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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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コカトリスの娘(1)

 やがて、虹色に装われた硬い殻の一部が割れて……そこから可愛いくちばしが覗いた。


 私達が見守る中、ヒナは懸命に自らが開けた割れ目を拡げて……やがてそこから可愛いコカトリスのひよこが、ひょっこりと出てきた。まだ全身の羽毛が黄色くて、もふもふしたい欲望がむくむく湧いてくるわね。


(ママ!)


「え?」


 この子は、何を言ってるんだろう。ああ念話だから、言ってるって表現は、不適切か。


「ねえ可愛いひよこちゃん、あなたのママはコカトリスさんなの。これからママのところに連れていってあげるからね」


(ママ! ママ!)


「いや、私、あなたのママじゃないし……」


「これは大変だな……」「うん、お姉さん、やらかしちゃったね……」


 ヴィクトルとカミルが残念なものを見るような眼を私に向けて来るの。え~っ、これって私が、悪いわけ?


◇◇◇◇◇◇◇◇


 森の外れで待っていたお母さんコカトリスのところに連れていっても、ひよこちゃんは私をママ呼ばわりするのをやめなかった。


「ごめんなさい、こんなことになるなんて……」


(いや、こうなるかも知れぬとは、思っておったわ。ヒナは殻を破って外に出て、初めて見た者を母とみなすというからの)


「でも、それじゃあ、本当のお母さんの貴女が……」


(構わぬよ。我の望みは、子が無事に生まれ育ち、幸せに生きること。そなたであれば、我が子を立派に育て、幸せをもたらしてくれるであろうよ)


 ん? 何か、話の流れが変だ。


「え? 私が、この子を育てるのっ?」


(その子がそなたを母とみなしてしまったのだから、仕方あるまいよ。ああ、コカトリスは雑食であるから、生き餌の手配だとか何とか、面倒な心配はせんでもよいぞよ。そなた達の食事を分けてやればよいからの)


「いや、そういう問題ではなくて……」


(む? そなたは我が子が可愛く思えないかえ? コカトリスの子はいやかえ?)


「そんなことないよ! すっごく可愛くて、もふもふしたいし!」


(それでは、決まりじゃの。我が子を末永く、よろしく頼むぞよ)


「うぐぐっ……」


 何か、言い負かされちゃった感。私とコカトリスの念話が聞こえていたカミルとヴィクトルは、ため息をついている。念話の通じない女性陣……クララとビアンカ、そしてマーレも、だいたい流れが読めたみたいで、私にもの言いたげな目を向けて来るの。


 これってやっぱり、私が悪いの??


◇◇◇◇◇◇◇◇


 なにか押し切られたような格好になった私達一行は、とぼとぼと街へ帰る途中だ。


 コカトリスのひよこちゃんは、相変わらず担架に乗せられた私の服の中にもぐり込んで、私のお腹あたりで何やらすりすりしている。ちょっとくすぐったいけど、やわらかい羽毛のもふもふ感が気持ちよくて、とってもあったかい。


「すっかり懐かれたみたいね」


 マーレが切れ長の眼を優しげに細めながら、紅茶色の髪をふわんと揺らす。


「う~ん、これで、良かったのかしら?」


 コカトリス母子の別れは、ごくあっさりしたものだった。母親が子供に頭をこすりつけて、優しい眼を向けて、それでおしまい。あまりに簡単すぎて、見ているこっちが悲しくなってしまった。


「まあ、魔獣の考え方は、人間の親子関係とはちょっと違うかもね。子供を所有するのが目的じゃなくて、子供が幸せになるためには何でもするってのが魔獣だね。だからあのコカトリスは、この子を幸せにするために、必死でロッテに押し付けたんだと思うよ」


「私といるのが、この子の幸せに、なるのかな?」


 ヴィクトルの言葉が、少しだけ罪悪感を薄めてくれたけれど、私はまだちょっと悩んでいる。私が、あの親子が一緒に暮らす幸せな時間を、奪ってしまったのではないかと。


「あのさ、ロッテ。あの母コカトリスは、子供がロッテについていくことが、絶対幸せだって信じて手放したんだよ。だってコカトリスにも、その紫色した美味しいロッテの魔力が、見えるはずだから……君の子供になれば、魔獣にとっては何より欲しいその魔力が、食べ放題ってわけだからね」


「なるほど。この子がロッテ様にひっついて離れないのは、魔力に惹かれている面もあるのですね、それは納得です」


 優しいヴィクトルのフォローに、クララが合いの手を入れてくれる。うん、ありがとう。そうだよね……もう、こうなっちゃったからには、精一杯この子を可愛がって、幸せにしてあげなくちゃ。


「ねえ、ひよこちゃん、私の子供に、なる?」


(ママっ! ママっ!)


 何気なく呼び掛けたのに、どうも私の言っている意味が、わかっているらしい。コカトリスは賢い魔獣だというけど、ちょっと知性の成長が、早すぎる気もする。


 その謎を解いてくれたのは、ヴィクトルだ。


「君の魔力は、カミルを竜として覚醒させたんだろ? だったら、コカトリスの子供を異常な速さで成長させるくらい、わけないんじゃないか?」


 あ、そうか。すっかり忘れていたけど、私の魔力には、そんな効果があったんだった。う~ん、これでいいのかなあ。私の魔力、この子に悪い影響、与えちゃわないかな?


「大丈夫だよロッテ。君の力は、獣を幸せにする力なんだから」


 口に出したわけでもないのに、なぜか私の疑問に答えてくれるヴィクトル。虎の姿の時ならともかく、人型でいるこんな時にも、心のつぶやきが通じちゃうのは、不思議よね? 


 ふふっ、まあいいわ。私はひよこちゃんが愛おしくなって、その背中の羽毛を、ゆっくり撫でてあげる。


「ロッテお姉さん、この子に名前を付けてあげないといけないのでは?」


 私がひよこちゃんにデレる姿をじ~っと見ていたビアンカが、控えめに提案する。そうだね、この子ももう家族なんだ、いい名前を付けてあげないと。


「う~ん、バイエルン風の名前がいいよね? 女の子だしなあ……う~ん、いい名前が思いつかない……」


「……ルル、がいいわ」


 ぼそっと、マーレがつぶやいた。うん、それ、響きが可愛い。


「ねえひよこちゃん、あなたの名前、ルルでいい?」


(ルルっ! ルルっ!)


 弾むような念話が伝わってくる。名前をもらってよろこんでくれてるのかな、嬉しさ余ってなのか、私の服の中で暴れまわるのは、やめて欲しいんだけど。



ご愛読ありがとうございます。

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