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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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アイスワイン

 それから一月がたった。


 私達はアルノルトさんの思いつめたような表情のことなんかすっかり忘れて、妖魔狩りにひたすら精を出していた。妖魔の石像はもう四百体くらいある、ここ数ケ月間に頑張った成果よね。これがカカシかなんかのように、畑のまわりや道の両側に、点々と立てられている姿はぎょっとするほど異様なんだけれど、村の人達はもう見慣れたもの、平然としている。


 中には石像が害獣や妖魔から守ってくれているというので、お供えなんかをする人もいるのよ。マンティコア像はなぜか人気で、いつもお水やお花がその前に置いてあったりするの。何か変だと思うけど、害はないから放っておこう。


 そして私は鉄モグラさんにお願いして、さらに内緒の仕掛けを造り始めていた。アルテラの軍隊が攻めてくる可能性がある以上、出来ることはすべてやっておかないとね。


 村人達が農作業に勤しむ間、私たちはサボっているようで申し訳ないのだけれど、なぜかみんなは寛大に許してくれる。


「この村はいいところなんだが、やっぱり妖魔にしろアルテラ兵にしろ、襲われる危険が大きいのは間違いない。正直なとこ、年中不安に暮らしていたんだ。あんた達がやっていることは俺達の不安を取り除いて、気持ちよく働けるようにしてくれる。こっちを手伝う必要なんかないから、どんどんやってくれ」


 こんなことを村長さんに言われたら、頑張りたくなるってものよね。かくして私たちは畑仕事や牛の世話を村の人たちに任せて、せっせと妖魔狩りと村の要塞化に取り組んでいる。生活の方は、街で魔石を売ったり、妖魔のついでに狩った動物の肉を、村の人と物々交換して麦やジャガイモ、野菜なんかをいただけるので、なんとかなっている。


 食生活に関しては、クララが頑張って、なかなか豊かになってきた。まずは狩りで獲った猪なんかでソーセージやハムを造ることに成功、今や村の人達が買いに来るくらいの出来よ。


 そして私の強い強い希望に応えて、ついについに、懐かしのロワール風カンパーニュを焼いてくれたんだ。パン種をつくるまでがとっても大変だったみたいだけど、ブドウだのヨーグルトだのをいろいろ混ぜて研究を繰り返してようやく、私の求めているあのちょっと酸っぱくて、味わい深いパンが出来たのよ。炭水化物大好きな私は、もう嬉しくて泣いちゃった。村で作るチーズも上質だから、パンの応用でピザを焼いてもとっても美味しい。う~ん、幸せだわ。


 そして今日もさくっと妖魔狩りを終えて、クララが夕食の準備を始めた頃、ヴァイツ村から村長さんのところに連絡兵が来た。時々むつかしい書面を持って訪ねてきたりするのよね。帰りに必ず野菜だの肉だのを無心していくから、あまり来てほしくないのだけれど。


「お? 今回はロッテ嬢ちゃんのところに届け物だな。この木箱は、酒じゃないか?」


 村長さんがうちまで届けてくれた木箱は仕上げは粗いけれど、素朴でいい味を出している。アルノルトよりと記されたカードと共に紅いリボンが掛けられているから、この間助けてあげたことのお礼ってことかな。


「あら、屯田村の士官様から贈り物ですか……ロッテ様は、おモテになりますわね」


「そんなんじゃないわ、ちょっと前にオーグルに襲われていたところを、ヴィクトルと私が助けた縁でね……」


 説明しながら木箱を開けると、普通のワインより華奢で、綺麗な瓶が。これはもしや……わくわくしながらラベルを確認する。


「うわっ素敵! アイスワインだわ!」


「アイスワイン……あ、バイエルン特産のっ!」


 侍女の嗜みでお酒に詳しいクララも、グッとこぶしを握り締めて反応する。そう、バイエルンに来たら、これを味わいたかったのよ。


 アイスワイン。それは真冬にカチコチに凍って、糖分が凝縮されたブドウから醸したワイン……とってもとっても甘くて、美味しいの。ロワールでは造っていなかったみたいで、バイエルンから輸入したものすごくお高い一本を、アルフォンス様と一緒にご馳走になったことがあったわね……あ、もうそれは昔のこと、忘れないと。


「これだったら酒精も薄いから、ビアンカやカミルにも、体験させてあげよう? みんなで食事の前に飲むなんて、素敵、楽しみ!」


「そうですわね、それでは食事の支度をする間、出来るだけ冷やしましょう」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「うわっ! 甘い! 美味しいです!」

「ほんとだ! すごく甘い!」

「私も初めて頂きましたが……これは癖になりますわね」

「うん、たまにはこういうのも、いいもんだな」


 その晩のお食事の前に、みんなでアイスワインをいただく。カミルとビアンカは、初アルコールにちょっぴり頬を染めている。クララも幸せそうな表情だ。


「これ、買ったら高いんだよね?」


「ええ、凍ったブドウからは、ほんのちょっとしか果汁が取れません。だからとても貴重なものなのですよ。屯田村の士官さんは、ちょっとご無理をして購ったのでしょうね」


 カミルの疑問に答えたクララが、商店の銘を確認するため贈られた木箱の裏側をあらためる。購った店の格で大体の価格が想像できる。後日返礼をする時に備えてその辺の情報を確認しておくのも、デキる侍女の務めだからね。


「あら? この箱は……」


 クララが戸惑ったような声をあげる。木箱の底が外れかけているのだ。


「え? これは二重底?」


 二重底って、何かを隠すためよね。一体何を?


 そこには、十枚くらいの文書と、私宛の手紙。文書の方は……売買契約書みたいなものとか、何か名前が数十人並んで、それぞれに数字が書き込まれているものとか……ただ事ではなさそうな雰囲気に、私はあわてて手紙の封を切った。


ご愛読ありがとうございます。

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