悪役令嬢に転生したようですが、主人公の様子が変です
「ミレイユ様、私、貴女に絶対負けません!」
「あらそう。それじゃあ私はこれで」
「…え?ちょ、ちょっと…?行っちゃった…」
「なんて奴だ、リリアンヌの言葉に耳も傾けないとは!」
「リリー、君は気にしなくていいからね?僕が守ってあげる」
「ハロルド、抜け駆けは禁止だと言っただろう!」
「えー、聞こえないなー」
「リカルドもハロルドも、リリアンヌを困らせるな」
「ジェラルド殿下!」
ぱあっと顔色が明るくなり、ジェラルド殿下に駆け寄るリリアンヌ。そんなリリアンヌを優しく抱きしめるジェラルド殿下。
…はぁ。本当にやってられない。
改めまして、ご機嫌よう。私はミレイユ・エルキュール。公爵家の一人娘です。…そんな私は、実は前世の記憶があります。所謂異世界転生というものを体験してしまったようです。
前世の私は、この世界とは異なる世界の日本という国で暮らしていました。そんな私はネット小説を読むのが大好きだったのですが、ある日突然不慮の事故で命を落としたのです。
そんな私は、転生してからしばらくは新しい私として、前世の記憶を思い出すこともなく過ごしていましたが…この国の貴族の通う学園に入学し、リリアンヌと出会ったことで突然前世の記憶が蘇ったのです。
そう、この世界は私が前世で読んでいたネット小説、『リリアンヌと三人の貴公子』の世界だったのです!
そして、私は嫌われ者の悪役令嬢に転生していた、と。最悪過ぎます…。そして、主人公のリリアンヌはなぜか原作とは違い、私に事あるごとに突っかかってきます。
おかしいな…本来ならミレイユが、男爵令嬢なのに貴公子に囲まれているリリアンヌに突っかかっていくはずで、そうでなければリリアンヌとの接点もないはずなのに…。
ともかく、私は極力リリアンヌを避けて学園生活を送ってきました。そして、今日学園の卒業に必要な単位を全部取りました!いやぁ、本来なら三年掛けて取る単位を一年で取るとか苦労したわぁ…。その間ずっとリリアンヌに付きまとわれて虐めの冤罪までふっかけられて、本当に大変だった。リリアンヌマジでなんなんだ…。
まあともかく、単位を取った以上あとは自由なので、荷物をまとめて寮を出ます。そして実家に帰ります。
「グッバイ、リリアンヌ!」
やっと解放されるー!
ー…
「ミレイユ、たった一年で必要な単位を取れるなんて凄いじゃないか!」
「首席で卒業間違いなしだわ!本当にすごいわ!」
「ありがとうございます。お父様、お母様」
「ミレイユ、なにか欲しいものはないか?ご褒美になんでも買ってやろう」
「じゃあ、お小遣いそのものが欲しいです」
「そうか。とりあえず百億でいいか?」
「充分です、ありがとうございます」
親からお小遣いをもらった私。百億とか半端じゃない…今の、前世の記憶がある私としてはちょっと不安にすらなる。
…とりあえず、リリアンヌから解放されて、悪役令嬢として裁かれることも回避出来たはずなので公爵家の一人娘として出来る贅沢を味わい尽くそうと思う。
「マリア、買い物に行くわよ」
「はい、お嬢様!」
もらったお小遣いの実に半分、五十億を使い尽くし、美味しいものを食べ、新しいドレスと宝石を買って、エステも楽しみ、侍女と護衛だけ連れて旅行もした。あー、楽しかった。
でも、あと五十億何に使おう?もう贅沢するの飽きたしなー。
「マリア」
「はい、お嬢様」
「うちの領内の孤児院に、二十億寄付して」
「え!?お嬢様が慈善活動なんて、どうされたのです!?今まで下々の者に興味などなかったのに!」
「バカねぇ。ただの慈善活動じゃないわよ。孤児院の子供たちを教育して、お金儲けするのよ」
「はい?」
「芸術の才能がある者は、その方面で売り込み給料の一部を搾取。文学の才能がある者は、その方面で売り込み給料の一部を搾取。学のある者は、宮廷の文官として売り込み既得権益ゲットに役立てる。完璧じゃない」
「あ、元のお嬢様ですね。よかった」
これでよかったと言われるとか私どんだけよ…。まあ、今の言葉に嘘はない。ただ、教育したとしても花開くのは一部の天才のみ。他の子達も助けるのは、前世の記憶が戻った私としては子供達を憐れむ気持ちがあるから。でも、そんなことを言うとこんな反応をされるから言わないけど。
「お嬢様、早速寄付してきますね!子供達の教育に役立てるよう言い含めておきます!」
「よろしくねー」
ー…
しばらく経って、私は孤児院の院長から感謝の手紙をもらった。せっかくなので孤児院に向かい、子供達に会いに行くと、みんな身奇麗で、肉付きも良く、勉強に励んでいた。
「お嬢様、この度はありがとうございました。来てくださって、子供達も喜んでおります」
「いいの。子供達は頑張っているのね」
「ええ。お嬢様のお陰で、読み書き計算まで出来るようになりました。本当にありがとうございます」
いやー、いい事するっていい気分!もっと何かやってみようかな?
ー…
「ということでマリア、二十億使ってスラム街の民に炊き出しをしつつ、大衆浴場に行かせて清潔な服を着せて、真っ当な仕事をさせるわよ!」
「お嬢様、本当にどうされたのですか?」
「だって、スラム街なんかがあるから治安が悪くなるんじゃない。将来の女公爵として、スラム街の問題を解消するのは当たり前だわ」
「お嬢様が…やっと真人間に…!」
なにやら涙を流して喜んでいるマリアは無視して、スラム街の民に炊き出しを行ってみます。
「お嬢様、炊き出しありがとうございます。今日は風呂まで入れてもらって、真っ当な仕事まで斡旋してもらって、こんな大金までくださって…」
「いいのよ。これから頑張ってね!」
「はい、お嬢様!」
いやー、いい事するって気持ちいい!
ー…
学園の卒業パーティー。わがまま令嬢としてみんなから距離を置かれていたせいで婚約者が決まっていない私は、お父様のエスコートで参加。
「リリアンヌはどうしたかしら…」
ちらりと会場を見渡して、リリアンヌが独りぼっちになって下を俯いているのをみつけた。おやおや?
「貴公子三人はどうしたのかしら」
貴公子三人を探そうとした時、ジェラルド殿下が私の元までやってきた。
「…ジェラルド殿下、ご機嫌よう」
「ミレイユ嬢…すまなかった!」
いきなり謝ってくるジェラルド殿下。王族が頭を下げるなど、ありえないのに。
「ジェラルド殿下!?大丈夫ですから頭をあげてください!」
「君が学園の寮から出て行ったあと、リリアンヌの本性が明らかになったんだ!リリアンヌは君を冤罪で貶めていた!僕らはそれに気付かなかった!本当にすまない!」
いつのまにかリカルドとハロルドも来て、一緒に頭を下げる。お父様は静観の構えだ。
「ごめんね、ミレイユ嬢」
「悪かった、ミレイユ嬢」
「大丈夫ですから、とりあえず頭をあげてください!」
やっと頭を上げる三人。
「聞いたんだ。君が私財を投げ打って孤児院やスラム街の民を救ったと。そんな、心優しい君をありもしない罪で追い詰めてすまなかった!」
「いや、そんな立派なことしてないです…心優しいとか追い詰めるとかないです…」
そんな感じでわちゃわちゃしていると、何故かリリアンヌが走ってこちらに向かってきた。他に何か持っている。…ナイフ!?
「ミレイユ嬢、危ない!」
三人の貴公子が私を庇う。お父様はすんでのところでリリアンヌの腕を掴み上げてナイフを奪った。
「あんた!あんたも転生者なんでしょう!悪役令嬢のくせに、よくも貴公子三人を奪ったわね!」
あー、なんか変だと思ったらリリアンヌも転生者か!とりあえず面倒くさいので、知らないふりをしておこう?
「え?」
「え?じゃないわよ!カマトトぶるな!」
そうこうしてリリアンヌが暴言を撒き散らしている間に治安維持部隊登場、リリアンヌは颯爽と牢獄まで連れて行かれた。
「ミレイユ嬢、僕は君の優しい行い、美しい姿に心惹かれた。どうか僕と婚約してくれないか」
「ミレイユ嬢、僕を選んでよ!」
「ミレイユ嬢、どうか俺を選んで欲しい」
…で、なんでこうなるんです?父を見ると、何故か貴公子三人を品定めし始めていた。これから私はどうなるのでしょう?
敦君はいつだって楽しそう
という短編小説もよろしくお願いします٩( 'ω' )و




