こはるはみうちゃんをころしたくありませんでした。
みうちゃん、ひさしぶり。
こはるです。
ひっこしてから、もういっか月だね。みうちゃんたちのことがなつかしいよ。こっちにはおともだちがひとりもいなくて、おかあさんもいなくなっちゃって、けっこう、さびしいです。
おかあさんはおほしさまになったんだって、おとうさんはいうけど、わたし、もうわかってるんだ。おとなはわたしよりもあたまがよくてつよいはずなのにさ、なんで、「死んだ」って言えないんだろね。こはるは、ふしぎにおもっています。
でね、みうちゃんとか、けんとくんとか、まなちゃんとか、みんなのことがなつかしくなっちゃったから、おてがみをかきました。
がんばってかいたから、おへんじ、まってるね。
なにからはなそうかな。ん-。
わたしのまわりには、いまね、だれもいないんだ。
ひっこしてから、ようちえんに行かせてもらえなくて、ずっといえにいなくちゃいけなかったの。おかあさんがいないと、おとうさん、こはるをようちえんにも行かせられないみたい。
でね、おとうさんぶきようだから、おりょうりもおせんたくもだめなの。ごはんはおいしくないし、あらったあとのふくにも土がついてることもあったし。
でね、わたしがおとうさんにもんくを言うと、おとうさん、わたしのことぶつんだ。うるせえ、くそがきって。ひどいよね。おやが、こどもに言うことじゃないよ。わたしでもわかるのに、なんでおとうさんにはわからないんだろう。
おとうさん、どんどんひどくなっていっちゃってさ。なにもしてないのに、わたしのことぶつようになっちゃって。なんでおまえなんだ。どうしてふゆみがしんで、おまえがいきてるんだって。
おかしいよね。おかあさんはおほしさまになったんだって言ったのはおとうさんだし、わたしは「おまえ」じゃなくて「こはる」なのに。おとうさんとおかあさんがつけてくれたなまえだよ? こんなにかわいいなまえなのに、「おまえ」ってよぶなんて、おとうさん、ひどいよね。
こはるもね、さいしょはがまんしてたんだ。だって、すきなひとがしんじゃったんだもん。おとうさんだって辛いよね。じゃあ、こはるのことはすきじゃなかったの?っておもったけど、わたしだって、もしけんとくんが死んじゃったらみうちゃんにやつあたりしちゃうかも。みうちゃんのことも、けんとくんにまけないくらい好きなんだけどね。
でもさ、おとうさんひどいんだよ。ずーっと、いつまでたっても、おほしさまになったおかあさんのことばっか見て、こはるのことはぜんぜん見てくれないの。いっつもぶってくるし、ごはんはおいしくないし、おさけくさいし。
だからさ、おとうさんがわるいよね。こはるは、悪くないよね。
あのね、わたし、あたまにきて、おとうさんにしかえししようとしたの。いっつもぶってくるおかえしにっておもってね、おとうさんがねてるときにね、ほうちょうを、おとうさんのくびのところにさしちゃったの。
わざとじゃないんだよ。ほんとうはさ、くびのすぐよこにつきさしておくつもりだったんだ。こはるはいつでもおとうさんを殺せるんだぞって、だからこはるをいじめるのはおとうさんのためにならないぞって、それだけのつもりだったの。
それがさ、おとうさんのくびにささっちゃって、ちがぶわーってなって、べっどが
まっかっかになって、おとうさん、まだめをさまさないの。こおりみたいにつめたいし、だんだか、おさけとはちがう嫌なにおいがする。
おとうさん、しんじゃったのかな。おほしさまになっちゃったのかな。わたし、またやっちゃったの?
でもさ、おとうさんがわるいよね。わたしをぶつんだもん。おとうさんがわるいよ。おとうさんもさ、おかあさんといっしょにおほしさまになれてきっと幸せだよね。そうだよね。
でね、こはるはいま、ひとりです。ひとりじゃいきていけないから、みうちゃんのおうちにいってもいい? いいよね。しんゆうだもんね。まずはおふろをかりようかな。ふくがまっかになっちゃって、ばっちいから。
ことわったりしないよね? けいさつに言ったりしないよね? だって、こはるとみうちゃんはしにゅうだもんね?
もしみうちゃん、こはるにひどいことしたら、こんどはみうちゃんがおほしさまになっちゃうかも。
それじゃあ、いまからいくね。このおてがみがとどくころには、こはる、みうちゃんのいえにつくとおもうよ。
じゃあ、また、すぐにあえるね。
ばいばい こはる。