突然の来訪 (伯爵家当主視点)
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「おお、ちょうど良いときに!」
第三王子の来訪、その知らせを聞いたとき、私は思わずそう歓声を上げていた。
前回の来訪まで、第三王子の来訪は伯爵家において避けたいものだったが、和解がなった今は違う。
むしろ、サーシャリア捜索の手を貸してもらうと考えていた今、その来訪は吉報だった。
中立派の代表であり、貴族国民問わず絶大な人気を誇る第三王子なら、資金情報ともにとんでもない者を有しているに違いない。
「待ておれよ、サーシャリア!」
そう考える私の口元には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。
これで、ようやくサーシャリアの行方が分かると、そう考えて。
……故に私は、自分自らアルフォードを迎えに行くことに何ら躊躇もしなかった。
「ようこそ、お越しいただきましたアルフォード様!」
使用人を押しのけ、私は自分の手で玄関を開け放つ。
──そして、どこかおかしな空気感に私が気づいたのは、そのときだった。
「……想像以上に早い再会になってしまってすまないな、伯爵家当主どの」
扉を開けて出迎える私に、第三王子はそう和やかに話しかける。
けれど、その表情に浮かぶ気まずさまでは隠し通すことができていなかった。
「和やかに挨拶できれば良かったのだが、そうはできなくてすまない」
「アルフォード、様?」
「今回私が来たのはある人物に仲介を頼まれたからなのだよ」
アルフォードの背後から見えていた馬車の扉が開かれたのは、その瞬間だった。
開いていく扉を呆然と見つめながら、私は気づいていた。
……中立派の代表たる第三王子をこんな風に仲介として使えるのは、ある貴族だけだと。
そして、その私の想像は次の瞬間馬車から姿を現した貴族。
──辺境泊次期当主、マルクによって正解だと知らされることになった。
「突然の来訪失礼する。ことは一刻を争う故に、アルフォード殿下にお力を借りたのだが、驚かせてしまっただろうか?」
「そ、そんな! いえ……!」
私は咄嗟に頭を下げる。
しかし、その心臓は破裂しそうな勢いで鼓動していた。
……なんてものを連れてきたのだと、先ほどの歓迎を投げ捨て、アルフォードに私は内心文句の言葉を投げつける。
「そうか、ならよかった。では、早く中に案内してくれ」
マルクのその言葉はあまりにも一方的な言葉で……けれど、それに抵抗することはできなかった。
「……はい、お任せください」
そう何とか絞り出し、歩き出した私の顔に隠しきれない恐怖が浮かんでいた。




