、正体の掴めない未知なる危険性として対処している可能性がある。
ならマリオンが俺の存在を正しく認知すれば、ポチの敵意も無くすことができるかもしれない。
《おいマリオン!》
「おぉ? ええ? 誰かな??」
俺の念話を受けたマリオンは、キョロキョロと周りを見回して声の主を探す。
《いいから黙って聞け! 今から重大発表をする!》
俺はこれまでの経緯を説明した。
かくかくしかじかと。
「えぇっえぇえええええ!! ユーティアちゃんの……子供!? しかもお腹の中の??」
驚嘆するマリオン。
だがマリオンが俺の存在を知ったことで、俺の目論見通りの結果が起こる。
カポリと、俺の頭部からポチが外れたのだ。
それはもうあっさりと。
そしてポチはまるで何事も無かったかのようにすまし顔でマリオンの肩の上へと戻っていく。
ふぅ……よかった。
どうやら間抜けな死に様は回避されたらしい。




