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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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この村に住む?(2)

「そうか! この村に住んでくれるか!」


 日焼けマッチョの村長さんが、私の手を取らんばかりに喜んでくれている。


「では早速、家の準備をさせよう!」


「あ、それは、大変ありがたいです……」


 結局森じゃなく、村の中に住むことにしたんだ。彼らが私達を引き留める目的は、外敵が迫ってきたときに確実に守ってもらうってことだから、肝心の守り手がそばにいないと不安になるだろうし。それに、もうヴィクトルやクララの魔獣姿は村人達にモロバレしているから、それを隠す意味もないのよね。森の隠れ家は、村人に危険はないけど私達だけが狙われて存在を隠さなければならなくなったときなんかに使おうとみんなで決めたんだ。例の使ってなさそうな炭焼き小屋を自由にしていいって許可も、もちろんもらったよ。


「そこで、君らの暮らしについてだが……村でとれる収穫物の三十分の一を渡すということでどうかな?」


「ええっ! そんな、領主の年貢みたいなマネできません! ダメですっ!」


「村を守ってもらうのだから、それ相応の対価は必要だろう……」


 さんざん押し問答の末、年貢まがいのお給料はなし、ということで納得してもらった。私達だって獣を狩れるしキノコも採れる。それに、妖魔を倒せばシュトローブルのギルドで討伐報酬ももらえる。村の収穫物は、きちんと物々交換でいただくことにしよう。


 それにしても、村長さんがやたらと好待遇を用意してくれるのは、やっぱり妖魔襲撃の脅威が、かなり大きいってことなのよね。それとも……もうちょっと深刻な危険が、あるのかな。


◇◇◇◇◇◇◇◇


(妖魔や害獣の襲撃も立派な理由じゃが……この村には人間が襲ってくるという脅威もあると、妾は思うぞよ)


 当座の宿舎としてあてがわれた村の集会所で、私達が用心棒的に「雇われた」動機を話し合っているうちに、魔剣グルヴェイグがこんなことを言い出した。あ、念話でね。


「何で分かるの?」


(剣気というか闘気というか……人間同士が争った気配が、この村の周囲ところどころに感じられるゆえな)


「それは、盗賊が襲ってくるということ?」


(違うであろうな。ここには盗賊が襲うほどカネになるものがなかろ。妾の思うに……森のはるか東、隣国の者ではないかの?)


「アルテラ帝国の兵隊ということ?」


(おそらくの。そなたはこれまで妖魔に対しては適切な策を講じ、殲滅してきた。戦う相手が人間に変わった時、情を絡めず合理的な思考を維持できるか、どうかじゃの? 妾としては、主に敵対する人間を斬るのは望むところじゃが)


 念話の聞こえていないクララやビアンカにも、おおよその意味は伝わったみたい。にわかに真剣に考えこむ私を、みんなが気づかわしげに見つめる。ルルだけが陽気にその頭を私にこすりつけては、幸せそうにノドを鳴らしていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 グルヴェイグの予想はおおむね当たっていた。翌日村長に尋ねると、彼はあっさりとアルテラの脅威を認めた。


「大軍が通れる街道は軍が厳重に監視しているが、それ以外の国境地帯は警備が手薄な大森林だ。だからアルテラの連中は小規模の騎馬隊を組んで、国境周辺の村を荒らしに来るのさ。一番の標的はこの先の屯田村ヴァイツだが、兵隊がおらず守りの薄いこのルーカスも、度々やられているんだ」


「軍とも戦わねばならないわけですね……」


「ああ、あいつらは妖魔と違って知恵が回る。少人数で素早く接近し、牛を殺し女をさらい『荒らす』目的を果たしたら素早く去る、やりづらい相手だ。なあ、やはり『聖女様』が人間相手に戦うのは、マズいか?」


 恐る恐る、という感じで村長さんが聞いてくる。そうよね、「聖女」なんてごたいそうな称号を聞いてたら、人殺しなんか出来ないと思うわよね。


「安心してください。私達はこの村を守ると決めましたので、この村の人を不当に害する敵に対しては、それが人間であっても戦うことをためらいません。それに……私はもうロワールで、人を殺めてきましたので」


 さすがにその時のことを思い出すと胸に少し痛みが差すけれど、イリアの村で女魔法使いと戦い、殺したことは後悔していない。大事な人達を、守るためだったんだもの。


 しかし、戦いのプロである軍隊の襲撃を防ぐ必要があるとなると、かなりの知恵を絞らねばならないようだ。場合によっては「だまし」も含めて……。


 私はまた、深く考え込むのだった。カミルがさっきから「また姉さんが似合わないことしてる」って眼をしてるんだけど、仕方ないじゃない!


◇◇◇◇◇◇◇◇


 そんなこんなで、ルーカス村での生活は始まった。


 とりあえず村の集会所で仮住まいさせてもらっているけど、ものすごい勢いで私たちの家が建設されているの。まるで農作業や狩りを忘れたかのように、村の男総出、って感じなの。う〜ん、これってやっぱり、「もたもたしてると逃げられちゃうかも?」的なアレかしら。静かな圧力を感じちゃうわね。お願いだから、そんなに急がないで欲しい。


 家造りの指揮は、最初にローラを助けてくれと頼んできたおじさんだ。もう張り切っちゃってたいへん。昼間は作業指揮、夜は部屋割りや内装についてクララととことん打ち合わせ……身体を壊さない程度に抑えて欲しいんだけど。


 家の仕様は、みんなクララにお任せだ……丸投げとも言うわね。だって、きっと私たち家族の生活全般を取り仕切るのは、彼女になっちゃうからね。クララも気合いが入っていて、やれ厨房だ浴室だと、やたら細かく注文をつけて……気がつくと、結構な豪華仕様になってる気がする。いいのかしら。


 そうこうしているうちに大きな、とっても大きなログハウスがどんどん組み上げられていく。使われているのはものすごく立派な丸太なのだけれど、どっちみち開墾でどんどん木を伐り倒しているので、タダ同然なんだって。すっごく重たいはずなんだけど、獣人さんたちが中心になってやぐらを組んでロープで丸太を引き上げて……着々と形になっていく。ヴィクトルとカミルもその腕力を十分に発揮して、もうすっかり村の男性たちに溶け込んじゃってるみたい。巨大なサーベルタイガー姿を見られちゃってるのに、みんな怖がらないのは、不思議だけど、嬉しい。


 クララが内装関係、ヴィクトルとカミルが建設に忙しく動き回っているから、手の空いている私とビアンカで村の見回りだ。ビアンカは狩りに出たいみたいなんだけれど、いくらなんでも女の子を一人で村の外に行かせるわけにはいかないわ。私がついて行っても……足引っ張るだけになっちゃうし。


 そんなわけで、ログハウス建設隊を尻目に、ビアンカと二人で畑や牧草地を歩く。


「土壌は肥えていて水利も良くて、かなり良い収穫が得られているみたいね。妖魔やアルテラ兵の脅威さえなければ、とてもいいスローライフが送れそうなんだけど……」


「居住地はかなり立派な柵に守られていますけど、この広い農地を全部囲うのは難しいですよね……」


「川が近いから水濠を掘るってのも考えたけど、何年がかりになるかわからないわね。やっぱり畑はノーガードにして、逃げ込めるところをしっかり造るしかないのかなあ」


「ええ、村の人には隠れてもらって、その間に私たちが戦うことになるんでしょうね。普通の妖魔だったらヴィクトルお兄さんや私が蹴散らせますけど、大きな軍隊が来たら防ぐのは難しいですね」


そうだ、ここは国境に近い辺境。今は小規模の兵しか送ってこないアルテラが、いきなり侵略の大軍を送ってこない保証は、全くない。


「う〜ん、この先の屯田村である程度足を止めてくれると期待しているけど……何か策を考えておかないといけないわね」


「そこは、お姉さんの担当ですよね!」


 明るく丸投げされてしまった。ビアンカ、見かけによらず凶悪。でも確かに、そこの作戦は、私が考えなきゃね。そう思いながらふと横を見ると、肩に乗っているルルと眼が合った。む、何か、閃いた気がする……うん、きっといける。


 急ににへらにへらと笑い始める私を、ビアンカは残念そうに見ていた。


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