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第12話 小さな冒険者 2

「はわわ……疲れましたぁ」

 ユーティアは教会横テラスのベンチに腰掛け一息つく。


《情けない、あんな小さな子供相手に互角で、しかも疲労困憊とは》

「しょ、しょうがないですよぉ。私あまり運動は得意ではないので」


 得意ではないというよりは、完全な運動音痴。

 あんな平地でずっこけるぐらいだからな。


《しかし、いつもこんな感じなのか?》

「そうですねぇ、この後畑仕事をして、夕食の準備を手伝って……」

 なにが楽しいのかユーティアはリズミカルに指を折りながら、雑務を一つ一つ列挙する。

 

 ……地味だ。

 祈りと家事と畑仕事と子供の世話に明け暮れる毎日。


 電化製品も車も見当たらないから、この世界の文明レベルはかなり低いのだろう。

 もちろんスマホやテレビゲームといった文明の利器など望むべくもない。

 素朴と言えば聞こえはいいが、俺には到底耐えられそうにない空虚な生活ルーティン。


《というか、お前も進学しろよ! こんな寂れた教会で人生を棒に振るつもりか?》

「私は神聖魔法が使えるから、この仕事が向いていると思ってシスターの道を選んだんです。それに楽しいですよぉ、こうして子供達の世話をするのは。それにリュウ君を育てるにもここのほうが適してると思いますよ?」

《それはそうだが……》


 たしかに、ユーティアが子育てと学業を両立させられるほど器用とも思えない。

 そもそもこの世界が子持ちの学生が容認されるような風潮なのかも疑わしいが。


「心配しなくてもリュウ君はここで私が頑張って育てます! 一緒に主の教えを学び修練を重ねましょう。リュウ君ならきっと立派な神父になれますよ!」

《やめろぉお!! 俺が神父だと!? 職業不適格も甚だしい!!》

 神を崇める毎日など、いっそ本当に地獄に幽閉されているほうがマシなぐらいだ。


「ところで話は変わるんですが、リュウ君?」

《んん、何だよ?》


「その、私……お花摘みに行きたいんですけど……」

 声のトーンを落としたユーティアが、モジモジと、胸の前で両手の指を絡めながら密めく。


《ああ、どうぞ? いちいち断らなくてもいいけど?》

「あの、言い方が悪かったです。お手洗いに行きたいって意味なんですけど」

《ああ、だからどうぞって!》

 意図不明の主張に俺は苛立ち声を荒らげるも、しかしユーティアはなお食い下がる。


「リュウ君! 私今まで勝手に決めつけちゃってましたけど、リュウ君ってきっと男の子なんだろうと思うんですけど?」

《まぁ、そう思ってくれて間違いないだろうな》

 いや実際のところ俺だって確証があるわけじゃないが。

 これで女だったら笑える。

 いや笑えない。


「だったら、このままお手洗いに行くっていうのは、すっごくすっごく大問題なわけですよぉ!」

《あぁ……つまり、俺に見られたままだと恥ずかしいと?》

「はい、そうです! だってだって……リュウ君は私と同じように感じているんですよねぇ? ということは、その、最中の感覚も……だ……ダメですよそんなの! 一応私も乙女なんですからぁ!!」


 なるほど、美少女の排泄を身をもって体感する。

 なんともレアな経験。

 そういう趣味は無いものの、こんな貴重なチャンスをみすみす逃す手はないのでは?

 

 ……とは思うのだが。

 ユーティアは身をぷるぷると震わせながら無言の圧力をかけてくる。


《わかったわかった、一時的に魔法は解除しておくから。それでいいだろう?》


 これでも一応は俺の母親なわけで、母親を性的に辱めるというのはさすがに気が引ける。

 後々歪んだ性癖を芽生えさせそうで怖くもあるしな。


「本当ですか? ありがとうございます! 他には着替えのときとか、湯浴みのときとかもお願いしますね!」

《あ、ああ。わかってるよ……》


 ううむ、なんだか色々とチャンスを逃しているような気がする。

 惜しいことをしたかな?


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