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第152話 虚構女子 1

「ふむふむ、おそらくそれはグモリア地区のチュパパ御殿のことじゃろうな!」

 ミラージュは様々な資料を精査した結果、そう結論づけた。


 区庁舎を出た俺はすぐにミラージュの家へと戻った。

 すでにミラージュもマリオンも帰っていたので、その場で二人に区庁舎での出来事を報告。

 ミラージュは俺が得た情報を基に、現在カーラが潜伏している可能性の高い場所を割り出した。

 それがこの結果である。


 ちなみにライアスも同席している。

 俺のカーラ捜索はギルに許可させたものの、それはライアスが常に同行するという条件付きだったのだ。

 なので半ば強制的に来てもらうこととなった。


 それにしてもライアス坊ちゃんが保護者役とは……屈辱だが受け入れるしかないだろう。

 下手に逆らって賞金を取り消されたくはないからな。


「ちゅぱ? 変わった名前ですね」

 そう感想を漏らすユーティア。

 俺が強引に調査を続行したことを始めは頬を膨らませて怒っていたが、今は機嫌が直っているようだ。


 事件を放置すればさらなる犠牲者が出る。

 それはユーティアとしても止めたいところだろうし、ライアスも協力するということで安全性が高まったと判断したのだろう。


「晩餐会でランダリア嬢の取り巻きの一人──バックを投げつけられていた男を覚えているかの? 彼の名はチュリス・アルノイヤ。王都西北のグモリア地区で娼館を営んでいる男じゃ。店の女性達が皆彼をパパと呼んでいることから、チュリスパパ──略してチュパパ御殿と呼ばれることになったそうな。まぁあまり深い意味は無いので気にせんでよいぞ?」


「はいはーいっ! ショーカンってなんですかミラちゃん!!」

 マリオンが挙手しながら、女性が本来口にするのも躊躇われる言葉を大声で叫ぶ。


「なんで最年少の妾が女性陣で最年長のニャーコにそれを説明せねばならんのじゃ!! 男性客が金を払って女性とイチャイチャする所とでも覚えておくがよい! あの辺りはそういう店が多いのじゃ! じゃが必ずしもハードなサービスを提供する店ばかりではないようじゃな。女性が酒で男性客をもてなす程度の店など、営業形態は様々らしい。チュパパ御殿はその中でも随一の規模。城のような巨大な建物の中で、サービスによってブースが分けられ様々な接待を受けることができるようじゃな。さながら夜のテーマパークと呼ばれているそうじゃぞ!」


「テーマパーク! それはぜひとも行ってみたいですなぁ!!」

「マリー、きっと想像しているような楽しい場所じゃないですからぁ!!」

 ユーティアは今にも飛び出しそうなマリオンを制止する。 


「そのザスクという男は女性でなくては深部に入れず、かつメイオズ商会が警備を請け負っていると言っていたのであろう? メイオズ商会とは裏社会で幅を利かせている闇ギルドでの。繋がりのある女性の多い施設となると、やはり娼館が疑わしい。そしてその中にランダリア嬢にゾッコンのチュリスが営むチュパパ御殿があるとなれば、ほぼ確定じゃろうな」


《しかしこの短時間でそこまで突き止めるとは、さすがだなミラージュ》

「とーぜんじゃ! 大賢者にして名探偵! 魔力と頭脳、天が二物を与えし天才美少女ミラージュ・ルルリリア様をもっと褒め称えるがいいぞ! んなーはっはっはあ!!」

 魔力と頭脳の二物にさらに美少女という三物目をちゃっかり付け加えながら、ミラージュは高笑いする。


 しかしミラージュが王都内の細かい情報をファイリングしていたおかげて、こうして早々にチュパパ御殿を突き止めることができたのも事実。

 頭が切れるのは認めざるを得ないだろう。


「だがそこなら男性客を装って入ることも可能だろう? 他の場所という可能性は無いのか?」

 俺達から少し離れたL字ソファの端で話を聞いていたライアスが意見する。


「いや、チュリスは大の女好き。それが高じてチュパパ御殿に住んで、お気に入りの女性を囲っているらしいのじゃ。そのエリアは当然男性禁制! とすれば、そこにランダリア嬢が居ても不思議ではないじゃろう?」


 ミラージュの説明にライアスは納得した風だったが、さらに難しい顔をしてウームと唸る。

「とすると厄介なことになったな。男の私は当然その中に立ち入ることができない。しかし貴女達だけで向かわせるわけにはいかない。このままではザスクに先を越されてしまう。なにか策を考えねば……」


 するとそんなライアスの顔を、マリオンが興味深そうに覗き見る。

「わたし思ってたんだよね! ライアスちゃんって女の子みたいに綺麗な顔だなってさ! うんそうだ、そうしよう! つまり変装しちゃえばいいと思うのです!!」


「変装? なんの話……」

 そこまで言って、ライアスはマリオンの言わんとすることを理解したようで息を止める。

 つまりはだ、ライアスを女装させるということらしい。


「なるほどの! 細い銀髪に白い肌! これはなかなかの美女に仕上がりそうじゃの!!」

「ま、待て! 私が女性の姿になど……騎士としてのプライドが許さぬ! そんな屈辱を受けるぐらいなら、私は自らの尊厳を守るために自害する道を選ぶだろう!!」


「ふむふむつまり、事件解決のためにユティには恋人役をやらせておいて、自分はしたくないというわけじゃな? 騎士のプライドが聞いて呆れるのぉ! それとも女子供を盾に使って犠牲にするのが、この王国の騎士道精神なのかの?」

「ぐぬ……それは!」


 さすがミラージュ。

 俺以上に完璧にいやらしくライアスを追い詰めた。

 こいつは敵に回したくないな。


「さてと、覚悟は決まったようじゃし、さっそくおめかしに取り掛かるかの! ニャーコも手伝うのじゃぞ!」

「もっちろん、お任せあれ! さぁ腕が鳴るぞー!!」

「まっまだ私はやるとは言って──」

 ライアスが、ミラージュとマリオンに両脇を抱えられ奥の部屋に連行される。

 無理矢理に。


「あの、止めなくてよかったんでしょうかリュウ君?」

 ユーティアだけが成り行きを不安そうに見守る。


《いいんじゃないか、好きにさせれば。どうせ坊ちゃんはあの長身だ、まともな女性の外観には仕上がるまいよ。チュパパ御殿には俺達だけで侵入することになるだろう。それより腹が減ったぞ。なんでもいいから食べてくれ!》


 そんなこんなで小一時間後。

 しかし事態は俺の予想外に展開した。

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