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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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ハルシュタットの新戦力

「ロッテお姉さん!」


 私の手をがしっと握り込んでぶんぶん振り回すカミル。ちょっと前だったらハグしてくる場面だけれど、すっかり身体も大人になったし、ヴィクトルとの微妙な関係もあって、さすがに彼も遠慮しているらしい。それでもつかんだ手からものすごい勢いで私の紫色した魔力が流れていくのを感じる。


 シュトローブルでのあれやこれや準備や打ち合わせが一息ついて、久しぶり……本当に久しぶりに、私はハルシュタット領に訪れている。う~ん、よく考えると私にとってはこっちが本領なのよね。もう少し頻繁に来たいのだけれど、アルテラ侵攻に備える今は、これが精一杯だ。


「カミル、また大きくなったんじゃない?」


 そうなのだ。カミルの視線はもうすっかり私が見上げる高さになっていて、巨体のヴィクトルよりちょっとだけ低いくらいまでに背が伸びている。以前は抜けるのかどうか心配するくらいだった大剣も、すっかり身体にフィットしてきたみたいだ。


「うん、もうすっかり成体になった感じだね。身長の伸びに筋肉が追いつかないから、毎日一生懸命鍛えているところなんだ」


 確かに、すらっとして華奢な感じを受けるけれど、その腕や肩には一目でわかるほどしなやかな筋肉がついている。覚醒後の竜が一気に成長するってのは、本当なんだなあ。


 私が感心しながら彼の身体を鑑賞していたら、なんだかカミルの頬が紅く染まる。あ、ちょっと私、男性の身体を不躾に見つめすぎていた、これは反省。


「子爵様、お帰りなさい。いろいろ大変だったようですが、こちらは万事順調ですよ」


 そう声を掛けられて振り向くと、そこには代官としてハルシュタット領を治めて頂いている賢者ディートハルト様が。その手にはクリスティアーナと名づけられた赤ちゃんが抱かれている。


「子爵とか言われると落ち着かないです、ロッテとお呼びください……あ、ヴィオラさんは?」


「それでは……ロッテ様。ええ、ヴィオラは虎型になって、ハルシュタットに越してきた群れの引継ぎをやっていますよ」


「引継ぎって?」


「それはもう、シュトローブルへ戻るからに決まっているからじゃありませんか。私の魔法はアルテラとの戦いに、必ずお役に立ちますよ。ヴィオラとクリスタはこっちに残るようにと言ったのですがね、絶対ついていくと聞かなくて……」


 あらあら、相変わらずお熱いことで。なんだかのろけられちゃっただけのような気もするけど、ディートハルト様だけじゃなく、ヴィオラさんも来てくれるのは心強いな。


「引継ぎと言えば、肝心の代官職の引継ぎの方はどんな感じですか?」


「そう、それですよ! ロッテ様、貴女はとんでもない人を送り込んできたんですね!」


 それって王都で採用した、ホルスト様のことだよね。元部下の獣人たちを引き連れて早速ハルシュタットに向かったって聞いてたけど、ディートハルト様がトンでもないっておっしゃるなら、ハズレだったのだろうか。悪い人には、見えなかったけど。


「ダメでしたか?」


「その逆です! 何ですかあの人は。ほんの一週間ほど引継ぎをやっただけなのに、もうすっかり領地経営を把握してしまったのですよ。まるでここの領主を十年くらいやっていたかのようにね」


 あ、そんなに優秀だったんだ。まあ、長年領地経営をなさっていたのだから、ハルシュタット特有の事情さえ理解してしまえば、あとは応用……という風になるのかな。


「じゃ、ホルスト様は、合格ですの?」


「合格なんてかわいいもんじゃないです。もう彼さえいれば、ハルシュタット領に私は不要ですよ。その証拠にたった今、私がこうしてのんびり子守をしていられるわけじゃないですか」


 うん、そう言われると、確かに説得力があるわ。まだお昼前なのに、ディートハルト様は目尻を下げて、愛娘をデレデレと見つめているのですもの。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 城の応接にいざなわれてお茶など振舞われる。隣領といえどそれなりの距離を移動してきたんだ、ちょっと疲れた身体に、紅茶の香りがとっても心地よくしみこむ。


「あれ? 何かすごく、お茶が美味しくなったような?」

「そうですね、私にもわかります」


 私とビアンカが異口同音に風味を褒める。うん、それほど贅沢な茶葉ではないけれど……淹れ方の手練が特別なんだ。お茶を用意してくれていた女性を感心して見ていた私に、ディートハルト様が嬉しそうに紹介してくれた。


「フリーダさんだ、ホルスト殿と一緒にノルトハウゼン領から来てくれたんだよ」


 軽く膝を曲げて挨拶してくれる落ち着いた女性、三十歳前後かしら? きちんと結い上げられた綺麗な銀髪と、同じく銀の瞳が印象に残る人だ。そして頭の上にはやっぱり銀色で、大きめの狐っぽいケモ耳が。切れ長で目尻がちょっと上がった眼が優し気に細められる。


「領主様、お初にお目にかかります。フリーダと申しますわ」


「ああ、ホルスト様がおっしゃっていた、副メイド長さん。来てくださったのね」


「このたびは、失職するところを拾って頂いて、感謝いたしておりますわ。わが主とともに、ハルシュタット領と領主様のため、尽くさせていただきます」


 ふと気づいて周囲を見回すと、以前は陰鬱だった応接の雰囲気が、明るくポジティヴな感じに変わっている気がする。調度品なんかは以前と同じだけど、配置や掛けるクロスなんかを変えることで雰囲気をぐっと私好みに変えてくれているのよね。それを指摘すると、彼女はふんわりと微笑んだ。


「お気づきになっていただけて嬉しいです。領主様がお若い女性だとお聞きしておりましたので、僭越ながら変えてみましたの。お気に召したのなら光栄ですわ」


 なんでもホルストさんの弟君であるノルトハウゼンの新しい主様は、そういうことにまったく関心がなかったそうで、おまけに強烈な獣人嫌いだったのだそうだ。もったいない話よね。まあ、そのお陰でうちの領に来てもらえたんだから、ある意味感謝しないといけないのかな?



ご愛読ありがとうございます!

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