婚約破棄に至るまで (アメリア視点)
お姉様を事業でこき使えばいい。
私がそう言えば、すぐに両親達は乗り気になった。
お姉様のお陰で伯爵家が潤ったとしても、上がるのはお姉様の名声だけ。
そのことを、両親は不満に思っていたが故に。
そんな両親達を前にしても、カイン様は必死に抗った。
当初、両親達はサーシャリアを家に閉じ込めておくつもりだった。
全ては、自分達の思い通り動かすために。
それを必死に説得し、サーシャリアの第二夫人を認めさせた。
……しかし、それが限界だった。
その条件のせいで、カイン様はお姉様との婚約破棄を強いられることになった。
あの両親からサーシャリアを第二夫人にすると言質をとっただけでもカインは凄いのだろう。
ただ、惜しむべきは両親に、口約束を守る気など一切なかったことだが。
そのことを知っていたら違ったかもしれないが、カイン様はお姉様と婚約破棄をした。
その上で何かを企んでいたようだが、私は気にしていなかった。
なぜなら、お姉様を両親が外に出すわけがないことを知っていたから。
お姉様を疎みつつも、両親はその能力を使いこなすつもりだった。
それ故に、カイン様がなんと言っても、手放すわけがないだろうと、私は知っていた。
そんな思惑があったから、お姉様がカイン様に何をしたと部屋に押しかけてきた時、私は喜びの絶頂にあった。
これで、お姉様を虐げられる。
利用して、使い潰して、その上で楽しく暮らせる。
横にカイン様がいることを考えれば、それは最高にしか思えない状態だった。
その気持ちは、カイン様が来た時も変わらなかった。
お姉様がいないと、侯爵家当主になれない。
そう言われた時は驚いたが、別に私はカイン様が侯爵家当主にならなくても良かった。
ただ、お姉様を絶望させられるのなら。
だから、お姉様を第二夫人にする流れとなった時、私は内心大いに不満だった。
けれど、その時はそれだけだった。
それから、さらに大きな絶望を味わうことになるなんて、その時の私は考えてもいなかった。
……私の計画全てが狂うことになったのはそう、お姉様が姿を消したその瞬間だった。
その時から全てが狂った。
私が今まで築いてきた計画は壊れ、残ったのは壊れかけの伯爵家。
それを見ながら、私は嘆く。
「……どう、して! こんなタイミングで私の計画が潰れるの?」
どうして、何が悪かった?
どうしてあの状況から、私の計画がこう無惨な状態にまで破壊されることになった?
「私はただ、お姉様を搾取して生きたいだけなのに……!」
そう呟きながら、私は祈る。
せめて、お姉様が不幸な状態にあることを。
……そんなことがないだろうと、気づきながら。
長くなってしまい申し訳ありません。次回から、サーシャリア視点に戻ります!




