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第125話 新しい朝がきた 2

「──────は?」

 なん……だって???


 今俺はラトルに何を言われた?


 隙だらけだ?

 いや……違うな。


 好きって、言われた……よな?

 好きとはつまり、異性に対する好意の意味の好きだよな? 


「時には父親のように僕を叱咤し、時には女神のような温かさで包み込んでくれる。僕が今までどれほどその英傑さに勇気づけられ、その深い慈愛に癒やされてきたことか。そして僕のユーティアさんに対する想いはどんどん高まり、そしてついには自分でも抑えきれない程に膨れ上がってしまって……そ、そして……気付いたんです。これが……愛という感情なのだろうと!」

 ラトルは顔を真っ赤にしながら、しかし真剣な眼差しで思いの丈を打ち明ける。

 逆に俺の頭は真っ白になって、この事態にどう対処すればいいのか見当もつかない。


《りゅ……りゅりゅりゅリュウ君!?? これは……まっ、まさか告白……ですか? 告白……ですよねぇ? ねぇ??? どど……どうしましょう? 私はどうしたらいいんですか???》

「んなもんどーだっていいだろうが! 今問題なのは俺がラトルに告白されたという事実だ。前世でまーったくモテなかった俺が、今世こそは甘酸っぱい恋愛体験をと夢見ていたのに、夢見ていたのにだ! 人生で初めて告白してきた相手が男……だと!? なんという仕打ち! 消し去りたい! 今日一日の出来事をなにもかも!!」

 俺はラトルに聞こえないように俯きながら、ボソボソと一人で愚痴を吐き出す。


「わぁお!! 告白されちゃったよティア! どーするの? 付き合っちゃうの?? 結婚しちゃうの??? きゃー!! 大人の階段先に登られちゃったなー!!!」 


「いっいえ! 付き合うとか結婚とかそんな……恐れ多いです! ただ僕は自分の想いをユーティアさんに伝えたかっただけでして……」

 慌てて場を取り繕うラトルだが、こんな場所で告白された以上はうやむやというわけにもいくまい。


「ここでしばし待て」

 俺はそれだけ言うと、ラトルから少し離れて後ろを向く。

 この問題の対処を冷静に考える必要があるからだ。


「……よし、殺そう!」

 そしてわりと早めに出た結論がそれだった。


《ちょ、なにを言ってるんですかリュウ君! どうやったらそんな流れになるんですか? もっと真剣に考えてくださいよ!!》

「いや俺はいたって真剣だぞ。この黒歴史を、俺は永遠に闇に葬りたいのだ。気の毒だが、ラトルにはここで死んでもらうしかないと思うんだ。そこいらの地割れの下は溶岩だろう? そこに落ちれば骨も残るまい。戦闘に巻き込まれて死んだことにすれば、ライアス坊ちゃんも納得せざるを得ないだろう」


 幸い今ここには俺達以外には誰も居ない。

 これで完全犯罪の完成だ!


「んもう極端だなぁリューちゃんは! 告白されたのはティアなんだから、リューちゃんが気にする必要なんてないじゃん? てことで、付き合うかどうかはティアが決めればいいのです!」

「お前は先程のラトルの告白を聞いてなかったのか? ラトルがユーティアに思いを寄せる根拠に、俺の人格が多分に含まれていたぞ! あれでは半分俺が告白されたも同義ではないか!!」

 俺は無神経に口を挟むマリオンに反論する。

 こいつは所詮お子様。

 恋愛の苦悩など理解できんのだ。


《わかりました。では私がお断りをするのでそれで収めてくださいリュウ君。もちろん暴力なんてもってのほか! メッですよ!》

 意外にも、ユーティアから潔い提案がなされた。


「え~断っちゃうのティア?」

《まぁ、冷静に考えればそうなりますよ。こんな私に好意を寄せていただけることは本当に有難いことです。ですがラトルさんとはまだ知り合ったばかりですし、少なくともしばらくは私がラトルさんに特別な感情を持てるとは思えません。それに今はなによりリュウ君のことで手一杯。不器用な私が同時に恋愛をというのは……ちょっと欲張りすぎですよ?》

 ユーティアは切々と、自分に言い聞かせるように表白する。

 しかしその言葉には、ラトルに対する感謝の意が滲み出ていた。

 

「わかった……それでいいだろう。ただし断りを伝えるのは俺がやる。お前だと情に流されて押し切られる可能性があるからな」

《え!? でも……》


「わかっているさ、ラトルを傷つけないように、だろ? 心配するな、その点においては完璧に遂行してやる。いやむしろラトルにお前に対する興味を失わせ、自ら身を引かせてみせよう。それにはほんの少しばかりの真実をラトルに伝えるだけで事足りるのだからな」

《え? リュウ君それはどういう意味ですか?》

 俺はユーティアの言葉には答えず、ラトルの元へ戻る。


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