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第131話 至高の名刀 2

「んーでもぉ、これってちょっと実物より大きすぎるよねリューちゃん? こんなじゃないでしょホンモノは?」

 チョイチョイと、マリオンはまだ片手に持ったままのソレを指差す。

《うん? そうか?》

 この世界の平均的サイズは知らないが、それほど誇張された大きさとも思えないが……


「だってラトルちゃんのも、もっとずーっと小さかったよ! チラッとしか見えなかったけど」

《ああ、それはだな……》

 確かにゾンビ山でラトルと温泉で鉢合わせたことがあったな。

 マリオンはその時のことを言っているのだろう。

 ということは、マリオンは男性器のサイズが状況により変化することを知らないということか。

 しかしそれをどう説明したものか……


「お嬢ちゃん、今ラトルって言ったかい? まさかあの無敗王のラトル・ルーンフェルグのことじゃないよな?」

 遠巻きに俺達のことを見ていた客の一人が、マリオンに声をかける。


「うん? そーだよ! お兄ちゃんがライアスちゃんの!」

「「「おおっ!!」」」

 その客を始め、周囲の客からもどよめきが広がる。


「こんなボンッ!キュ!ボンッ!な美少女が彼女とは、さすがは無敗王のラトル!!」

「だがしかし、ナニが小さいって言ってたぜ?」

「それで満足できずにこの店へ? そりゃあまりにも不憫(ふびん)!!」

「せめてあんたが買ってきてやれよ! 無敗王ラトルさんよぉ!!」

 男性客達は口々に勝手な妄想を繰り広げ始める。


 すまんラトル、お前にとってとても不名誉な噂が広まってしまうかもしれん。


「リュウく〜ん! もう出ますよ! いいですよね!? ね??」

 衆目が集まりますます居たたまれなくなったユーティアは、もはや我慢の限界のようだ。


《やれやれ……わかったよ。これ以上居てもあまり収穫はなさそうだしな。せめてウネウネ動く奴とかあればもう少し楽しめたんだが、どうやら技術的にはまだその域には達していないらしい》

「ウネウネ動く……って、え? 男の人のって動く……んですか? 本当に??」


《いやまさか、実物はもちろん動かないさ。ただこの手の代物に搭載したらという話だ》

「なんでそんなことを? わざわざ動かす意味があるんですか?」

《意味って、そりゃお前……》

 察しろよ、それぐらい。

 まるで小学生のようにピュアな質問を投げかけてくるユーティア相手に、品の無い解答を突きつけるのもさすがに気が引ける。


《それはお前がもう少し大人になったらわかるだろうさ。さぁ、もう店を出ていいぞ》

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 ユーティアはそそくさと店の出口へと向かう。


 ──が、それを遮るように出口の前に一人の男が立ちはだかった。

「ひえっ!!」

 行く手を遮られ、ユーティアが男の目の前で足を止める。


 その男は──この店の店員だ。

 カウンターで座っている時はわからなかったが、こうして目の前に立たれるとそのガタイはゴツく背も高い。

 おまけにスキンヘッド。

 どう見てもカタギに見えない。


「あの……なにかご用ですか?」

「……………………」

 ユーティアが怯えつつ尋ねるも、店員は黙して語らない。


 なんだ?

 怒ってる?

 やはり未成年が入るのはマズかったのか?


 しかしガシリと、次の瞬間店員がユーティアの両肩を掴んだ。

「ひええっ!! やっやめてぇ!!」

 ユーティアが悲鳴を上げるも、店員のゴツイ手はユーティアをガッチリ固定し逃がさない。


「ソレダァ!!!!」

 そして次の瞬間、店員は大声で吠える。


「は……はい?」

「それだよお嬢サン! ウネウネ動く! それ、画期的な素晴らしーいアイディアじゃナイ! 俺ちゃんときたら実物により近付けることばかりに心血を注ぐあまり、本当に大切なコト──アミューズメントな視点を見失ってタヨ! お嬢サンのエロチーズム感性、とってもとーってーもプロフェッショナルネ!!」

「う……嬉しくない褒められ方」

 ユーティアは不本意とばかりに低い声で呻く。


「お嬢サンのナイスなアイディーア、ぜひぜひこの店で採用させてくれまセンカ? ここの息子達ぜーんぶ俺ちゃんが作ってルノ! もっとスゴーイ息子達作ると約束スルネ!!」

「はぁ、どうぞ……私が考えたわけでもないので……」

 許可を取り付けた店員はようやくユーティアを離すと、鼻歌を歌いながらクルクルと店内を踊り始める。


 前人未発の新作を作れるのがよほど嬉しいようだ。

 強面だが、悪い奴ではないようだな。


「そうだ! お嬢サンにお礼をしなくちゃネ! この店の商品、好きな子を差し上げるワ! どれもこれも俺ちゃんが丹精込めて作った自慢の息子達ヨ! さて、どーれにスール?」

 ウッキウキでチョイスを迫る店員に、ユーティアは眉をヒクつかせながら冷淡に一言こう返す。


「いえ、結構です!」

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