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遅れる到着 (カイン視点)

「……遅いな」


 連絡があった昼頃、俺は自室の中キルアを待っていた。

 どんな情報を手にしたのか、キルアははっきりと告げていない。

 けれど、緊急の用件であるとは、明言していた。


 ……にもかかわらず、待ち合わせの時間が過ぎた今になっても、キルアは姿を見せない。


 そんなことが滅多になかったからこそ、俺は疑問に思う。

 それでも俺は、更に待つ。

 そして気づけば、一時間が経過していたが、それでもキルアは姿を現さない。


「……もしかして、さらに新しい情報でも手にしたのか?」


 しかし、それだけ時間が経過してもなお、俺は動かずにキルアを待ち続けていた。

 確かに、今は何かおかしい。

 もしかしたら、何事か起きたのかも知れない。


 けれど、それでもいずれキルアは何らかの情報を寄越すと、俺は信じていた。

 そう思えるほど、俺とキルアのつきあいは長く。


 ……キルアは俺にとって、侯爵家で唯一信頼できる人間だった。


 だからこそ、俺は座ってキルアの到着を待つ。

 ふと、あることを思ったのはその瞬間だった。


「……キルアが来たら、そろそろこの件を教えても良いかもな」


 いつも冷静なキルアも、あの話を聞けば驚くに違いない。

 そう考え、俺は小さく笑みを浮かべる。


 だから、早くくればいいと思いながら。


 こつこつ、と外から足音が響いてきたのは、その時だった。

 ようやくキルアが来たと思った俺は、笑みを浮かべながら立ち上がる。

 これで大した報告もなければ、少しぐらい文句を言ってやろうと思いながら。


 ……こちらに近づいてくる足音が複数であることに俺が気づいたのは、その瞬間だった。


 何かがおかしい、反射的に俺はそう悟る。

 しかし、気づくのがあまりにも遅かった。

 俺が何もできないまま、足音は近づいてきて、許可もなく扉が開け開かれる。


 そして現れたのは、キルアではなかった。


「ヴァリ、アス兄様……?」


「久しぶりだな、カイン。朗報だぞ。いや、お前にとっては悲報か?」


 ……そう言って、十数人の衛兵を連れた俺の義兄、ヴァリアスは笑った。


「お父様からの伝令だ。──廃嫡する、とよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] カインはどんなに頭の回転が早かろうとも、廃嫡されてしまえばいいと思います!
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