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第146話 Ah! I'm Goddess 4

「それは違いますカーラさん!」

 そして、やめときゃいいのにこの(いさか)いに口を挟む馬鹿が一人いた。

 言わずもがなのユーティアである。

「愛の無い夫婦に、何の意味があるんですか!? 人は愛する人と共に過ごし歩むからこそ幸福を感じられるものなんです。カーラさんにも、今まで好きになった人や愛した人がいるはず。だからこんな打算的な結婚に意味など無いことぐらいわかるはずです。どうか本当の自分の幸せを見つめ直してください!」


「はぁ? アタシに説教するんじゃないよクソジャリが! オマエなんかに言われるまでもなく、アタシは常にアタシだけが好きでアタシだけを愛して生きてきた。アタシの欲を満たすことだけがアタシの幸福なのさ! そしてアタシ以外の人間は、アタシの欲望を満たすための道具に過ぎないってわけ。道具にはそれぞれ役割がある。アタシに富をもたらす道具に、さらなる名声を生み出す道具を仕込むための道具。ルーンフェルグは随一の役得まで得られるんだから冥利に尽きるってもんだろう?」

 そう言ってライアスを横目に見るカーラの凍るような瞳には、たしかに微塵の好情すら浮かばない。

 それは辛うじて使い道の残っているゴミを見るような目である。


「子供まで道具って……それじゃ子供の人生はどうなるんですか!? 両親に様々な事情があったとしても、幼い子供にとっての唯一の寄る辺は他でもないその両親なんですよ? せめて子供のことは第一に考えて──」

「だからその飼育も含めてがルーンフェルグの役割だろうが! 結果エクシードになれたら褒めてやるし、なれなければ捨てるだけだ! あといつまでアタシと同等に口を利くつもりだクソジャリ? 言ったよな? アタシに説教するなってなぁ!!」

 まるで我が事のように食い下がるユーティアに、カーラの苛立ちが爆発。

 大きく振りかぶった平手を、ユーティアの横面に叩きつける。


 ──がその平手はユーティアの頬に当たる寸前で止められる。

 カーラの腕を掴んだユーティアによって。


「なっ──!?」

 予想外の抵抗にカーラは目を見開く。

 そしてほぼ同時に反射的に腕を引きユーティアの手を振り解く。


「いきなり平手打ちとは、まるで狂犬だな! しかもずいぶんと躾がなっていないようだ。なんなら俺が首輪をつけてやろうかオバサン? あっはははあ!!」

 ユーティアはカーラの首元を指差し挑発する。

 もちろん正確にはユーティアと入れ替わった状態の俺が、だが。


《こらぁリュウ君! 出てきちゃダメって言われてたじゃないですか! 状況がややこしくなるからって……というかもうなってるけどぉ!!》

「あのまま殴られていたら俺まで痛い目をみるんだぞ? 大人しくなぞしていられるか。それにだ……」

 それにカーラの価値観には共感できる部分もあるものの、あの子供を人として扱わない人間性が俺の前世でのトラウマを呼び覚まして胸糞悪いったらありゃしない。

 一言モノ申さなきゃ気が済まない!


「狂犬とは言ってくれるわね。オマエこそ下品な地が出てるようだけど? それにアタシはまだ23。オバサン呼ばわりされる謂れはないわよ! 女としての価値はアタシの方が何倍も上! ルーンフェルグに見初められて勘違いしているようだけど、オマエはルーンフェルグの歪んだ性癖にたまたま年齢が()まったにすぎないわ! そのことを自覚なさいな!」

 俺の身体強化魔法による怪力を目の当たりにしたというのに、カーラは怯む様子はない。

 相変わらずの野獣のような形相で悪態を吐き出してくる。


 だが俺はそんなカーラに臆することなく涼しい顔で切り返す。

「ライアス坊ちゃんの好みが俺だって? やれやれ……お前は自分のフィアンセのことを何も知らないんだな? なら俺が教えてやろう。ライアス・ルーンフェルグがガチで性癖ドストライクな女は……ア・レ・だ!!」

 俺はカーラの背後を両手の人差し指でクイクイと指差す。


 カーラと、周りで成り行きを見守っていた野次馬の視線がその一転に集中する。

 その先に居たのは黒いドレスを着た黒髪の幼い少女。


「んあ?」

 鳥の手羽先にかじりついていたその少女──ミラージュ・ルルリリアは、俺の意図を汲んだようで手羽先を皿の上に置くとコホンと咳払いをして語りだす。

「ああそうじゃの! そこのミスシェルバーンの言う通り、ライアス坊やは最初は妾に求婚してきたのじゃ。その幼い未成熟な体を毎晩舐め回したいのだとヨダレを垂らして興奮ぎみに土下座しながら懇願してきての。しかし、か弱い妾の体ではライアス坊やの幼女に対する異常なまでの淫欲には到底耐えられそうにないし、あまりの歳の差婚というのもエクシードとして体裁が悪い。じゃから妥協案としてそこのミスシェルバーンを紹介したのじゃが……しかしいまだ妾には未練タラタラなようで、毎晩のように妾の家に押しかけては肉体関係を求めてくる始末。まったくとんでもないムッツリスケベじゃのう」


「「「んなぁっ!!!」」」

 その場にいた一同がミラージュの暴露に息をのむ。


「バカな! あの気高く聡明なことで有名なライアス・ルーンフェルグ殿に限ってそんなはずは……」

「だが今まで浮いた話の一つもなかったのもこれなら納得できる。普通の女性には興味が無いってことなんだろう?」

「まさか筋金入りの小児性愛者だったとは……人とは見かけによらないもんですな!」

 とまあ、こんな具合にライアス坊ちゃんは重度のロリコンという情報が瞬く間に広まっていく。


「なっ! バカなどういうつもりだ!」

 俺に抗議しようとするライアスの手を払い除け、俺はカーラをビシリ指差す。

「どうだい理解したか? ライアス坊ちゃんは相手が未成年じゃないとチ〇コが元気にならないんだよ! つまりお前が相手じゃお望みの子供すら作れないってわけだ! わかったら手を引くんだなオ・バ・サ・ン!!」

 無慈悲な現実を突き付けられ、さしものカーラもたじろぐ。


 が、すぐに正気を取り戻し血走った眼をこちらに向ける。

「よっくも……公衆の面前でアタシに恥をかかせてくれたね。オマエ達……ただで済むと思うなよ……」

 カーラはそれだけ言い残すと取り巻きからバックをひったくるように奪い、脇目も振らずにホールから出て行った。


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