慰謝料の請求 (伯爵家当主視点)
ワクチンなどでゴタゴタしており、更新遅れてしまい、申し訳ありません!
言われるがまま、ほぼ強制的に案内しながら、私の胸にあったのは焦燥に押しつぶされる寸前だった。
辺境泊次期当主、その想像もしない来訪は私の平静を奪うのに十分な出来事だった。
どうして、こんな時にこの男が……そう考えてすぐに答えはでた。
それこそ、辺境貿易以外あり得ないのだから。
その私の想像は正解だった。
「俺は話をじらす趣味などないから率直にいう。今回俺が来たのは、辺境貿易についてだ」
案内された部屋に訪れた瞬間、許可も得ずに椅子にすわって、次期辺境泊はそう告げた。
その態度に、私の胸に苛立ちが浮かぶ。
……今思えば、どれだけ第三王子が礼を守っていたのかわかる。
それに対して、次期辺境泊の態度は腹立たしいことこの上なかった。
けれど、その気持ちを押し殺し、私は笑顔で口を開く。
「わざわざご足労いただきありがとうございます! 私もいつかその件に関してお話しに行かせて頂こうと考えていたのですが、まさかマルク様から直接きていただけますとは!」
「おお、そうか。なら話は早いか」
その私の言葉に笑顔を浮かべ、マルクは口を開く。
「で、いくら払える?」
「は?」
……その瞬間、私は言葉を失うことになった。
一瞬、これが冗談ではないかという考えが私の脳裏によぎる。
しかし、そんな私の考えを否定するように次期辺境泊は続けた。
「なにを信じられないといいたげな反応をしている? 自分がなにをしたのかも理解していないのか? ──辺境含めたどれだけ多くの人間に損害を与えたかを?」
「……っ!」
瞬間、私が思い出したのはかつて第三王子から見せられた手紙……賠償金を請求するものだった。
嫌な汗が、私の背に滲むのが分かる。
私は焦燥に背を押されたまま、必死に口を開く。
「お、お待ちください。今の当家にはそんな金額など……」
「ああ、そうか。サーシャリア捜索に金をつぎ込んでいるからか」
「は、はい。そうです。せめてサーシャリアを見つけることが」
「あー、なんか勘違いさせたみたいだな」
私の言葉を乱雑に頭を掻きなが停止させた次期辺境泊当主は、めんどくさそうに吐き捨てた。
「お前等の都合なんてどうだっていいんだよ。いいから金を用意しろ、て言ってるんだこっちは。──爵位でも何でもいい、売って早急に金を用意しろ」




