助けたのは、アイドルでした!
憧れのアイドルのライブを見るためにアキバまで出てきた。家が厳しかった僕はこういうことでは中々、出歩けなかったけど、今回はたまたま父親の出張と母親のママさん旅行が被り、許しが降りた。
僕は見た目で、中学生に間違われることが多いため、呼び止めれることも少ない。僕は、3つ上の兄(ぶん殴りたくなるくらいのイケメンで、モデルをしてる。)から格好いいデザインのパーカーとズボンを借りてきた。
因みに両親は美男美女ってわけではないんだけど、兄は学校にファンクラブができるほどの美男。お陰で僕は兄と比べられる毎日。バスケの才能があったおかげでそこまで悲観はしてないけど。兄はサッカーのU-15の日本代表に選出されるような有望選手。
将来は確実に海外でプレーすることになるだろう。まぁ、勝手にしてくれって感じだ。
楽しみにしていたライブは本当に楽しかった。自分は見ているだけだったけど、オタク達はヲタ芸で盛り上げていた。
ただ…事件はライブ後に発生した。
ライブ終了と同時にライブ会場のあるビルが何者かによって爆破された。観客席は衝撃によって天井の照明類が崩れファン達は生き埋めとなった。俺は嫌な感じがしたため、爆破の直前に会場を出たことで間一髪免れた。
アイドルたちは、衝撃と崩落によって多くのメンバーが気を失い、何名かは怪我を負った。
「ここで彼女達を助けたら、僕はヒーローになれるかもしれない。でも、間違いなく疑われるだろう。一人だけ生き残ったんだから。でも、ここで見捨てるのは後味が悪い。」
そこで僕は、声を大人の男性の声を変えた。イメージ的にはFFシリーズのスノウをイメージしてくれればいい。
そして、怪我を負ったメンバーを一人また一人と助けた。
最後の一人を助け終わったとき、そのメンバーの目が薄っすらと開いた。
彼女は、前橋弘子。このアイドルグループのセンターであり、誰よりもファンが多く、僕の推しメンでもある。
「だ…誰?」
「俺はスノウ。皆の怪我は治しといた。ファンの奴等は残念だったな。」
「た…助けてくれたの?」
「今回だけは無償で助けてやる。お前は俺の推しメンだからな。諦めるんじゃねぇぞ?」
「は…はい…」
そこで彼女は気を失った。お幌気なひととき。夢と思うかもしれない。でも、この状況と僕がわざと落としていくゲームキャラのポストカード。これを見れば現実だったとしか思えないだろう。
連絡先は渡さない。そんな危険は冒せない。それに彼女達は会いに行けるアイドルなのだから。
そうして僕は、姿を消した。