表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/167

発覚 (カイン視点)

「……なっ! それは、一体!」


 俺の言葉を聞き、伯爵家は騒然とし始める。

 それもそうだろう。

 何せ、俺が侯爵家当主になれば、事業の拡大について了承しており……それは名声を求めるこの二人にとっては、欲しくてたまらないものなのだから。


 だが、俺はあえて、意外そうな顔をしてみせる。


「……言ったはずでは?」


「言っておりません! 私共が聞いたのは我がカルベスト家との婚姻が成り立てば、侯爵家の座は間違いないということだけです!」


「そうか、すまない。どうやら、私が言い忘れていたようだ」


 実際のところ、別に俺は言い忘れていたわけじゃない。

 ただ、夫妻を都合よく動かすためには、サーシャリアの立場をあげない方が良かっただけだ。


 しかし、そんなことを告げず、俺は意趣返しを込め、表面上だけ申し訳さそうに告げる。


「それで十分だと思っていたんだが、説明不足だったか」


「……っ!」


 暗に、カルベストの価値はサーシャリアと告げるような言葉に、伯爵家当主夫妻の顔が屈辱に歪む。

 けれど、普段感情的な彼らが何か文句をいうことはなかった。


 それ以上に、俺の侯爵家次期当主の話が重要だと、その二人も知っているのだ。


 これならばサーシャリアの第二夫人について断られるまい。

 二人の様子から、そう判断した俺は一転して、明るい口調で口を開く。


「といっても、父からは次期当主の座が欲しいのなら、サーシャリアを娶れと言われただけだ。今すぐ第二夫人にすれば問題はないだろう」


「そ、そうですか」


 俺の言葉に、あからさまな安堵が伯爵家当主の顔に浮かぶ。

 一人、アメリアだけは憎々しげにこちらを睨んでいたが、誰もそれに反応するものはいない。


 ……これで、サーシャリア第二夫人について反対されることはないだろう。


 内心、俺は安堵の息を漏らす。

 とは言っても、素早く話を進めければ、何時何時勝手に動かれるか分かったものではない。

 そうして何か厄介事でも起こされるのは、ぜったいにごめんだ。

 だから俺は、少し脅かしておくことに決める。


「それでも、サーシャリアが第二夫人となるの前に婚約破棄について知られるのはまずいだろうが」


 その瞬間、分かりやすく夫妻の肩が震える。

 思ったよりも遥かに効果があったことに驚きつつも、俺はその気持ちを隠して宥める。


「そこまで驚かなくても大丈夫だ。早くに娶れば問題ない。王都の父に、婚約破棄が伝わるまで時間はあるだろうからな」


 だが、落ち着かせようとしたその言葉で、さらに伯爵家当主夫妻の顔から血の気が引くことになった。


「……その、実は」


「少しお話が……」


 恐る恐る告げてくる夫妻。

 その姿に、俺は既に何か厄介事を夫妻が起こしているのを知ることとなった。


「もう既に王都で、婚約破棄について広めてしまったのですが、大丈夫でしょうか……?」


 ──そして伯爵家当主が告げたのは、想像以上に大きな厄介事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ