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第122話 リトルナイツ 2

 …………────────────


「──っご、ふんぬっ!!!!」

 が、俺はその直後に意識を取り戻す。

 そして膝から崩れ落ちていた体を両腕で支え堪える。


「がはっ! はっ!! は……死ぬ……かと思ったぞ!!」

 一瞬とはいえ晒された死。

 その恐怖により、俺の心拍数は急上昇する。 


 だがそれは俺の心臓が動いているなによりの証拠でもある。

 大丈夫、俺はまだ生きている。

 どうやら奴の技は俺に十分な効果は発揮しなかったようだ。


「え? は? なん……ですって? 効いていない? そんな……バカな! 嘘よ! どうして???」

 そして今度は俺に代わってガルシアが動揺し始める。


「どうしてって、そんなこと俺が知るわけないだろ! やっぱりこの手のは成功率が低いんだろ? 土壇場で頼るモンじゃないな」

「違うわ! これはワタシが長年にわたって試行錯誤を繰り返した末に完成させた、確実に死をもたらす絶対秘技なのよ! これは何かの間違い──もう一度よ!!」

 そしてガルシアは、立ち上がろうとする俺に向けて再度『華麗な(エレガント)る絶頂(・エクスタシー)』とかいう技を放つ。

 

 俺は再び意識を失うものの、やはりすぐに覚醒する。

 もちろん心臓が止まっている様子もない。


「死なないとはいえ、これすっげー不快なんですけど? 頭クラクラするし……三回目は打たせないから覚悟しろよ干物が!!」

「そん、な……バカな!! 『華麗な(エレガント)る絶頂(・エクスタシー)』が効かないのは、心臓が無く命を持たないアンデッドやゴーレムだけのはず! アナタには心臓が無いとでもいうの!?」

 そのガルシアの絶望に満ちた叫びを聞いて、俺はようやく理解した。


 そうか、ガルシアのコアが相手の意識を読み取って逆相の波動を生成すると言っていたな。

 だから今奴の技の対象となっているのは、あくまでも俺──胎児である俺の本体だけということになる。


 このユーティアの体が影響を受けることはない。

 もちろんユーティアの心臓も止まらない。

 だから俺も死ぬことなく、こうしてすぐにリカバリができるのだ。


「あっははは! そりゃある意味正しいぜガルシア! 残念だったな、俺はまだちゃんと動く心臓も持っちゃいない。なにせ命を持たないという表現も、ある意味では正しいぐらいだからなぁ!!」

「なっ、なによそれ! どういう意味よ!?」

「俺はお前と違って種明かしはしてやらん! そしてお前の顔はもう見飽きた! 今すぐに死ね!!!」


 俺はガルシアの頭部を掴み地面に叩きつけると、そのコアを踏み潰す。


「ヒギャアアアアアアアアアアア!!!」

 悲鳴を上げて砕け散るコア。

 その光は急速に衰え、やがて夜の静寂に溶け込むように消え去った。


「────ふぅ……強敵……だったな」

 念のためにともう一度胸に手を当てた俺は、もちろんその異常のない鼓動を確認してホッと胸をなで下ろす。


 魔方士としての実力もさることながら、あの『華麗な(エレガント)る絶頂(・エクスタシー)』の能力は規格外だった。

 俺が胎児の状態で回避できていなければ勝てなかっただろう。

 さらにもし今ユーティアの意識がある状態だったら、ユーティアの方へ効果が作用して死んでいたかもしれない。

 今のタイミングで戦えたのは、まったくもって幸運だったと言う他ない。


 ついでに言うと、これは王国から感謝状を貰ってもいいぐらいの功績だ。

 あんなのが山を下りたら手がつけられなくなるところだったぞ。


「そうだ……マリオンと……ラトルはどうなった?」

 予想以上に大規模な戦闘になったからな。

 巻き込まれて死んでいるんじゃないかと思って確認してみる。


 ポチはここからかなり離れた場所からすまし顔でこちらを眺めている。

 中のマリオンはいまだ熟睡中。

 こいつはいい加減なぐってやりたい。


 ラトルは……時間停止の檻から解放されつつあった。

 巨大水晶は先端からゼリーのように変質し融解していく。 


 やはりあれだけの高等術式。

 維持するにも微量ながら魔力の供給が必要だったのだろう。

 しかしガルシアが消えた今その供給が途絶え、時間停止を維持できなくなったようだ。


 水晶の半分以上が崩壊し、やがてラトルの体は地面へと吐き出される。


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