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第150話 蚊帳の外 2

「今ルーンフェルグに出されている任務は全て取り消してもらうようオレが指示を出した。当面は連続失踪事件の捜査に注力してほしい」

「それは……大きな動きがあったということでしょうか。やはりカーラが?」

 ギルはまだ確定的な話ではないと付け加えながらも、ライアスに対しコクリと首肯する。


「どうやらこの話、思っていた以上に始末が悪くなりそうだ。そしてこれがお嬢への話に繋がるんだがな。お嬢、今回の話なんだが、降りてくれないか?」

「はぁ!? なにを言い出すんだいきなり! ふざけてるのかお前は!!」


 突然の首切り宣告。

 しかもライアスには全力で手伝えと言いながら、俺には身を引けと言いやがる。

 到底納得できる話ではない!


 しかし俺が反発するのも想定済みなのだろう。

 ギルは唸りながら自らの頭を掻く。


「では理由を詳しく説明しようお嬢。だがこの話は内密に頼むぞ。世間を混乱させないためにな。実は昨晩お嬢が見たというカーラ・ランダリアが使っていた魔法。あれはゲートと呼ばれる離れた場所、もしくは異空間へと門を開くための魔法だ。カーラ・ランダリアが魔法士だという記録は確認できなかったが、それでもゲートの魔法を使えるということ自体はありえる話だ。たとえ魔法が使えるとしても、それを隠す人間もいるからな。能ある鷹はなんとやらだ。だが問題は門から出てきた魔物だ。いや魔物ではない……あれは魔族なんだ!」


 いきなりギルの口から飛び出す魔族という単語。

 少なくともこの世界に来て魔族などという言葉は初めて聞く。

 そもそも魔物と魔族はそれほど違うものなのか?

 という俺の疑問を察したように、ギルは続ける。


「魔族というのはなお嬢、かつて魔王によって意図的に作られた種族なのさ。よって一般的な魔物より邪悪で凶悪、そして種族にもよるが戦闘能力も高い。もっとも100年前に魔王が倒されて以降魔族も討伐され、現在はほとんどその存在すら確認されなくなった。だが昨晩オレが見たあの無数の腕……あれはおそらく、かつてインフィニットアームと呼ばれた魔族だ。ただでさえ希少な魔族を人間が使役していた。それは尋常な話ではない!」


「つまり、危険だから俺には辞退しろと?」

「そうだ。お嬢の腕が立つのは知っている。だが一般人に魔族の相手をさせるわけにはいかない。この件はオレ始めエクシードで処理されることになる。連続失踪事件との繋がりも不明だが、関連性が疑われる以上同時並行してエクシードで対応する」

 ギルは声のトーンを落とし、ある意味作業的に淡々と語る。

 だがそこには有無は言わせないという確固たる意志が滲む。

 やはりこいつはおちゃらけてる時の方が(くみ)(やす)いよホントに。


「だがな、俺はさんびゃ……王都の人々を守るために戦うと心に誓ったのだ! 生憎と相手が魔族だからといって尻尾を巻いて逃げ出すような臆病者じゃないんだよ! 見くびらないでもらおうか!!」

 俺は高らかに謳い上げる!

 相手が強気で来るならこちらはさらなるゴリ押しで突っぱねる!

 俺に後退の二文字は無い!!


《もう止めましょうよリュウ君! わざわざ危険だと教えてくれてるんです。ここは黙って従いましょう。それにアルティウスさんもリュウ君が賞金目当てなのは見抜いてると思います。これ以上は恥の上塗りにしかなりませんよ!》


 なんということでしょう!

 ユーティアまでもが反対派になりよった。

 子供が率先して生活費を稼ごうとしているというのに、それを咎めるとは人の心が無いのかこの女は!!


 ──がその時、後方の入り口の扉が勢いよく開け放たれる。


「おいっアルティウス! 一方的に依頼取り消したぁどういうつもりだ説明しやがれっ!!」

 そして大声で喚きながら入室してくる、ネイビーのストライプスーツを着た一人の男。


 短い黒髪を針のように逆立たせ、右目に黒の眼帯をしたその男は絵に描いたようなチンピラだ。

 おまけに後ろには黒のスーツを着た強面の男二人を引き連れている。

 まんま極道映画のワンシーンのような展開だ。


「やれやれこっちもか。ザスク、その件については今朝伝えた通り、悪いんだが手を引いてもらう。急で一方的なのは悪いと思っているが、事情が変わったんだ」

 ギルはソファから立ち上がると男の前まで歩み説得する。


 なるほど、どうやら俺と同じ主張をしにきたようだ。

 このザスクという男も賞金目当てに連続失踪事件を捜査していて、かつ突然中止を宣告されたのだろう。

 しかしこの男も俺同様に退くつもりは無いようだ。

 天井に届きそうなギルを見上げて睨みつける。


「俺達ァこの数日間、事件解決のために人員と手間暇かけてんだ! いまさら止められるわけねぇだろうが!!」

「だからその人員の実働分は払うと説明されていただろう? 今回はそれで納得してくれ」

「んなシケた金いるかよ! 300万だ! こちとら300万まであと一歩なんだよ! 邪魔すんじゃねぇぞコラァ!!」

 一歩も引かないザスク相手に、ギルも目を瞑り思案を始める。

 賞金を高額にするのも考え物だと後悔しているのかもしれない。

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