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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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獣人少年を助けて

 ビアンカは少年の頭を抱いて、その緑の眼からとめどなく涙を流している。少年は手足すら動かせない有様だが、少女の声を聞いて薄く眼を開いたように見える。良かった、生きているみたいだ。


「うぁ……」


「カミル、カミルっ!」


 ビアンカが少年を揺するけど、うめき声以上の反応はない。


「ビアンカ、頭に怪我をしてるのだから、ゆすってはだめ。静かに支えていて……お姉さんの力で、どこまで治せるか、試してみるわ」


「あ、お姉さんは、聖女なのですよね! 聖女の力で、カミルを助けて、お願いっ!」


「力の及ぶ限り、やるわ。見ててね」


 もう一回、聖女の杖に精神力を流し込む。もう、雷光の神聖魔法を五連発とか、こんなに聖女の力を派手に使ったのは初めてで……実はもうヘロヘロなんだけど、ここでへばっては、台無しだ。この少年を助けるためだけに、ここに来たんだからね。


「我に力を与えたまえ、この者の傷を癒したまえ!」


 杖で練った力を溜めた右手を、少年の頭上にかざす。私の手から薄青いオーラが彼の額に向かってすぅっと流れると、眉のあたりの切り傷は一瞬で綺麗に直ったけれど、腫れは引かないし、混濁した意識も戻らない。多分、これだけ酷く殴られていたら、頭の内部でも出血しているはずよね。追放される前は精々腹痛程度しか直せなかった私の神聖治癒魔法では、これが限界かも。


「カミル……カミルっ!」


 ビアンカの悲愴な叫びに、無駄かもと思いながらもう一度杖に精神力を注ぎ込む。だけど私も、正直限界だ。そして右手をカミルの頭に……とにかくこの辺の内出血が一番危ないからね……かざそうとした時。後ろからクララの冷静な声がした。


「ロッテ様、『聖女の力』などお使いにならなくても。この子は獣人でしょう、ロッテ様の『美味しい魔力』を分けてあげれば、よいのでは?」


「え? この子も獣人なの? ケモ耳もないし、もふもふの尻尾もないよ?」


 疑問の声を上げる私の手をゆっくりとビアンカがとって、少年の頭に押し付ける。そしたらゴリっとした突起が、そこに感じられた。あら? これって小さいけど、角……よね。


「お分かりになりましたかロッテ様。ですから私を癒していただいた時と同じつもりで、この子に接してください」


「と言われても……クララは女の子だからあんなことしても平気だったけど、この子は小さくても、男の子だから!」


 そう、クララを治すときにはお互い素肌になってぴったりと触れ合うことで、私の力を伝えたのだ。この子……カミルは十歳くらいだけど、ちゃんと男の子だし、肌を触れ合わせるとか、恥ずかしいよ。


「何も裸になる必要はありませんよロッテ様。とにかく、貴女様の愛でこの子を包んであげればいいのです。それじゃビアンカ、手伝って。そこの小屋の軒先にこれを敷いて、一緒にカミル君……だっけ、運ぶよ?」


「は、はいっ!」


 てきぱきと準備を整えるクララに、逃げ場を奪われてしまった私は、横向きに寝かされたカミルの後ろに、同じように横になった。そして彼の背中に私の胸をくっつけるようにして、身体に手を回した。大丈夫だよね、クララの時と違って服は着てるし、私そんなに胸大きくないから、カミルがえっちに思うことはないよね。 


 あ、そんなことを考えている時では、ないんだった。ビアンカがすがるような眼で私を見ている。この子の弟を……まあ血はつながってないんだろうけど……救えるのは私しかいないんだから、集中しないと。カミルの身体をぎゅっと抱き締めて、胸の中で祈る。


 お願い……私の力をあげるから、元気になって。


 クララにそうした時と同じように、私の中から何かがカミルに向かって流れていくわ。だけどクララの時と大きく違うのは、「流れていく何か」の量が、ケタ違いに多いことだった。流れていくというより、一気に引っこ抜かれていくような感覚。うわ、ヤバい……瞬く間に、気が遠くなっていく。


「ロッテ様! 大丈夫ですかっ!」


 魔力の流れが見えるというクララが、流れる量の大きさに驚いて声を上げる。だけど私はそれに応えることもできず、瞬く間に意識を手放してしまったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 次に眼を開けたら、目に飛び込んできたものは小屋の天井だった。


 窓から、陽光が射し込んでいる。あら? さっきまで夜だったかと思っていたけど、もしかして私、朝までぐっすり寝ちゃったのかな。


「気が付かれましたのね、良かった……まったくお目覚めにならなかったので、さすがに心配しましたわ。呼吸が規則正しかったので、深刻なものでないとは思っていましたが……」


 少し疲れた声のクララ。


「あの……クララ? もしかして一晩中、ついていてくれたのかな?」


「ええ。私は、ロッテ様の侍女ですから。ロッテ様のお世話をすることが務めですわ」


「……ごめん。昨日は狼姿に変化してあれだけ激しく戦ったんだし、クララだってすごく疲れているはずなのに」


「ふふっ。ありがとうございます、ロッテ様はお優しいですね。私は魔獣の血を半分引いてていますから、二、三日眠らなくても平気なのですよ。」


「だけど、クララも女の子なんだから、ちゃんと寝ないと……お肌に悪いわよ?」


「あら、そうですね。では、お世話が済んだら、少し休ませていただきます。何か召しあがりますよね。それから……あの子たちを呼んできますわ」


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