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私の計画 (アメリア視点)

 私はそう嘆かずにはいられなかった。

 全ては、それ以前まで完璧だったからこそ。


「全部、上手くいっていたのに」


 そうあのとき。

 カイン様を誘惑できたその瞬間から、私の計画は信じられないほど上手く進んでいた。


 あのときは、まだカイン様もお姉様と婚約を結ぶ前だったか。

 使用人のふりをして誘惑すると、おもしろいように簡単にカイン様は誘惑に引っかかった。

 ……まあ、今ならなぜカイン様が誘惑に抵抗しなかったのか分かるが。


 その直後から、カイン様からお姉様に対する情報を聞かれるようになった。

 おそらく、カイン様はお姉様を落とすための協力者を得るために、内部に使用人の協力者が欲しかったのだろう。

 伯爵家において関係のあったのは私だけだったが、ほかにも関係を持った人間は多くいたようだから。


 それでも私は良かった。

 なぜなら、私はお姉様の婚約者を奪えれば良かっただけだから。

 だから私は、カイン様にお姉様の情報を流しつつ、その妹であることを徹底的に隠し続けた。

 取り返しのつかない瞬間になって、カインを脅迫するために。


 今でも思い出す、私の正体を明かしたときのカイン様の表情。

 あれは本当に見物だった。


 それからは、私との関係をお姉様に隠すために、カイン様は私の言いなりになった。

 そんな日々に、私は概ね満足していたが、二つの不満が生まれるようになった。


 一つは、カイン様が何故かお姉様に手を出していなかったこと。

 お姉様ならば、簡単に身体を開かないだろうが、関係を持てば一途になるのは想像できる。

 そして、私から見てもお姉様はカイン様に心を許し始めているのに、何故かカイン様はお姉様には手を出さなかった。


 ……手を出してくれていれば、私との関係を知ったお姉様を、さらに絶望させられたに違いないのに。


 とはいえ、それはあくまで少し残念と言うだけだった。

 どちらにせよ、今の状態でカイン様の裏切りを知ったお姉様は、必ず衝撃を受ける。

 それならば、大きな問題はない。


 ただもう一つの問題……カイン様が私の言うことを聞くふりをして、お姉様を守っていることだけは許せなかった。


 それに気づいたのはいつだったか。

 まるで落ち込んだ様子のない、お姉様に疑問を覚えて聞いたところ、カイン様が言うことを聞くふりをして、上手く誤魔化していたことを知ったのだ。

 ……また、調べて行くうちにカイン様が、私達からお姉様を離そうとしていることも明らかになった。


 あの時は、怒りよりも前に、その手際の良さに、感動したものだ。

 初めて私は、その時カイン様と婚姻を結びたいと思ったかもしれない。


 だけど、お姉様をこのまま逃がすなんて、私には考えられなかった。

 だから私は最後の手段を使った。


 即ち、両親をけしかけるという最後の手段を。


 それが十数日前、お姉様が婚約破棄の理由だった。

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