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アメリア

 一体何時からだろうか。

 もう、はっきりとは覚えていない。


「アメリアは可愛いな! そうだ、これもやろう」


「わぁ! ありがとうお父様! お母様!」


「本当にアメリアは我が家の天使だわね。……それに比べてサーシャリアは」


 私の物心が着く頃には、アメリアは私より優遇されていた。

 どうしてアメリアばかり。

 ずっとそう羨んできたことを、私は覚えている。


 その時から私は、常にアメリアのいいように扱われていた。

 両親はアメリアばかりにものを買い、僅かに私に与えてくれたものも、アメリアがとってしまう始末。

 そして、それを誰も咎めない。

 ただ、唯一アメリアが取らなかったのは、親戚から私が貰った勉強道具。

 それから私はその全ての不満を押し込み、勉強に打ち込んだ。


 ……今なら、その可愛げのない態度こそが、両親に疎まれる要因だったのかもしれないと思わないでもないが。


 私が勉強には打ち込み始めてからも、アメリアが変わることはなかった。

 私の少ない私物をとることこそ少なくなったものの、私を嘲るような態度を変えることはなかった。

 そして、両親はアメリアを咎めるどころか、私に渡すよう説得してくる始末。


 今まで私は、散々なものをアメリアに取られた。


 私に来たはずの、社交界の招待状。

 貴族が入る学院で、生徒会に入った時に貰った刻印が刻まれた制服。

 私のマナーを褒めてくれた王妃様が下さった、バッジまで。


 どれも大切なもので、けれど許されず取られたもの。

 その度に私は両親に反発し、けれど伯爵家の事業を停滞させるわけには行かず、なし崩し的に全てを取られてしまった。


 けれど、今回だけは。


 カインだけは、絶対にアメリアに譲るなどありえなかった。


 カインに婚約破棄を告げられたディナーの後、私はその思いに背を押させるように伯爵家の屋敷の廊下を歩いていた。

 私が目指す先にあるのは、アメリアの部屋。

 いつもなら、夜遊びの激しいアメリアが部屋にいるかどうかは分からない。


 だが、今の私はその部屋にアメリアがいるだろうという確信があった。


 私から何かを奪った時、いつもアメリアは私の反応を楽しむかのように、屋敷で微笑んでいるのだ。

 だから今回も、必ずアメリアは部屋で自分を待っていると、私は確信していた。


 そして、その私の予想は正解だった。


「あら、お姉様。ノックもなしに失礼ではないの?」


 アメリアの部屋にたどり着き、合図もなしにその部屋を開け放つと、そこにはアメリアの姿があった。


 ……まるで勝ち誇るかのような笑みを浮かべた、アメリアの姿が。

次回投稿は明日朝7時となります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 王族から下賜されたバッチを妹が奪っても何もしない両親もバレたら王家に言われるだろうに
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