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第123話 リトルナイツ 3

「おーい、生きてるかラトル?」

「ゴホッ……つっ……ユーティ……アさん? は……ハイ、なんとか……」

 返事ができる程度には元気らしい。

 顔色も悪くはない。


 融解した水晶を多少飲み込んでしまったようだが、それも少量のようだし害はないだろう……たぶん。


「まぁラトル、色々と混乱していると思うが詳細は後だ。今は少し休んでていいぞ」

「いえ……おおよその察しはつきます」

 ゆっくりと立ち上がったラトルは周囲を見回すと、絶望的な表情を浮かべる。


「僕はあの魔物に敗北して、またユーティアさんに助けられた……ということですよね? しかも周囲がこんなにもなるほどの激しい戦闘。ユーティアさんが戦っている間、僕はなにも……なにもできず、なんの役にも立たなかった。本来ならば僕が守る側の立場だというのに……情けない限りです……本当に……」

 護衛として役に立てなかったことが余程に無念なようで、ラトルは俯き両目に涙を浮かべる。


「……まぁ、そうあまり気に病むなよ。今回ばかりは相手が悪かった。なにせエクシードでも歯が立たなかったらしいからな。ただ今後は相手の強さと特性を見極めて戦うことをお勧めするぜ。お前の能力は後攻めで真価を発揮するタイプだからな。あとそうやってすぐクヨクヨするのも悪い癖だぜ? そんな暇があるなら、これからの自分がどうあるべきかという未来を見据えるんだな」


 まったく、死闘を繰り広げた挙句に他人のメンタルケアまでせねばならんとは。

 こういう面倒な雑務はユーティアの専門だろうに。

 この場においてまだ気絶しているユーティアが、急に恨めしくなってきた。


「同感ね、ではワタシも気を取り直して新しい依り代を手に入れるとしましょうか」


 突然──だ!

 背後からガルシアの声!!


「な──に!?」

 振り向いた時には、もうソレは俺に向かって飛びかかっていた。


 二つの赤紫色に燃える魔石に、細い神経のような触手が巻き付いた化物。

 あの魔石──ガルシアの両の目だったものだ!

 まさか……奴はまだ生きて──


「先程ワタシのこの予備のコアを破壊しなかったのは致命的ね! その肉体いただくわ!!」

 ガルシアは数本の触手を尖らせ突き放つ。


 どんだけしつこいんだよコイツは!

 B級ホラー映画でもここまでしないぞ!


 いやそんなことよりガードだ!

 奴め、あの触手で体内に入りこの体を乗っ取るつもりだ。

 肉体硬化で防御を──

 いや触手は俺の頭部を目がけている。

 耳や鼻の穴から侵入するつもりだ!

 

 ガードではなく回避を、もしくは弾き返さなければ!

 だが触手の先端はすでに目前!

 ダメだ! 間に合わな──


「ユーティアさん!!」

 ラトルが叫ぶ!


 と同時に、ガルシアの動きがピタリと止まる。

 まさに俺の頭部に到達する寸前で。

 直後、ラトルの剣がガルシアの二つの予備コアを一閃する。


「ぐぎゃあああああ!! よくも! よ……くも……おぉ…………」

 今度こそガルシアは断末魔を上げて消滅する。

 さすがに……これ以上は無いだろう。


「お怪我はありませんか! ユーティアさん!!」

 暗がりで俺の状態がよく見えないからだろう。

 ラトルは慌てふためきながら俺の体を凝視する。


「大丈夫だ、おかげ様でな。ところでラトル、今なにかしたか?」

「はいっ! 無我夢中で剣を振りました!」

「そう……か、いやなんでもない」


 確かにガルシアの動きが一瞬止まった。

 まるで奴の全体が固まったように。

 あれはなんだったんだ?


 単に力尽きただけ……には見えなかったが……


「その……ユーティアさん」

 剣を鞘に納めたラトルは、少し恥じらうように、恐る恐る俺に尋ねてくる。


「こんな僕ですが、ほんの少しだけでもあなたのお役に立てたでしょうか?」

 俺に世辞を求めるなど不毛だというのに、しかしラトルは御褒美をねだる忠犬のように目を輝かせる。


 まったく世話のかかる奴だ。

 だがまぁ、助けられたのも事実。

 ここは褒めて伸ばすのが正解なのかもしれない。


「そーだな、ほんのちょびーっとだがな。今後も奮励努力したまえ少年!」

「はいっ! ありがとうございますユーティアさん!!」

 ラトルは今までで見たことがないような笑顔で、元気よく返事を返した。 



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