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悪役令嬢シリーズ

眼鏡の悪役令嬢は運命を信じたい‼︎

作者: まみやまみ

悪役令嬢シリーズ第5弾です!!

平日なのですが、地道に書き溜めていた分で投稿できました!!

そろそろ学校にも慣れてきたので悪役令嬢シリーズ以外も投稿していきたいと思います!

「お父様、私、眼鏡が欲しいです」


「眼鏡?目が悪くなってしまったのかい?」


「いえ、私が欲しいのは…」


私が欲しいのは、そう。


「認識阻害グラスを使った眼鏡です」













私が誰かにねだったのはそれが最初で最後だったかもしれない。6歳の頃、前世の記憶が蘇り、自分が悪役令嬢だと知った私はまず最初に王子の目に写らないことが大切だと思い、認識阻害グラスの眼鏡を買ってもらった。これは、相手が私を知らない限り、その他大勢として認識してしまう。つまり、一般人に埋没可能になるグラスなのだ。だから、どれだけ悪役顔の私でも、この眼鏡をかければ、あら、地味な顔ね。と言われるという便利な品物なのだ。ただ、グラス越しなので私からみても眼鏡をかける前に出会った人以外は例え王子だろうと知らない人はただの一般人に見えてしまう。願わくば…。


早く物語が終わってこの眼鏡を外したい‼︎


そんなことを考えながら10年が経ち、今では私は16歳。もうそろそろ物語も終わりへと着実に進んでいる。残念ながら強制力がはたらいたのか、王子の婚約者になってしまったが、王子と話したのは婚約したとき以降事務的な言葉以外は一回も話したことはないし、正直私はいるようでいないようなものだ。










「エーファ、おはよう!」


「ウィリアム!久しぶりね!」


学校内で久しぶりにウィリアムに会い、私のテンションは爆上がりした。ウィリアムは私にとって初めてできた友達だ。認識阻害グラスをつけるだけで私の顔は一般に紛れてしまうため、誰にも話しかけられなかった中で話しかけてくれたのがウィリアムだった。


「エーファ、最近学校で授業受けたらすぐに帰っちゃうから全く話せなかったよ。今日も早くに帰るの?」


「えぇ…まぁね…」


もうすぐ婚約破棄されるだろうし、適当に学校の中をぶらぶら歩いて、ヒロインをいじめたと言う冤罪をかけられても困るから最近は早く帰るようにしている。


「ウィリアムは最近はどう?」


「ん〜、普通かな。でも、エーファと会えなかったからめっちゃ寂しかったぁ〜!」


「またそんなこと言って…」


揶揄うように笑うウィリアムを見ながらクスクスと私は笑う。ウィリアムとは眼鏡をかける前にどこかで会っていたようで、眼鏡越しでも顔がちゃんとわかる。それはウィリアムも同じだ。多分この悪役顔がちゃんと見えてるのだろう。それでも他の人と変わらぬように明るく元気に接してくれるウィリアムは本当に優しい。


「そうだ!これから一緒にカフェに行かない?新しいカフェができたらしいんだ!」


「カフェ?いいけど…」


男子であるウィリアムが行って楽しいかしら?彼が甘党だったって記憶はないのだけれど。まぁ、いっか。カフェ自体はすっごく好きだし!





「ホットケーキを一つ」


「俺も同じので〜」


結局2人でカフェに来たが周りに女性の客が多すぎてウィリアムが本当に楽しんでるのか不安になる。


「ウィリアム、ちゃんと楽しんでる?」


「もちろんだよ!エーファと行ければどこでも楽しいよ〜」


はぁ…ウィリアムの将来が心配ね。チャラ男すぎて大きな事件に巻き込まれそうで怖い。


「ちゃんとお付き合いをする女性は1人に絞りなさいよ?」


「大丈夫!俺はエーファ一筋だから!」


そう言ってパッチリとウインクを決めたウィリアムに呆れすぎて私はため息が止まらない。


「あのねぇ、私これでも一応婚約者がいるんだからね?それもこの国の王子様よ?」


「わーかってるって」


ちょうど店員さんが持ってきたホットケーキにシロップをかけながらそう答えるウィリアムは真剣に答えているとは思えない。


「でも、エーファは別に王子のことが好きってわけではないんだろ?」


「まあ、そうだけど…」


「なら、俺にももしかしたら、があるだろ?それにさ、多分俺はエーファが眼鏡をする前に会ったことはないと思うんだ。だって、エーファに初めて会った時、この人だって何か感じたもん!だから奇跡を信じようかなぁって」


その言葉にドキリとした胸は婚約者のいる私の立場的に見てみぬふりをした方がいいのだろう。

それに、ウィリアムが言っている奇跡とやらは、眼鏡に関するただの噂だ。もし、そうだったらそれはすっごく幸せだけど…いや、それは私の立場では思ってはいけないことだ。それに実際にあるわけがない。


「ホットケーキ、出来立てなんだから早く食べよ」


そう言って私は自分の気持ちから目を背けた。





ホットケーキを食べ終わり、雑談もある程度話し終わると訪れるのはなんとも言えぬ満足感の漂う沈黙だ。


「ウィリアム、そろそろ帰る?」


「うーん…そうだね。帰ろっか」


私たちが帰るために腰を上げた瞬間店の中に見知った人が入ってきた。


「お、王子?何故ここに…」


「エーファ、君に大事な話がある。来てもらえるか?」


あぁ、ついにこの時が来たのね。私は感情を隠しニコリと微笑み頷く。


「わかりました。場所は城で大丈夫かしら?」


「あぁ」


「ごめんなさい、ウィリアム。会計をしておいてもらえるかしら?私のお金は渡しておくから…」


「嫌だ」


え?ウィリアムに頼りすぎたかしら?


「俺はエーファと一緒に会計をして、一緒にいくからな!」


「「はい?」」


思わず声に出してしまったのは私も王子も同じだった。

婚約者同士の話に口を挟むとは思わなかったわ…。

ウィリアムはグイグイと私の手を引いて会計を済ませると一緒に馬車に乗った。


「俺は行くからな!絶対に!」


その言葉に諦めを含めたため息をつく王子と私たちを乗せながら場所はお城に向かって動き出した。








お城に着くと、大事なお客様と対談するときに使う部屋に通された。


「それで、何のようですか?」


「実は、申し訳ないのだが、俺との婚約を解消してもらえないだろうか?」


あぁ、やっぱり。

でも申し訳なく思っていると言うことは私がヒロインをいじめたという冤罪ルートは消えたのだろう。それは一安心だ。

王子はウィリアムの存在を完璧に無視しているらしく、私の方を見ながら申し訳なさそうな顔で延々とヒロインの美しさやヒロインへの愛を言ってくる。正直、微妙な気持ちだ。

そんな私を気遣ったのかウィリアムが王子に聞く。


「もちろん、婚約解消する書類は用意してるんだよね?」


「あぁ、これだ」


スッと王子が差し出した書類を私より先にウィリアムが読み、問題がないことを確認すると私に手渡す。


「内容は問題無さそうだよ。早く、サインしちゃおう!」


「え、えぇ。」


これでついに終わる。ついにさよならするのだ。物語とも、王子とも、眼鏡とも。

王子に婚約解消された私なんかをもらいたがる人はいないだろうし、これからの未来は真っ暗だ。でも、断罪されるよりはましだ。

震える手でサインを書き終わると王子は小躍りするような足取りで部屋から出ていこうとする。

その瞬間…。


バタン‼︎


「王子!」


「な、何でここに?…いや、そんなことはいい。それよりもたった今エーファと婚約解消したんだ!これで君も俺と婚約してもらえるよな?」


ドアから入ってきたヒロインはそんな王子を嫌そうに見るとキッパリと告げる。


「嫌です!」


「え?」


「私が、婚約者がいるから婚約できないと言ったのはていよくお断りするためですから。正直、あなたみたいな恋愛にうつつをぬかすような人と結婚なんて嫌です!立派な王様になれるくらいになってから求婚してください!」


ポカンと口を開ける私と王子に対して突然ウィリアムは笑い出した。


「あはははっ!さっすが俺の妹!変な男に引っかからないように育てた甲斐があるね」


妹⁉︎まさか、ヒロインってウィリアムの妹なの⁉︎


「お兄様、エーファさんが婚約解消したのなら急いだ方がいいですよ?早くしないと取られます!」


「わーかってるよ」


心配そうに兄を見つめた後ヒロインは部屋から出ていく。そんなヒロインを追いかけ、王子も部屋を出て行く。


「どうしたら婚約してくれるんだ!」


「王子が立派になったらです」


「立派ってどんくらいだ!」


「うーん…隣国との戦争を止められるくらいですかね?」


「…そういう、無理難題でもハキハキと告げる君が好きだ!」


「求婚は立派な王子になってからにしてください」


そんな声が遠ざかっていくと突然目の前のウィリアムに眼鏡を取られた。


「あっ、ちょっ…」


「もう、必要ないよね〜?」


そうだけど…。

今まであったものがなくなった不安感に心が揺れる。


「ウィリアム、私、これからどうしよ…。婚約者もいないし、貰い手もいないだろうし…」


「俺と結婚すればいいじゃん、美冬」


…?今、なんて?

懐かしい言葉に思わず心がぽかぽかとなったが、よく考えればもう聞くはずのない言葉だ。いつになく真剣な表情のウィリアムはジッと私を見つめてくる。


「ウィリアム、なんで私の前世の名前を…いや、聞き間違い?」


「聞き間違いじゃないさ。実は、眼鏡をかけててもお互いの顔がしっかり見えてたのはあの噂の言う通りではないんだ。いや、正確には半分正解で半分不正解なんだよ」


あの噂…とは、私のおばあさま世代の方々の中で流行った噂だ。

認識阻害グラスをつけてても、一回も会ったことがないのに顔がしっかり見えるのは、その人が運命の人だから

そんな噂だ。


「俺たちはこの世界で会ったことがない。でも、前世で会ったことがあるんだ」


そう言って微笑んだウィリアムの顔を見た刹那、ピタリとピースがハマった。

あぁ、そうか。


「あなたは…」


彼は、私の前世の彼だ…。一緒に婚姻届を出す途中で交通事故で亡くなってしまった彼なのね…。

全てを理解して思わず倒れそうになった私の体をウィリアムが支える。そのしっかりとした感触でこれが夢ではないとはっきりとわかった。

前世も含め、今まで運命というものを信じたいと思ったことはあっても信じたことはなかった。でも、今なら…思う存分信じてみてもいいかもしれない。


「ねぇ、美冬。エーファとして聞いて欲しい。今度こそ俺と、結婚してくれないか?」


あらためて言われた言葉に返す言葉は一つしかない。


「もちろんよ!」










数年後、王子の頑張りにより隣国との戦争も終わり、平和な世界になった国で幸せな結婚式が行われたらしい。

                end

読んでくださりありがとうございました!!

感想やブックマーク、評価をつけてくださるととっても嬉しいです!


感想は、長文になってしまいがちですが、全てに返信していきたいと思っています!いつも、感想を書いてくださる皆さん、評価をつけてくださるみなさん、本当ありがとうございます!いつも見返しては物語を書く原動力にさせていただいています!力が及ばない所もありますが、これからもどうぞよろしくお願いします!



追伸

評価数が1000に行きました‼︎本当にありがとうございます!!           2022/04/25

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― 新着の感想 ―
[良い点] ウィリアム、漢(おとこ)だねぇ。 こういうのを カッケーなっていうんだろうな。 王子はダッサだな。やっぱり。 恐るべし強制力。 厳しい世界にメガネひとつで…ヤバいですね。 面白いです。 あ…
[気になる点] 結婚届って、普通言わないよね? 婚姻届けって大抵言うと思うんだけど… 引っ掛かったし、仮にも王子の婚約者が異性の友人と2人っきりとは? 身分社会。。
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