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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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ロワール脱出

第三部開始です。

 眼の前には、青々とした水がゆったりと流れる大河。


(この河が、人間がいうところの、ロワールとバイエルンの境界だよ)


 ヴィクトルが念話を伝えてくる。


「うわぁ……大きくて、綺麗な河ね」


「本当ですわね、こんな大河は、初めて見ましたわ」


 リモージュ家を出た時より少し伸びたグレーの髪を手ぐしでかき上げながら、眼を細めるクララ。思わず引き寄せられそうな翡翠の瞳……クール系の容貌と併せてみれば、まるでお人形みたい。おっきくてとがったケモ耳を除けばね。


「この河、泳いで渡るのかい?」


 心地よいハイトーンは、カミルだ。癖のある赤毛に、綺麗なあごの線と小顔、桜色の頬に、切れ長でブラウンの眼……本当に綺麗な男の子よね。放っておいたら五年後には、いっぱい女の子を泣かせるようになるんじゃないかしら。


「えっ、私達はともかく、ロッテお姉さんは普通の女の子なんだから、ちょっと泳ぎ切るのが難しいんじゃ?」


 ビアンカが控えめに反対の意を唱えながら首をかしげると、柔らかそうな亜麻色の髪がふわっと揺れる。少し外側が下がったおっきなエメラルドの眼は優し気に細められ、その丸っこいケモ耳がぴこぴこ動いていて、とっても可愛い。そのほんわかした表情を見ていると、こっちまで微笑みがこぼれちゃうわ。


(うん、獣人ならともかく、普通の人間がこの大河を泳ぎ渡るのは危険だね。まあ、ロッテ位なら、背中に乗せて運んであげられるけど……荷物を濡らしたくないだろう?)


「じゃあどうするの、ヴィクトル兄さん?」


 私とカミルは、魔獣の念話を聞き取ることが出来る。獣化していない時のクララとビアンカには聞こえないから、私が通訳してあげる必要があるのだけど。


(かなり下流の街道に出れば、橋があるみたいなんだけどそこには当然関所があるし、ロッテはお尋ね者みたいだしなあ。そうなると、渡し船に頼るしかないかな)


「もちろん、せっかくここまで逃げてこられたのに、わざわざ捕まりたくはないわ。渡し船は、近くから出ているの?」


(うん、ちょっとだけ下流にね。俺は使ったことはないけど……ちょっと怪しい雰囲気があった記憶があるから、注意していこうか)


「怪しい・・って何?」


◇◇◇◇◇◇◇◇


 一時間後。


 魔獣姿のまま渡し船に乗るわけにもいかないから、ヴィクトルは人化している。彼に積んでた荷物を全員で分け持って……私の荷物だけは重さ控えめだけどね……森の中の間道に出た。こんな辺境の森にどうして道があるんだろうと不思議に思うけれど、一応は踏み跡が付いているし、ごく少ないけど通る人がいるらしいわ。


 その間道の先には、確かに渡しに使うらしい、桟橋があった。船は無いけど、桟橋の上に紐を引っ張って鳴らすタイプの、大きなベルが取り付けられている。ヴィクトルが迷わずベルを鳴らすと、びっくりするくらい大きな音が出て、対岸にある小屋から男が四人出てきた。棹さして動かすタイプの船を二艘、彼らが出すのが見える。


「なるほど、ああやって客を待っていたのですね」


 徐々に近づいてくる船を珍しそうに見ながらクララがつぶやく。だけど、私は違和感を覚えていた。


「やっぱり、この『渡し』は何か変ね。そもそも人里離れたこんな森の中の間道を通ってくる客なんて、やっぱり、何か訳アリの人ばっかりよね。つまりは……」


「盗賊御用達、または自身が盗賊に変貌するってことでしょうか?」


 うん、やっぱりその線、強そうだよね。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 船を桟橋に着けて、四人の粗野な男達が私達に近づいてくる。


「あ、あの。向こう岸まで私達を渡して欲しいんですけど」


 ちょっと怖いので、ちょっとつっかえながらお願いする私。


「ほ~。これは珍しい、こんな間道を若い娘や子供が行くとはな。どうせロクな事情がないんだろうが、客は客だ。但し、渡し賃は高いぜ」


 肩にも胸にも筋肉が隆々と盛り上がって、陽に焼けて無精ひげを生やした男が顔を近づけて私の顔をのぞき込んで来る。歯をちゃんと磨いてないらしくて、吐く息が臭いわ。


「はい、それで、おいくらなんでしょうか?」


「五人か。十エキユで何とかしよう」


 たっか! だって、街で働く若い事務員の給金、三ケ月ぶんくらいだよ。


「私達の路銀も豊かではありませんので、五エキユでお願いできないでしょうか・・」


 こないだ盗賊団を潰滅させたときにたっぷりマルク金貨を頂戴してきているので、実を言えばおカネはたっぷりあるんだけれど、明らかに足元を見られている感じなので、ほんの少しだけ抵抗してみる。


「何だとぉ!」


 連れの太った男が凄んでくると、ヴィクトルが私の前にすっと身体を入れて盾になってくれる。長身のヴィクトルが上から睨むと、相手もすこし怯んだみたい。


「まあ、これは商売だからな、穏やかにやろうぜ。そういうことなら俺達もまるっきり悪魔というわけじゃねえ、大サービスで八エキユにしてやろう。これが限界だぜ、さあ乗るのか、乗らねえのか?」


 最初に声を掛けてきた臭い男が、値引きに応じて来る。値引いたと言ってもそれでも二ケ月ぶん以上の給金だけど……他に選択肢はない。


「はい、お願いします」


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