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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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ヴァイツ基地の陥落

「ヴァイツ村の前線基地が……陥落しただと?」


 先行してきた騎馬兵達に応対した村長が、信じられないという表情をする。そう、ヴァイツ村はアルテラに対する最前線基地。千人を超える国軍正規兵が駐留していたはずだ。


「うむ……我々は残念ながら敗北した。アルテラ兵が勝ちに乗じ、この村にも押し寄せる可能性がある、それもここ一両日のうちに」


 悲痛な面持ちで敗退を告げるのは、確か基地の副司令官様……私達が「保護税」とやらを納めに行った時に立ち会っていた人ね。


「何を言っているのだッ! これは戦略的転進である。敗退ではないッ!」


 みっともない金切り声を張り上げるのは、あの時見た基地司令官だ。相変わらず額が脂でてかてか光って、気持ち悪い。


 あなたはそう言うけど、最前線基地を放り出して撤退して来るって、立派な敗戦でしょ。副司令官の表情にも怒りが浮かぶけど、何も言わない。そうだ、副司令は何やら弱みを握られて従わされているって、アルノルトさんが教えてくれたっけ。


「ヴァイツ村には兵士以外の民が、数百人いたはずですが?」


 もはや村長もおかしな司令官の相手をせず、話が通じる副司令に向かって民間人達の安否を尋ねる。そうよね、そこが心配だわ。


「残念ながら住民を安全に避難させることが出来なかった。彼らは散り散りに逃げたが、半数以上は捕らえられるか殺されたようだ……」


「住民などどうでもよいッ!」


 副司令の声は沈痛だ。おっかぶせるように司令官が眼を吊り上げて騒ぎ立てるけれど、もう誰も彼の話は聞いていない。


「敵の勢力は……?」


「基地を襲った勢力は千数百……というところだったが、この村を襲ってくるのは千人程度だろうと思う」


「千人……」


 予想を超える相手の大兵力に、絶望感を声にする村長。だって、村の総人口より多いのですもの。


「我々の現有兵力では支えきれない。この村の住民は、早々にシュトローブルに向け避難する準備を……」


「確かにそうですな……すぐ準備を致しましょう」


 精強で知られるアルテラ兵が千人……確かに、逃げた方が安全ね。副司令の指示に村長が動きかけた時、また司令官の不愉快な甲高い声が響いた。


「ならぬならぬッ! 残兵五百は、この村でアルテラ兵を食い止めるのだッ!」


 そうか、残兵五百ということは、ヴァイツ村に駐留していた兵のうち、半数はもう失われたってことか。ねえ司令官様、それは敗戦どころか、惨敗でしょ。


「敵は戦力においても士気においても我々をはるかに上回っております。ここで立ち向かうよりも、一旦住民と共にシュトローブルに退き、街の守備兵と力を合わせ、その城壁も十分に利用して戦うべきかと……」


「これは命令であるッ! できるかどうか聞いているのではない、やるのだッ!」


「司令は、この村で玉砕なされるおつもりですか?」


「私はシュトローブルに急行して仔細を報告し、体勢を立て直す。貴様が残兵の士気をとり、この村でアルテラ兵を防ぐのだ、わかったかッ!」


 え? それって、自分だけが安全な城壁の中に逃げ込むために、逃げる時間を部下に稼がせるってやつだよね? こいつ、ホントにサイテーだわ。副司令様はしばらく頬の筋肉を痙攣させていたけれど、やがて言葉を絞り出した。


「ご命令、承りました。では、住民を先に退去させ……」


「バカ者ッ! 住民を義勇軍として編成し、敵の戦力を可能な限り削るのだッ!」


「そんな無体な……」


「相談しているのではないぞ、命令しているのだッ! いいなッ!」


 そう言い捨てるなり司令官と数人の取り巻きは、さっさとシュトローブルに向かって馬で逃げ出していった。残された副司令様は、蒼白な顔色で立ち尽くしている。


「副司令官様……我々は……?」


 村長が、恐る恐る尋ねる。さっきの「命令」は、住民に全滅せよと言っていることに等しい。素人の住民が義勇兵なんかになったとしても役には立たない、せいぜい肉壁ってところよね。そもそも「義勇兵」って、自ら進んで志願した人をいうわけでしょ、あの司令官、絶対頭おかしいよ。


「うむ……我々正規軍は上官の命令に従わざるを得んから、ここで戦うしかない。しかし住民に同じことを要求することは、明らかに不当だ。村長は住民の避難準備を進め、できるだけ早くシュトローブルに落ちのびるのだ。命令違反の罪は私が引き受けることになろうが、どのみちこの兵力では生き延びることが難しいからな。皆が逃げるのに必要な時間を、どれだけ稼げるか微妙だが……」


「副司令様……」


「我々に構わず、逃げのびるのだ。アルテラ軍は全てを略奪していく。住民の処遇は奴隷にされるか、殺されるかしかない……早くせよ」


いつも読んで頂きありがとうございます。

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