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第142話 非家族会議 4

「まぁ今後も引き続き調査は続けるとしよう。妾としてはそれと並行して坊やの婚約破棄についても力を貸そうと思うのじゃが、こわっぱ達も協力してくれるかの?」


「はぁ? なんでわざわざそんなことを??」

 突然の提案に困惑する俺に向けて、ミラージュは左手の指を三本突き出してみせる。


「理由は三つじゃ。まず一つ目に現在妾はこの事件以外の仕事を抱えていないので余裕があるということ。二つ目は坊やが本来中抜きすべき成功報酬をすべて妾に渡す契約を結んでいること。つまり余分にもらう金額に釣り合う働きをするということじゃな。そして三つ目には妾は困っている人を見過ごせない、女神のように慈悲深~い性格だからじゃ。まさに地上に舞い降りた天使じゃな! んなぁーはっはっはぁ!!」

 女神なのか天使なのかどっちだよと、話の内容よりもそこを突っ込まずにはいられない。


《良い案ですリュウ君! 私達も協力しましょう!》

「ここは正義の味方の出番だよね!!」

 しかも、ユーティアとマリオンまで触発されてやる気を出す始末。

 なんでこいつらは親しくも無いライアスのために動こうとするのか理解に苦しむ。

 

 俺は椅子から立ち上がり、そしてライアスに言い放った。

「悪いんだけどさ、俺は友達ごっこするために王都くんだりまで来たんじゃないんだよ! 俺は神でも天使でもないし、むしろそういう単語に虫唾が走るタイプの人間でね。だから一切協力するつもりなんてない。ま、自分のことは自分で落とし前をつけるんだな!」


 嫌味ったらしく言ってやったつもりだったんだが、ライアスはそんな俺に対して穏やかな表情を向ける。

「ああ……わかっている、もちろんそのつもりだ。ミスルルリリアも、気持ちは有難いがこの件には深入りしない方がいい。カーラは邪魔者に容赦する性格ではない。身の安全が保たれる範囲で捜査をしてくれれば十分だ。他人を巻き込んでしまっては、それこそ父上と同じになってしまうからな」

 そう語るライアスの姿は、やけに小さく感じられた。


 第三等位のエクシード。

 一見すれば地位も名誉も手に入れている勝ち組。


 だが実際には両親に恵まれず、そのために()めた苦杯は想像を絶するほどだろう。


 その境遇は、ある意味で前世での俺に似ているのではないか?

 不意に、今のライアスの姿と前世での俺自身とが重なって見えてしまった。


 だがそんな中でもこいつはラトルを引き取りエクシードにまで上り詰めた。

 そうして手に入れたささやかな生活も、しかし今奪われようとしている。


 俺は……このままライアスを見捨てていいのか?


 前世で俺は、誰も自分を助けてはくれなかったと周りの人間を呪ったものだった。

 だが俺が今なにもしなければ、俺は前世で俺が呪った相手と同じになってしまうわけで……

 

 ………………………………


「あああもうっ!! 面倒だが少しだけ付き合ってやるよ!! 少しだけだぞ!!」

 俺はドスンと椅子に座りなおし腕と足を組む。


「私に付き合う……だと? どういう風の吹き回しだ?」

「うるさいっ! くだらない質問をする暇があるのなら、風向きが変わる前に案を出せ!」

 ライアスだけではなく、ミラージュもマリオンも俺の心変わりに驚きを隠さない。

 まったく、俺が人に力を貸すのがそんなに珍しいのかね?


「とはいえ……私がエクシードだからといっても無茶は通せない。借金を踏み倒したなどと話が広がれば地位も危うくなるし、そうなれば今の生活すらままならなくなる。カーラには仕事を優先し家にはほとんど帰れないからと角が立たない婚約の断り方をしたのだが、あまり効果は無いようだ」

 ライアスは真顔でそう語るものの、そりゃ亭主元気で留守がいいを地で行っとるやんけ!

 むしろ歓迎されるヤツやろがい!


「せめて坊ちゃんに心に決めた相手がいるなら断りやすいだべが。一時的に恋人のフリだけでもしてくれる女性の知り合いなどはおりませんかい坊ちゃん?」

 グルードの問いに、ライアスはムスッとした表情で返す。

 いるわきゃないと、その態度が物語る。


「う〜む、しかしその案は言うほど容易ではないぞい。ランダリア嬢やその他周囲の人間まで欺くとなると、相応の説得力が必要じゃ。誰もが認める容姿を持ち、臨機応変に対応できる知恵と度胸が必要。さらにいざという時のためにある程度の戦闘能力も必須。じゃがそれらを兼ね揃えた女性などそうそうは……」

 なぜかそこで説明を止めたミラージュが、ゆっくりと俺の方に視線を向ける。


 それに続くようにグルードとマリオンも俺を見つめる。

 なんだというのだいったい?


「「「いた!」」」

 そして三人は同時にそう叫んだ。


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