表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/167

謝りたいこと

 突然のノックに私は、一瞬マリアが戻ってきたのかと思う。

 しかし、すぐに私はその考えを否定した。

 マリアなら、ノックしてすぐに挨拶してくれるはずだ。

 しかし、少し待っても返事が返ってくることはない。

 それは明らかに、訪ねてきた人間がマリアでないことを物語っていて……だったら一体誰が訪ねてきたのだろうか。


 ようやく声がかえってきたのは、それから少ししてからだった。


「……サーシャリア、セインだ。少しいいか?」


 訪ねてきた人間の正体を理解した私は、その瞬間思わず失笑していた。

 なるほど、道理でノックから挨拶まで時間があったわけだと。

 セインに苦手に思われている自覚のある私は、苦笑しつつ口を開く。


「ええ、大丈夫よ。入ってきて」


 そう告げてから少しして、遠慮がちに扉が開かれる。

 そして露わになったのは、気の乗らない表情をしたセインだった。


 その表情に、私はさらに苦笑しそうになる。

 そう露骨にいやがられる原因が理解できていたからこそ。

 実は生徒会時代に私は、セインのソシリアへの思いを徹底的に煽ったことがあった。

 もちろんそれは悪意からの行動ではない。

 その当時、セインは身分違いを理由に、自身の思いを隠し通そうとしていた。

 その心に気づいた私は、セインに発破をかける意味で煽っていたつもりだった。


 とはいえ、理由があったとしてもセインがそういうことを苦手とすることを私は知っていた。

 それ故にこう警戒されても仕方ないことだと私は理解していた。


 ……特に、ソシリアとアルフォードが婚約した今、気まずさもあるに違いない。


 しかし、そのことを理解しながら、それでもこのことについてセインと話したいと思っていた。

 すべては、きちんとセインに謝罪するために。

 前回きたときにも、このことについて謝罪しようとしていたのだが、躊躇してしまった。

 そして、その間にセインが去ってしまったことで、きちんと謝罪できなかったのだ。

 だから今回はその前に、そう覚悟を決めて私は口を開く。


「……用件を聞く前に少し、アルフォードとソシリアの婚約について、少しいい?」


 卑怯なことをしているという自覚に、罪悪感を覚える。

 しかし、セインの返答は想像もしていないものだった。


「ああ。俺もそのことについて話をしにきた」

次回からセイン視点となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ