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意味深な予言 (ソシリア視点)

 サーシャリア失踪の噂。

 それは間違いなく、現時点で打てる最高の妙案だという自信が私にはあった。

 少し黙り込んだ後、アルフォードも頷く。


「確かに、それなら効果的だな」


「もちろん、最初は決して大きな効果は得られないでしょうけどね」


 伯爵家の方も、必死にサーシャリアの不在を隠そうとするのは間違いない。

 最初はどの商会も、本気にしないに決まっている。

 だが、後々その噂は大きくなっていく。


 何せ、本当に伯爵家にサーシャリアはいないのだから。


 その歪みは、決して長い間隠し通せるものではない。

 サーシャリアという核を失った伯爵家は間違いなくぼろを出す。

 そして、そのぼろはどんどんと噂を強大に成長させていく。

 それこそ、誰の手にも負えないほどに。


「噂が大きくなれば、伯爵家から商会を離れさせるには充分よ。商会の多くが価値を見いだしているのは、伯爵家じゃない。サーシャリアの名前なのだから。サーシャリアがいないとなれば、急速にその信頼は失墜する」


「……そして、噂程度なら俺たちの関与に気づかれる可能性も低い」


「ええ!」


 満面の笑みで、私は頷く。

 そう、私がこの考えを妙案とする理由こそが、そのリスクの低さだった。

 噂を広めようとするならともかく、人知れず流すだけならどこから流したのか、気づかれるおそれはほとんどない。


 そもそも、噂が本格的に広まり出すのは、伯爵家がぼろを出し始めたときだ。

 そうなれば、前もって噂が流れていたことを意識する人間もいないだろう。

 私が流した噂は人知れず、伯爵家の噂を暴くのに協力してくれる、ということだ。

 我ながらよく考えられた策に、私は会心の笑みを浮かべる。


「……そう、か」


 しかし、そんな私の話を聞くアルフォードの表情に浮かぶのは、何とも言えない表情だった。

 不安を覚えた私は、アルフォードに尋ねる。


「もそいかして、何か穴があった?」


「いや、妙案だと思うぞ」


「……だったら、何でそん気乗りしない表情なの?」


「いや、もしかしたらなんだが」


 そこで少し悩むように口をつぐみ、少ししてからアルフォードは告げる。


「……その策は必要ないかもしれない」


「え? どういうこと?」


 私が尋ねると、アルフォードは首を横に振る。


「だから、もしかしたらだ。セインも伯爵家についてすぐに聞いたことだから、信憑性は低いと言っている。……正直、俺も信じられないしな」


 そこで一旦言葉を止めると、心底呆れた様子でアルフォードは続ける。


「けれど、もし本当なら。……伯爵家は俺たちが手を出すまでもなく、自滅していくかもしれない」


「なに、それ?」


 要領を得ない発言に、私は思わず首をひねる。


 ……しかし、近い未来その予言が的中することを、私どころかアルフォードさえ想像できていなかった。

次回からカイン視点、本格的なざまぁに入っていきます!

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