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部屋で待つもの (アルフォード視点)

「……よしっ! ふふ、やったぞ!」


 サーシャリアの部屋を後にして自室に戻った俺は、一人拳を握りしめていた。

 我ながら、緩みきった笑みが顔に浮かんでいるのも分かる。


 ……しかし、そんなことさえどうでも良くなるような興奮の中に俺はいた。


「……初めて食べてくれた」


 その瞬間の感触を思い出すように、自身の手を見つめながら俺は呟く。

 思えば、今までいったい何度挑戦して、サーシャリアに断れていただろうか。

 ようやく、ようやく自分のアピールが身を結んでいるんではないか、その予感に俺は強く拳を握りしめる。


 そこまで考えて、俺は首を横に振った。


「いや、まだ慢心はいけない」


 今回、サーシャリアは大人しく食べてくれた。

 しかしそれが、看病という名目があってのことだと、俺は理解していた。


「とりあえず今は、このまま株をあげることを意識しないと……」


 そう言いつつ、俺は自身の顔に手を当てる。

 思い出すのは、サーシャリアがやってきてから、ソシリアに言われた言葉。


 ──アルフォード、貴方サーシャリアが来てから気持ち悪いくらい顔緩んでいるわよ。


「……もうちょっと顔を締めないとな」


 サーシャリアにも笑顔になりすぎると指摘された俺は、まじめに対処法を考える。


「もうこんな時間か……」


 ソシリアとの待ち合わせの時間が近づいていることに俺が気づいたのは、その時だった。

 想像以上に、考えることに没頭していたようだと思いながら、俺はゆっくりと立ち上がる。


「今回の待ち合わせは、あの部屋か。急ごう」


 実のところ、俺とソシリアはサーシャリアが来た時から、毎日のように話し合っていた。

 そう、伯爵家の対処について。

 そしてそろそろ、その話し合いも固まりつつある。


「そろそろ、マルク達が来る頃か。それについても、ソシリアと話を合わせておかないと」


 そう言いながら俺はソシリアの待つ部屋へと歩き出す。

 ……だが、その部屋に入った瞬間、俺を待っていたのは、俺の想像もしない光景だった。


「あら、やっときたのね。ヘタレ王子」


「フシュー!」


 冷ややかな目でこちらを見てくるソシリアと、見るからに激怒したお盆を装備したメイド。


「……は?」


 その光景に、俺は呆然と声を上げることしかできなかった。

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