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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー
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二人キャンプ

 眠くなるまで二人きり、いろんな話をした。


 リモージュ伯爵邸にいるときは、私がバタバタと忙しかったせいか、こんなにじっくりクレールと語り合ったことはなかった。こうやって距離をつめてしゃべれば、お互い年頃の女の子だ、話も弾むわ。


「それにしても、あの第二王子……アルフォンス殿下にはがっかりですわ。婚約者であるシャルロット様を全然かばってくださらなかったなんて」


「まあ、王族と言う立場上、教会と対立するわけにはいかないし、仕方なかったのかなと思ってるわ……。もともと殿下も、私を見初めて婚約したっていうわけじゃなくて、姉上を除いた余り物聖女の中から、王様の命令で無理やり相手を選ばされただけだからね」


 そうなんだよね。ロワール王族の男子は強い魔力を持つ子供を欲して、好んで聖女を娶るのだ。


 そして当代聖女八名の中で、能力も容姿も、そして教養や作法その他……どれをとってもレイモンド姉様が、だんとつのナンバーワンだった。その唯一輝くオンリーワンを第一王子殿下に持っていかれた「残り物」の中で、比較的「まし」だったのが私、ということだったのだから。


 アルフォンス様も本当は姉様に憧れていたのでしょうから、美味しいものを当然のようにすべて持っていく兄殿下に不満があったのでしょうね。それもあってかアルフォンス様の私に対する態度は、会話やデートを楽しみつつも、それ以上踏み込んでこようとはされないものだった。二年も婚約していて、キスもまだだったのよ……もう少し深くお互いを知りたかったんだけどね。


「まあ、それがわかっているから、捨てられた私としても悲しくも切なくもないわけよ」


「シャルロット様が割り切っておられるのでしたら、良いのですけど……」


「さすがに、求婚して頂いた時にひざまずかれて手をとられたら、不覚にもドキドキしてしまったわけなんだけど……何しろ殿下は、超絶イケメンだからね。まあそれは私の黒歴史の一つと言うことで、忘れたいわ」


「シャルロット様はお綺麗で魔力もすばらしいのですから、必ず良い殿方が現れますわ」


「ありがと。ねえ、クレールはどうなの? 結婚はしたいでしょう?」


「私は、シャルロット様についていきたい、それが優先順位一番ですから。でも、結婚に憧れはありますね……」


「お相手は、人間でも獣人でも、こだわらないの?」


「そこはどっちでもいいですね。誠実で私を裏切らない相手なら、どんな方でも。あ、でもそうなると、獣人のほうが一途な人が多いから、そっちの方がいいのかな……」


「うん、私もそうかな。今度は、裏切らない相手を選ばないとね。そうすると私も獣人、いっそ魔獣とくっついちゃおうかな?」


「シャルロット様! 魔獣まで行くと大胆すぎるので、やめましょう!」


「うふふ」


 この時は、ほんの冗談のつもりだったんだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 やっばい……野宿っていうか、「ふたりキャンプ」って、ものすごく楽しいかも。


 聖女の仕事でもやむを得ず野営を何度もしたけれど、その時はなんぎに感じただけだった。う〜ん、何が違うんだろう……やっぱり気を許せるクレールと、二人切りでいるからだよね。


 あれから何やかや片づけて……少しは手伝ったわよ。寝る前に身体を拭くのだけど、ここにきてもクレールは侍女モード全開で、私がいいというのに、ぬるま湯を含ませた布で私の全身を、隅々まできれいにしてくれた。ちょっと気恥ずかしいかな。お返しに私もクレールを洗わせて、って言ったらきっぱり拒絶されて、とっても残念。いつか復讐して恥ずかしがらせてあげるわ。


「さあ、寝ますから火を消しましょうね」


「あれ? 火を絶やさないように交代で不寝番をするとかじゃないの?」


「ああ、人間の野営だったらそうしますよね。でも私は、獣人なので」


「獣人だったら見張りは要らないの?」


「シャルロット様、狼が寝るときに、不寝番を立てるとか、聞いたことないでしょう?」


 そういわれれば、確かにそうだ。なんでもクレールは、寝ていても何かが近づいてくれば、気配を感じることが出来るのだという。さすが魔狼の血だ、尊敬してしまう。


「なんか、クレールになにからなにまで頼り切りで、申し訳ないな」


 狭い簡易テントの中で、クレールと二人寄り添って仰向けに寝転んで、私はつぶやいた。


「いいんです、私はこうしたくて、シャルロット様についてきたんですから。でも、そこまで仰るんだったら、少しだけ……ご褒美を頂いても、よろしいでしょうか?」


「ご褒美? あげたいけど、女の子が喜ぶようなものは、みんなリモージュ邸に置いてきてしまっていて……」


「違います」


 クレールはそう言って私の身体を優しくころんと横向きにすると、自分も同じように横向きになって、背中からぎゅっと抱き締めてきた。


「クレール?」


「これがご褒美です。シャルロット様とこうやって家族のように寄り添うことが、私の夢でしたから」


「クレール……」


 やばい、また涙出てきた。


「クレールって、あったかいね……」


「シャルロット様の素肌はひんやりもっちりしてて、気持ちいいです……」


 ちょっとだけ恥ずかしいけれど、ホントに気持ちいい、落ち着く……。私は心地よい疲れもあって、いつしか眠りに落ちて行った。



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