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第128話 ヒミツの探し人 2

《あれはいったいどういうことだ?》

 ギルドを出た後、俺はユーティアを問い(ただ)す。


 ユーティアがギルドに向かった理由は、クエストを受けるためではなかった。

 ギルドの掲示板、そこに自分のメッセージを残すことが目的だったのだ。


 掲示板のメッセージには二種類ある。

 一つは無料で二日間残せるもの。

 もう一つは有料だが、一週間王都の他の主要ギルドに同様の内容を伝え掲示してくれて、かつそのメッセージに対する返信も伝えてくれるもの。

 ユーティアは後者を選択した。


 メッセージの内容は以下の通り。

「大賢者ミラージュ・ルルリリア様。ルーベル村のユーティア・シェルバーンです。もしこのメッセージをご覧になりましたら、折り返しご連絡いただけるとありがたく存じます」


 実にシンプルな内容。

 しかしその文面にある大賢者ミラージュ・ルルリリアという名。

 それは俺の知らない名前だ。


《この件を隠していたな? どうりで俺の王都行きに反対しなかったわけだ》

 エクシードをブッ潰し、王国を転覆しようっていう俺の目論見にユーティアがやけに素直に従っていると思ったら、王都でこの大賢者ミラージュに会うのが隠された目的だったとは。


「隠していたわけでは……気を悪くさせてしまったのなら謝りますリュウ君。ただ情報としてはとてもあやふやなものなので、無駄に期待させてしまうのも良くないと思ったんです」

 マリオンと共にギルド前の公園のベンチに腰を下ろしたユーティアは、胸の前で両手を合わせて謝罪する。


「で、その大賢者ミラージュちゃんって、ティアとどんな関係だったの? まさかまさか、元カレとか!? キャアー!!」

「いえ、そんな。ミラージュ様とはお知り合いという程ですらなく、むしろ顔見知り程度の間柄でしかないのですが……」

 ユーティアは空を見上げ、思い返すように続ける。


「あれはちょうど半年ほど前でした。旅の途中でルーベル村を訪れていたミラージュ様が、偶然市場で見かけた私にこう告げたんです。近い将来私の身に大きな難題が降りかかるかもしれない。手に負えないようなら、普段は王都に居る自分を頼るように……と」


「……そんだけ?」

 目をパチクリさせるマリオンに、ユーティアは黙って頷く。


《よくそんなインチキ霊媒師の脅し文句みたいな言葉に釣られて王都まで来る気になったもんだな。自分の親ながら、将来が不安になるよ》

「だ、だから言いたくなかったんです! でもその時にミラージュ様は、自分は博識で魔術に精通していて、数々の難事件を解決している名探偵でもあるとおっしゃっていましたので、何かしら力を貸していただけるのではと思いますよ?」

 ユーティアはブンブン両手を上下に振って反論する。


 しかし自ら名探偵などとひけらかす輩に、ロクな奴はおるまいて。

 どう考えても胡散臭い話だ。

 せいぜいユーティアが実的被害を受けないよう注意せねば。


 どのみち掲示板にメッセージが残される期間は一週間。

 メッセージが返ってくる可能性は低いだろう。

 その間、俺が役に立つかもわからん相手の返信など大人しく待つはずもない。


 エクシードを見つけ次第ブッ殺して、早々と王国に宣戦布告するとしよう!

 特に血祭りに上げたいのは、俺達をゾンビ山へと誘導してくれたあの坊ちゃんとか!

 あの坊ちゃんとか!!


 とはいえ、そろそろ日も暮れてきた。

 今日のところは、このまま近くの安宿に泊まることにした方が良さそうだな。

 ユーティアと、それとマリオンも俺の案に同意。

 近くで宿を探すことにした。


 ギルドからさほど離れていない場所の、木造の古めかしい宿屋。

 表の看板には、一拍2500リグと表記されている。

 なかなかお手頃……だが、この建てられて一世紀近く経過してそうな建物ならそれも適正か。


 新興都市のリムファルトと違い、王都は歴史も古い。

 故に中にはこのような老朽化の極まった建造物も混在しているのだ。


 ユーティアとマリオンが入り口の扉をくぐる。

 二階建てのこの宿の一階部分は、例によって食堂として営業しているようだ。


 まだ日が落ちる前だというのに、飲んだくれたオッサン共がそこかしこのテーブルでたむろしている。

 店に入ったユーティアとマリオンを目にするや、その一部はヒューと口笛を吹いて(はや)す。


 美少女二人組の旅人。

 こんな安宿では、やはり場違い感はある。


 しかし似たようなケースはすでに何度か経験済み。

 初期の頃は面食らっていたユーティアも、最近はようやくとこういった状況にも慣れてきた。

 不安を抑えるように拳を握りしめ、冷静を装い奥のカウンターに向かって歩き始める。


「マァジで! ラブパレスのガルシアを倒したのって、ラモさんだったのかよぉ!!」


 ────!!

 だがその途中で、食堂の一角から到底冷静を保てそうにない会話が耳に飛び込んでくる。

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