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アルフォードの変化

「そうか。そう言ってくれると俺も嬉しい」


 私の気持ちなど知らず、アルフォードは楽しげに笑う。

 その表情に心臓が高鳴るのに気づきながら、私は告げる。


「あらこんなことで喜んでくれるなら、私も嬉しいわ」


 そう平静を装いながらも、私は豊かになったアルフォードの表情を意識せずにはいられなかった。

 本当に以前とは比べものにならないほどに、アルフォードは笑うようになった。

 そして、その変化の理由として考えられるのは一つだけ。


 ……ソシリアとの婚約が、これほどまでにアルフォードを変えたのだろうと。


 高鳴っていたはずの心臓に、痛みが走る。

 それを無視して、私はアルフォードに告げる。


「でも、そんなに軽々しく笑顔を見せたらだめ。相手の子を勘違いさせるわよ」


「……ん? 俺は笑っていたのか?」


 真剣な表情で手に顔をやるアルフォード。

 それを見ながら、私は思わずくすりと笑ってしまう。


 今のアルフォードは本当に幸せなんだろう。


 それが何よりソシリアとアルフォードの関係を表している。

 ソシリアに振られたらしいあの人に、同情心を覚えない訳じゃない。

 それでも、ソシリアとアルフォードは私の人生を変えてくれた恩人だ。

 私は二人が幸せなら、祝福することに躊躇いなどなかった。


 ……それが例え、自分の思いを殺すことだとしても。


 それ故に私は、必死に自分の気持ちを隠して、以前のように会話をする。


「それで、アルフォードの音楽活動の方はどうなの?」


「ああ、貴族相手にもうけているぞ。なかなかいい稼ぎになっている」


「ふふ、だから言ったでしょ。アルフォードの楽器は相当だって」


「まあ、な。あのときは、サーシャリアに誉められたことで舞い上がっていたからな」


「……っ!」


 さらりとアルフォードが告げた言葉に私は言葉を失う。

 それはまるで、あの時アルフォードが私を意識していたとも聞こえて。


 ……違う、そんな訳ない。

 アルフォードは単純に友人に誉められてうれしかっただけなのだ。

 そう、私は自分に言い聞かせる。


 ぽつり、とアルフォードが口を開いたのはその時だった。


「そういえば、まだ手を着けていないな」


「……え?」


「ほら、好物なんだろう?」


 ──次の瞬間、私の口元へとフォークに刺さった果物を差し出したアルフォードに、私は固まることになった。

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