彼らの到来 (マリア視点)
突然現れたソシリア様。
その姿に私は、一瞬助けに来てくれたのかと思う。
……しかし、ソシリア様の背後にたつ二人組に気づいたとき、私は自身の考えがはずれたことを悟った。
私に気づいたその背後の二人は、私へと朗らかな様子で手を振ってくる。
「ひさしぶりだな、マリア」
「元気にしてた?」
瞬間、私はその場にひざまずいていた。
以前までのように。
「お久しぶりです、マルク様、リーリア様」
「そう堅苦しくなくていい」
「そうよ、貴女はもう私たちの傘下じゃなく、王宮の人間でしょう」
「は、はい」
そう促されて、私は立ち上がる。
しかし、会うことが久しぶりであること……そして何よりお二人の持つ雰囲気に私は畏怖せずには居られない。
それだけの何かを、辺境の第一線で動き続けてきたお二人は有していた。
もちろん、アルフォード様やソシリア様の方が立場も上で、ただならぬ人間と私は知っている。
実際に、お二人は間違いなく優秀だ。
だが、マルク様とリーリア様が持っているのは、それとは別格の何かだった。
それを感じ取れるが故に、緊張せずにはいられない私に、お二人は苦笑する。
「まあ、久しぶりだものね」
「そうだな。また、ゆっくり話そう」
それでもお二人から優しげ表情でそう言ってくれる。
「は、はい!」
そのお二人の厚意に、私はただ恐縮することしかできなかった。
そんな私に頷いた後、マルク様は私の背後……アルフォード様へと目を向ける。
それにつられるように、私も向き直り。
そして、そこにたっていたアルフォード様の姿に、小さく息を呑んだ。
「待たせた」
「ああ、待っていたぞ」
マルク様と会話を交わすアルフォード様。
その姿は、いつもの優しげな姿と少し違った。
アルフォード様の姿は、一切変わっていない。
整った顔も、気の抜けるような執事服も同じまま。
……だけど、アルフォード様の表情からはまるで能面のように表情が消えており、まるで別人が現れたような錯覚に陥る。
驚愕している私に気づくことなくアルフォード様は、会話を続ける。
「サーシャリアに挨拶するんだろう?」
「ええ、サーシャリアに会うのも久しぶりだしね」
「……俺たちもサーシャリアには謝らないといけないしな」
「分かった。その後でいから、情報交換だ。いつもの部屋で待っている」
それだけ言うと、アルフォード様は私の方に向き直る。
その時のアルフォード様は、先ほどの緊迫した雰囲気が嘘のように穏やかな表情だった。
それは、私が今まで見ていた表情そのもの。
……にもかかわらず、私はその表情がいつもと違うように感じてならなかった。
「少し予定ができてしまった。サーシャリアにそのことの報告を頼んでいいか?」
「は、はい」
「助かる」
私が何とか言葉を絞り出すと、それだけ告げてアルフォード様はすぐに、どこかへと歩き出す。
……その背中を、私は呆然と見送ることしかできなかった。




